スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第60話 殲滅の後にその事件は起きました #4

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そこからはネッガーのターン。
力でも速さでもゴブラオを圧倒するネッガーに対し、身を護るだけで精一杯となったゴブラオはその勢いに呑まれるかのように後退を続けた。だがネッガーの猛攻は止まらない。そしてついにその時が! ネッガーの重い蹴りがゴブラオを捉えたんだ。

ドッゴォォォーーン!!
土壁に激しく衝突するゴブラオ。
「やったか!?」
――ちょっ! 今の声は誰!?



グルギャーーーーオオオォォォ

フラグ回収とばかりに土煙の中から立ち上がるゴブラオ。激しい叫び、そして――体から噴出する黒い魔力の量が急増加した!?
「まさか……ゴブラオにも上があったっていうの!?」
「クーラ先生! あれってまさか【身体強化】ですか!? だって魔物なのに!?」
「あれは……人間の【身体強化】とは違う何かよ! でも魔物は魔力で体を動かす。だったら魔力の増大でパワーが増す事は必然っ!!」
「そんな……」
「でもあれは……まずい! ネッガー、剣を使いなさい! 早くっ!!」


次の瞬間、ゴブラオは土煙の中からその姿を消し――
ギイイイイィィィィーーーン!!
激しい音と共に、ネッガーの構えた剣に肩から衝突した。

「ぐっ!! 刃が……通らん!」
一瞬その場に持ちこたえたネッガーだったけど、そのまま反対の壁まで飛ばされると、そのまま力なく地に崩れ落ちた。
「ネッガーーっ!!」
やばい早く速く急いでネッガーのもとに【転移】ぃ! からの【界壁】っ!
展開したばかりの【界壁】の向こうでは、怒り狂ったゴブラオが空間の壁に拳を激しく打ち付け続けている。ギリギリ間に合ったーーーーっ!!
「【復元】」
大した事なさそうな傷だけど、ここは念のため【復元】にしといた。



さあ、急いでここから移動しなきゃ。
まずはゴブラオの動きを止める【冷却】!
よし、ゴブラオが凍りついた! 今だ!
ネッガーの剣を鞘に納めて、それからその体を抱えて――
「【転移】!」
みんなの元へっ!!

「ネッガーは大丈夫!?」
みんなの所に戻ると、みんな心配そうにネッガーの顔を覗き込んできた。
「もう大丈夫、【回復】も済んだよ。もともと大した怪我はしてなかったみたいだ」
「はああ、よかったぁーーー」
「それじゃあ……あとはあいつをどうするか、ね」
そのアーシュの視線に誘われゴブラオに目を向けると、既に氷には沢山のヒビが浮かんでいて、今にも中からゴブラオが出てきそうだ。

「――カルア君は別として、みんなもう魔力も体力も残ってなさそうね」
クーラ先生のその冷静な指摘に誰からも反論はない。実際その通りだったから。

「そのカルア君も、ゴブラオのあの速さについていくのは無理――でしょう?」
「その、通りです……」
攻撃を当てるどころか、さっきのあの動きは目で追う事すら出来なかった。ずっと【俯瞰】だってしてたのに。こうなったらもう隠している場合じゃない。この辺り一帯全部を把握して、その全空間を【スティール】するしか……
でも……



悔しげな僕の返事にクーラ先生は軽く微笑むと、僕達一人一人順に視線を合わせ、そして最後にこう言った。
「分かったわ。みんな今までよく頑張ったわね。ええ、本当すっごく頑張った。あなた達はもう全員立派な冒険者よ。ほら胸を張りなさい」

そしてクーラ先生は今まで一度も見せた事の無い優し気な笑顔をこぼし、僕達に言葉を続けたんだ。

「そうね、本当によく頑張った。だから今はもう十分。あなた達はこれからきっと、もっともっと強くなる。それこそ、あのゴブラオなんか目じゃないくらいにね。だから――」

クーラ先生、そんなまさか……

「だから後の事は――あいつは私に任せて、みんなは――」

ダメだよ先生、それ以上口にしたら……

「「「「「くっ、クーラ先生っ!?」」」」」

み、みんなもクーラ先生が言おうとしてる事に……



「後ろで見学してなさい」
「「「「「先っ………………せぇ?」」」」」



全身に貼り付いた氷を粉々に吹き飛ばし猛り狂うゴブラオ。
そのゴブラオの前に降り立ったクーラ先生は、さっきまでとは少し違う笑顔で――
「あなたの強さもまあまあだったわよ。そうねえ、じゃあ私のを虐めてくれたご褒美に、初めから2段階めで相手してあげようかしら」

ああ、これダメなやつだ……



そこからはあまりに一方的だった。
ゴブラオの攻撃はクーラ先生にはかすりもせず、クーラ先生が動けばゴブラオはサンドバッグに。
そしてゴブラオの表情はどんどん絶望の色を濃くしてゆき、それでもギリギリのところで耐えているみたい。
――何故だろう、不思議とゴブラオの方を応援したくなってきた……

「ったく、あなた無駄に固いわねえ。うーん、どうしようかな。このままだと帰るのがちょっと遅くなっちゃいそうだし……」
なんて事を呟くと、次の瞬間僕の前に姿を現すクーラ先生。
「確かカルア君の剣には使用者制限を付けてないのよね? ちょっと貸してくれる? 殴るのが面倒になっちゃって」

あっはい、どうぞ……



そしてゴブラオの体は綺麗に左右に分かれました。
「――ふっ、伝説とは言っても所詮はゴブリンね。さてと……じゃあ皆、後片付けして帰るわよーー」



みんな魔力が残ってないから、後片付けは僕の出番。ゴブラットの穴に土を被せてノルトの土壁を撤去して。
ゴブラオはそのままギルドに持ち帰る事になったから僕の【ボックス】に入れて。
そうこうしてるうちにネッガーも目を覚まして――

「さあ! ギルドに報告しなきゃいけないから、寄り道しないでまっすぐ帰るわよ」
こうして僕たちの初めての狩りは終わり、僕達は無事に王都へと帰り着いた。



何だか色々あったけど、結局今日の感想は『クーラ先生が最強!』。
そしてネッガー、君いつの間にかクーラ先生の弟子になってたみたいだよ?
――頑張れ!



▽▽▽▽▽▽
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