スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第61話 え?スティールできませんでした #1

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ゴブリンの集落とそこで行われていたゴブラットの繁殖、更に伝説のゴブラオへの進化――これ全部ギルドに報告が必要な大事件という事で、王都に戻った僕達はその足でギルドへやって来た。
といっても報告はクーラ先生がやる事になったから、僕達は当事者として同席するだけって感じなんだけどね。
で、受付でクーラ先生が「カウンターで話せる内容じゃない」って伝えて、僕達全員奥の個室へと案内された。

そこで僕達の話を聞く事になったのが、今僕たちの前に座っているギルドマスターと補佐役っぽい人なんだけど……
何となくヒトツメギルドの事を思い出してほっこり。
ほら、報告が進むにつれてギルドマスターの顔がだんだん険しくなってく感じが――ね。

「――という訳でこれがそのゴブリンの魔石、それとこっちがゴブラットの魔石ね」
報告は集落のゴブリンとゴブラットを殲滅させたくだりまで話したところ。クーラ先生がそのゴブリンとゴブラットの魔石が入った袋をテーブルに置くと、険しい顔のギルドマスターは思わずって感じで溜息を吐いた。
「……本当の事だろうな?」

一方のクーラ先生は涼しい顔。
「あのねえクリッシュ……こんな嘘をついてどうするっていうのよ。信じられないって気持ちは分からなくもないけど、それはちょっと失礼じゃない?」
何だか凄く砕けた感じ……?
もしかしてクーラ先生ってギルドマスターと知り合いなのかな?

「……そうだな。すまないクーラ、別にお前を疑ってるとかじゃないんだ。ただ事が大き過ぎてな。だが確かに今のは俺の失言だ、改めて言い直そう。――業務上の確認事項として冒険者クーラに質問する。今回のこの件は恐らく大変な偉業と認定されるだろうが、お前は対処には一切関わっておらず、この新人達が全てを成し遂げた――という事でいいんだな?」

えっ、今何て言った? 『大変な偉業』?
思わずみんなの方を見ると、全員ビックリした顔をしてる。じゃあやっぱり僕の聞き間違いじゃなくって本当にそう言ったの?

「ええ。私は一匹たりとも倒してないし、作戦の立案から最後の処理までの全てをこの子達だけでやり遂げたわ。――で、その後にちょっとビックリするような事が起きてね、私が対処したのはそっちの方だけよ」
ギルドマスターはクーラ先生から僕達の方へと視線を移し、僕達が頷いたのを確認して軽く目を閉じた。

「分かった、ではそのように処理しよう。それで……その『ビックリするような事』の報告がこれからある、と考えていいのか?」
その時のクーラ先生の表情……
絵に描いたような『ニヤリ』って感じ。
「ええそうよ。よかったわねクリッシュ、あなた伝説の目撃者になるわよ?」
「――伝説、だと?」



クーラ先生からの提案で、話の続きは解体場って事になった。そして解体場に着くとクーラ先生からの指示――
「じゃあカルア君、アレ出してくれる?」
はい、アレですね? ――って事でゴブラオの開きを、どーーん。

解体台の上に取り出した真っ二つなゴブラオを見て、ギルドマスターはひどく驚いた表情を見せた。
「なっ!? ……何なんだこいつは!?」
ゴブリンとは明らかに違う姿だから驚くのは当然。で、そんなギルドマスターにクーラ先生は静かに答えた。
「多分だけど……これ、護武荒男ゴブラオよ」


ギルドマスターは怪訝な表情。
「ゴブラオ? 聞いた事があるような……名前や姿から察するにゴブリンの一種――ってまさかアレか!? 図鑑に姿絵の無い、あの……」
「だと思うわ。倒すのに真っ二つにしちゃったけど、そのまままるっと全部持って帰って来たわよ。調査と登録に必要でしょう? ……それでこのゴブラオなんだけど……私達の目の前でゴブリーダーから変化したのよ」

ギルドマスターの怪訝な表情は更に深まる。
「ゴブリーダーだと? あいつらは小さな魔物を育てるだけのおとなしい連中だろう? それが何だってこんな凶悪そうな姿に……」
「そいつね、育ててたゴブラットが全滅してるのを見て大泣きを始めたの。そしたら急に黒い魔力に包まれて、その中から出てきた時にこの姿になってたのよ」
「……つまりは伝説の通り、って事か」

「あと強さはまあまあだったわよ」
「クーラの『まあまあ』か……ゴブリン種でそれ程の強さとは要注意だな」
「私からは以上よ。このまま置いてくから後の事はよろしくね」

深刻な表情のギルドマスターと完全に空気だった補佐役っぽい人を残し、報告を終えた僕達はギルドを後にした。
ゴブリンとゴブラット、それにラビットとボアの魔石を売ったお金を僕達とアイたち全員で8等分し、これにて解散。
こうして僕達の初めての冒険は幕を閉じた――って事で、みんなお疲れさまーー。
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