スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第61話 え?スティールできませんでした #3

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そして僕達が転移した先、そこは――
「ちょっとミレアさん、受け付けの際はまずこちらの返事を待ってですね――」
「何言ってるんですかオートカ先輩。もう『あーん』も済ませた仲だって言うのに、そんな急に部屋に入ってきたお母さんへの思春期男子みたいな反応しちゃってー」
「いや、そういうのじゃなくってですね、というかそんな知識を一体どこから……」
――こんな状態だった。

「お取り込み中しっつれーーーい! ゴメンねミレア君、ちょっと君のダーリン借りてくね」
「やだそんな『ダーリン』なんて! もうモリス先輩ったら――ってモリス先輩!? まさかっ!? ああっ、やっぱり拉致られた!! オートカ先ぱーーいっ!!」

そんなドタバタの中転移してきたこの場所は……どこかの倉庫?
「いつもなら文句を言うところですが、今日のところは助かりましたよモリス。それで、機材倉庫に連れてきたのにはどのような理由が?」
「ほら、例のゴブリンの魔石なんだけどさ、カルア君は【スティール】出来たんだよ。それで実際のところを魔力測定してもらおうと思ってさ」

「ああなるほど、話は分かりました。……幸い機材は使われていないようですね、モリスの事ですから当然『今から』なんでしょう?」
「さっすが、よく分かってるじゃない。じゃあ早速ゴブリンの所へ……っと、いたいた。じゃあオートカは機材を持って。カルア君もいいね、よし出発!」

いやもう目まぐるし過ぎで怒涛過ぎな展開過ぎ。久し振りに全開のモリスさんを満喫したって感じだよ。
そして今僕達がいるのは森の中。で、目の前にゴブリンが……停止中?

「このゴブリンかい? 周りの空間ごと時間を【固定】したんだよ。この間ラーバル君に教わったからやってみたんだけど……これって【収納】に使うのと違ってすごい勢いで魔力が減ってくから、維持するのがちょおっと大変なんだよね。という事でオートカ、測定準備を急いでくれる?」
「分かりました。すぐ済ませますからそのままもう暫く【固定】しておいて下さい」

オートカさんが準備する間、僕はモリスさんと打ち合わせ。
「いいかい、オートカの準備が出来たらタイミングを合わせて【スティール】だよ。【固定】したままだと多分【スティール】出来ないだろうから、僕が【固定】を解除したらタイミングで【スティール】しちゃって」
「了解です」

それから少ししてオートカさんの方も準備が完了したみたい。
「お待たせしました。準備が終わって測定も始めていますから、いつでもどうぞ」
「オッケー。じゃあカルア君行くよ? 3、2、1、解除ぉ」
「【スティール】……えっ!?」
「あれ? カルア君、失敗した?」
「あれ? あれ? 何だこれ……?」
今までと何か違う反応。これって……【スティール】が弾かれた?

「――っと、取り敢えず【結界】! 狭いだろうけど、ちょーっとその中で大人しくしててくれよゴブリン君っ!」
動き出したゴブリンをモリスさんが大急ぎで【結界】に閉じ込めた。【固定】にしなかったのは急いでたからなのか魔力の減りを気にしたからなのか……
で、そのゴブリンはと言うと【結界】の中で叫び声を上げて壁を蹴ったり叩いたり。『大人しくしてて』とか言われても言う事聞く訳なんてないよね。

「それでカルア君、今のってどうしたの?」
「今何か、【スティール】が防がれたって言うか弾かれたって言うか……いつもと違う感触だったんです。もう一度やってみていいですか?」
そうすればあの感触の正体も分かるかも……

「ほほう、そいつは興味深いね。是非やってみてよ」
「はい! 【スティール】……さっきと一緒だ」
やっぱりこの感じ……弾かれてるみたいな感じ!

「するとこの個体に何か……ふーむ、さっき成功したゴブリン君とは何が違うんだろうねえ」
と、考え込むモリスさんに測定器から目を離さないままオートカさんが声を掛けた。
「モリス、このゴブリン魔力が多くないですか? 見た目はただのゴブリンですが、この量は……もしかして『マジシャン』? それとも『ブリーダー』か?」

その時、僕の目の前でこの間見たのと同じ光景が……
ゴブリンの身体から黒い魔力が噴出して結界の中を満たし、ゴブリンの姿が見えなくなって……!?

「おいおい、何が起きてるんだい? ってまさか……『進化』?」
そんなモリスさんの呟き。
そして黒い魔力が薄まった結界の中、姿を見せたのは――
「――あらら、ゴブリン君がゴブリンマジシャン君になっちゃったねえ」
ゴブリンから進化した、ゴブリンマジシャンだった。
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