スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第49話 戦闘訓練! あれっ、ピノさん? #2

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こうしてクーラ先生のパーティ戦闘の授業が始まった。
まず教えてもらったのは、それぞれの効率的な動き方の基本形。
――例えば、前衛が突入して後衛がそれをサポート。
――例えば、後衛が魔法を撃ち込んでそこに前衛が突入。
――例えば、前衛が敵の目を引き付けたところで後衛が魔法攻撃。
そんな感じの色んなパターンを用意して、それぞれに名前を付けるとか。

次はその実践。
先生が魔物役、そして僕達はパーティを組んでその先生と戦う模擬戦だ。
僕とネッガーは練習用の剣、ノルトは小石がたくさん入った鞄を持って訓練開始。初めのうちは『当てちゃったらどうしよう』なんて考えてたけど……

うわっ、どうなってるの!?
何をどうしても攻撃が当たらないよ!?
避けられ防がれ流され透かされ。

「ほらほら、前衛が孤立しちゃった」
「こんなんじゃあラビットも狩れないよ」
「左側、弾幕薄いよ。後衛ちゃん何やってるの」
「全員動きがバラバラ! もっとこう、瞬間、心、重ねて!」

そんな的確なアドバイスを受け、少しずつ自分たちの動きが良くなってくのが分かる。
クーラ先生、凄いや。

「少しは良くなってきたかな。じゃあそろそろ私も攻撃するよーーっ」

僕たち、あっという間に全滅。
足元を崩されたネッガーが僕の方に吹っ飛ばされ、ふたりで地面を転がっているうちにノルトとアーシュが次々に転ばされて。
いやもうね、悔しいとかそういう次元じゃない。圧倒的すぎ。
「はい、じゃあちょっと休憩ね。作戦タイムに使っててもいいわよ」



僕達は地面に座り込み、体を休めながら話し始めた。さっきまで散々転ばされてきたから、今さら地面に座る事に何の抵抗もない。

「はぁ、作戦って……立てる意味あるのかしら?」
「先生の裏をかける作戦なんて簡単に思い付かないだろうしね。そらならさ、さっき習った『動きのパターンに名前を付ける』のはどう?」
「ああ、それ良いんじゃないかノルト。何をやってもどのみち付け焼き刃だからな、だったら動きを合わせ易くするというのは俺も良い考えだと思うぞ」
「カルアはどう? リーダーとしてここはビシッと決断しなさいよ」
「よし、じゃあ名前作戦で行こう。動きの名前はシンプルにA、B、Cとかで……」

さあ、いよいよ始まるリターンマッチだ。目標、何とか一矢だけでも報いたい!

「――ふむふむ」
「――ふーん、なるほどなるほど」
「――ああ、ここでそう来るわけね」
「――お、今のはちょっといい感じかな」
「――へえ、だんだん動きが揃ってきたじゃない」
「――あらら、今のはちょっとね」

目標、達成ならず!
魔力も体力も尽きたてへたり込んでいる僕達のすぐ横では、クーラ先生が――
「んーー、初日でここまでやれれば、まあまあ優秀かな」
なんて評価をしてるけど、もう返事する気力も残ってないよ……



「こちらのグループはどうですか?」
そこに現れたピノさん。はは……出来ればこの姿は見られたくなかったなぁ。
「まあまあじゃない? 初めて組んだパーティにしては連携も出来てたし、経験を積んでいけば良いパーティになるんじゃないかな。授業が進めばそれぞれの魔法も上達するだろうしね」
「そうですか。こちらはクーラ先生が付きっきりで見られてたようですから、私のサポートとかはいらなそうですね」
「そうだね……あっそうだ、折角だからあなた達、何かピノ先生に質問したい事があったら訊いてみたら?」

