スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第51話 『氷』+『錬成』=『新魔法』? #2

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氷魔法の練習用に用意してあるのは小さなテーブル。そしてその上に載っているのは水の入った器だ。
さてと、まずは実験。【凝固】を試してみると……
「うん、やっぱり冷たくないな」
分かってた事だけど、まあ一応ね。
で、魔力を止めると――うん、一瞬で水に戻るね。バシャッと。

「じゃあ次はいよいよ本番、氷魔法いってみよー」
先生から聞いたイメージ、『水の粒ひとつひとつが動きをゆっくりに』を魔力に乗せて――
うーんダメかあ。中々難しいや。これは繰り返し練習あるのみ――かな。
ゆっくりのイメージ……粒がゆっくり……って何? どんなイメージなんだろう……あ、だったら『ゆっくり』より『静かにじっとしてる』イメージの方がしっくり来るかも? 粒が静かに――静まれ水の粒たちよ!

やりながら頭に思い浮かぶのは、工房でのミッチェルさんの言葉。
「錬成に知っとかなきゃならん事はな、『水はどれだけ細かくしても水』って事なんじゃ」
氷魔法に必要なのは、その一番細かくした水、それに対してのイメージ。
あれ? それってもしかして――
「あ……出来た」
やっぱり。【分離】とか【混合】に近いイメージだ、これ。

忘れないうちにもう一度練習したいけど、カチコチに凍って暫く溶けそうにないや。
どうしようかな……?
あ、待てよ? 静かのイメージで凍ったんだから、逆に賑やかなイメージなら溶けるんじゃない?
粒が賑やか。うん、試してみよう。
踊れ水の粒たちよ!


えっと――
……変化なし?
……いや、熱くなってる?
……湯気が出てる?
……ってうわっ!?

バフッ!!

何、今の!? 急に水が……弾けた!?
ふぅ、びっくりしたぁ……
ってよく避けられたな。きっと訓練のおかげだ。クーラ先生ありがとう!!
えっと……水って熱くしすぎると爆発するの?
そんなの聞いた事無いけど……?
まあどっちにしても熱湯は危ないしね。温かいくらいにしとこうっと。

器に水を入れ直して何度か繰り返しているうちに、だんだん感覚が掴めてきた。
――はい、水。
――次は、氷。
――からの、お湯(ぬるめ)。
――で、もう一度氷っと。

なんて事やってるうちに――あ、器が割れちゃった。これってさっきの爆発で?
それとも、急に熱くなったり冷たくなったりすると割れやすいとかいうアレかな?
まあでもこんな時は慌てず騒がず――はい、錬成魔法で元通りっと。
……でも割れたのが氷にした時で良かったよ。
水とかお湯の時だったら、全部零れて無くなっちゃってたところだからね。

水についてはこんな感じで大丈夫そうかな。
じゃあ次は――
あ、ちょうど良いのがあったよ。
この前ノルトと一緒に集めたノルトのメイン武器の石ころ。残りがまだちょっとだけ【ボックス】に入ってた。

テーブルに置いて、賑やかなイメージを……
あっ、これ不味い。熱でテーブルが! 石を空中に浮かせなきゃ!
真っ赤になった石を宙に浮かせると、その下のテーブルが……ああよかった、ちょっと焦げただけで済んだみたい。

そのまま魔力を注ぎ続けると、石の輝きは赤から白へと変化し、やがて石はドロドロに。これってもしかして溶岩ってやつかな。火山とかの……
ってこれ熱すぎて危ないかも。冷やさなきゃ……『静かになれーー』っと。よし、熱そうな輝きが消えて石に戻ったみたい。妙に艶々になって形も変わっちゃったけど。

うーん。大体感じは掴めたけど……これって、もう氷魔法じゃないよね?
どちらかというと【冷却】とか【加熱】とかじゃないかな……
あ、だったらもしかして錬成のくくりに近いんじゃない?

「あのカルア君? この辺りから妙な匂いが漂ってきたんですが、何かありましたか?」
ああ指導員の先生、ちょうどいいところに。ちょっと教えてくださーーい。

「えっとですね……あ、氷魔法は出来るようになりました」
「もうですか、流石ですね」
「あと、氷を溶かす事も出来るようになりました」
「えっ、溶かす? は?」
「はい。繰り返し練習しようとしたんですけど凍っちゃってたから、同じように溶かす事も出来ないかなって」

「そっそれで……とっ溶かす事も出来た、と?」
「はい。でもそのあと突然爆発しちゃいましたけど」
「爆発ぅ!?」

あ、このパターンって覚えが……

「ちなみに方法を訊いても?」
「そんな大したものじゃないですよ? まず、『ゆっくり』っていうのがよく分からなかったので、『粒が静かになる』イメージで氷にする事が出来たんです。それで、『静か』で冷えるなら、逆の『賑やか』をイメージすれば温まるのかなって。で、やってみたら熱くなり過ぎちゃったみたいで……あははは」

「『静か』で冷えて『賑やか』で熱く……」
「それでですね、もしかして――もしかしてですけど、『氷魔法』って実は単独の魔法じゃなくって、例えば錬成の一部だったりするのかな――なんて思ったんです。【加熱】【冷却】みたいな。あっそうだ、あと石ころにも試したりしたんですけど、【加熱】したら溶けてドロドロの溶岩になりました。多分さっき先生が言ってた変な匂いって、その時の匂いじゃないかな」

えっと、先生? 何だかうつむいてプルプルして――
「こっ、こここここ、校長ーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
あらら、走って行っちゃった……



ギルド本部、いつものインフラ技術室。
キュッピピーーン☆
「おっ、久し振りに鳴ったねっ。暫く鳴らなかったから心配してたけど――うんうん、カルア君元気そうで安心したよ。でも今日の音はちょっと可愛らしい感じだね。それに僕自身のセンサーにも反応が無いし。いやあ、平和だなあ」



ヒトツメの街、某ガラス工房。
キュッピピーーン☆
「む!? なんじゃ今の音は? ……まさか、前にモリスが言っとった『なんとかセンサー』とかいうやつじゃないじゃろうな。カルアが何かやらかした時に、関わりそうなやつの通信具が鳴るとか何とか。むぅ、じゃがそれにしちゃあ緊張感のない音じゃったし……」



校長室。
「そっ、それでですね、氷魔法というのは実は【加熱】【冷却】として錬成魔法に組み込むべきものではないかと――そんな意見までもが出まして」
「うーーん、氷魔法のイメージの発展、しかも魔法の分類が一歩前進する可能性も、と。温度変化を『物質への干渉』の切り口として捉えるならば、確かに『錬成』に含まれるという考え方は理論として正しい。もしくは、『氷魔法』という名称をやめて『温度魔法』や『熱魔法』などの名称で単独の分類とするか。いずれにしても魔法学界隈が大騒ぎになる事は間違いなさそうだ」

「はい。ですので急いでお知らせに――」
「それで、実際どうだった?」
「え?」
「見たのでしょう? カルア君がその魔法を使ったところ」
「……あ」

「もしかして、見てない?」
「はい、話を聞いたところで慌ててしまい――」
「そうか……でもまあ、まず間違いないだろうね、カルア君だし。よし! じゃあ見せてもらいに行こうか、カルア君の新しい魔法の性能とやらを、さ」
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