ここはもちろんみんなに譲るよ。僕はいつでも訊けるから。

「あの! 俺は【身体強化】が全てなんです。【身体強化】のコツとか教えて下さい!」
「【身体強化】かあ。うん、いいよね、身体強化。シンプルな力って分かりやすいから、私も好きだよ。【身体強化】で大事なのは、……そうね、一番は強化した身体能力に振り回されない事かな。強化した状態でもちゃんと動きを制御出来るように、細かい動作なんかも練習しておかないとね。ほら、弱点を攻撃するのって、結構場所とかタイミングがシビアだったりするから。あとはそうね、強化そのものを強くしたいのなら、魔力をギュンって回して、グッと留めて、バッと弾ける感じを心掛けてね」
「はっ、はいっ! 非常に分かり易いご指導、ありがとうございます!!」

ネッガー良かったね。眼がもうすっごくキラキラしてるよ。でも――最後の説明ってホントに分かりやすかった?



「ピノ先生、僕は土魔法が主体なんですけど、土魔法は何を心掛ければいいんでしょうか?」
お、次はノルトか。
「うーん、土魔法かあ。土魔法はあんまり使わなかったからなあ。でもそうね……土魔法っていうのは、意外性の魔法だと思うの。そこにあるのが当たり前な土――地面だからこそ、それが変化する事に相手は驚くって感じで。私も土魔法を使う人と戦うのは、ちょっと嫌だったなあ。だからそうね、相手の意表を突く事を心掛けてみて」

なるほど、このアドバイスは僕もためになった。
ところで……
さっきからアーシュが静かだ。こんな時は真っ先に動くと思ってたんだけど――ってあれ? もしかして緊張してる?

「ぴっ、ピノ先生」
「はい、何でしょう」
「あっあの、わっ私魔法師で属性は全部使えるって言われたんですけど、どどどんな魔法をメインに使ったらいいでしょうけゃっ」

あ、噛んだ。
で、真っ赤になって俯く――と。いつもと違うこんな一面が、ちょっと微笑ましいって言うか――

……おっ、涼しーー。肌に当たるこのヒンヤリとした風が、火照った体に何だかいい感じ――
ってあれ? この風どこから? ここ室内だし、風魔法グループは向こうだし。
あーあ、もう止んじゃった。残念。

「うーん、どうかな。そのあたりは人それぞれなんだと思うけど、やっぱり決め手は第一印象とかかなあ。自分に合ってる魔法って、何となく『コレいいかも』なんて感じたりするみたいだからね。あ、でもこれはあくまで魔法の話ね。好きな人とかは第一印象で選んじゃ駄目。それに同い年とかも避けた方がいいかな。あと絶対駄目なのはパーティ内での恋愛ね。好きな気持ちとかドキドキが実は勘違いだったなんて事も多いし、それに上手く行っても行かなくても結局、パーティ全体は不幸になるから」

……ん? これ何の話だったっけ……?

「あ……あのピノ先生? 途中から魔法と関係ない話に――」
「あ、ごめんなさいね。受付嬢やってて色んなパーティを見てきたから、つい心配になっちゃって。そうよね、魔法の話だったよね。だから『自分が好きって感じた魔法を軸にして、その他の魔法は満遍なく鍛える』、そんな感じで。その先はまあ属性次第ってところかな。でも私ツンデレ属性って卑怯だと思うの。あと男女の友情みたいな距離感から急に詰めてったりとか、それから――」

また途中から……

「えと、ピノ先生……?」
「あ、また脱線しちゃったわね。まあそんな感じだけど、どう分かった?」
「はっはい、ありがとうございました」
「はい、じゃあそろそろ他の生徒のところに行くけど、もし何かあったら呼んでね」

そう言って離れていくピノさん。
アーシュの時にだけ変な指導? 説明? ――だったけど、何だったんだろう……?
アーシュも何だか難しい顔で考え込んでるし。
「えと……勘違いがドキドキするとパーティが不幸になるから卑怯な属性はツンデレ魔法で第一印象から急に距離感を詰めるのが……? ピノ様の言葉なんだからきっとこの中に隠された意味が……深いわ」
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