スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第44話 ただ試験を頑張っただけなんです #3

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暫く待っていると聞き慣れた声が――
「カァールゥーアアアァァァ! あんた今度は一体何をやらかしたんだい!?」
激走ベルベルさん!
――足はやっ!? しかも地面じゃないのに土煙つちけむりっ!!
と、その後を走ってくるのは――さっきの試験官さんと、エルフな校長先生も?

「いやあの――普通に魔法の試験を受けてただけですよ? 使っちゃいけない魔法とか全然使ってないですから」
って言う僕の声には誰も応える事無く、同着2位で到着した校長先生が横にいる同じく2位の試験官さんに話し掛けてる。
「――それで一体何が……状況と経緯を説明してもらえますか」
「はっはい! 私があの鎧に魔法を撃つよう指示したところ、彼は遠隔での錬成魔法を使用しました。それで複数の対象への同時攻撃を指示したところ――」

「――この有様になった、と?」
「はい。それで『軍事的脅威レベル』に該当する恐れがあるため、至急ご確認をと」
「成程、状況は理解しました。それではカルア君、君が使用した魔法について私に説明してくれるかな?」
「はい。えー僕が許可されてる魔法で何か攻撃に使えそうなものがないか考えたんですけど、的が金属だったから錬成で壊せるんじゃないかなって。それでまず最初に、時空間魔法で周囲一帯を【俯瞰】、そして把握したんです。その次は的にする鎧を種類指定して、最後に錬成魔法の【融解】を使用しました」

ほら、やっぱりどこにも問題ないよ。

「いや確かに聞く限り使用禁止した魔法は使ってないけどさ。それに把握も錬成も一般的に使用されている魔法なのは間違いないよ? だけどさ……何だってそれを組み合わせて使用しようなんて考えるんだい!? 発想も結果もヤバすぎるだろう! 『混ぜるな危険』とかいうレベルじゃないよコレ!?」
「――カルア君の魔法がもたらしたこの結果……確かにこれは軍事的脅威レベルに該当します。この結果から『軍隊殺し』の魔法と言う事で間違いないでしょう」

軍隊殺し!? 何その物騒な言葉……
いやその前に『軍事的脅威レベル』って……何?

「ではそうですね……カルア君、君の遠隔錬成を私にも見せてもらえるかな」
「あっはい、それでは――」
鎧、さっき全部壊しちゃったからね。やっぱりそのままって訳にはいかないよ。
だから……範囲指定はそのまま、【融解】した鎧を指定してっと。元の形はどんなだったっけ? よく覚えてないから似た形に……あっ元通りにするなら案山子に着せなきゃ。案山子の高さまで持ち上げて……よし。
「【凝固】」
うん、全部元通りかな。多少今までと形が違うのは許して下さい。
「これでいいですか?」

えっと、再び見た事のある表情に戻った試験官さん、そして校長先生は……何かキラキラした表情?

「ふふふふふ、はははははは。これは、これは凄い! 確かに退屈は吹き飛んだよ。ちょっとした思い付きで、エルフレベルの時空間魔法にドワーフレベルの錬成魔法を組み合わせるだって!? うん、この子は絶対に目を離しちゃ駄目だ。もう完全に保護するべきだ! うっかり目を離してる隙に世界のルールすら変えかねない!」

あの、校長先生? 流石にそれは大袈裟が過ぎるんじゃ……?
だって世界のルールとかいくら何でも――ねえ。

「それで校長、試験はどういたしましょう」
「ああそうか、もう学科試験は終わってるんだよね? そちらの採点も必要だけど、マリアベルさんが詰め込んだのなら、まず合格点は取れているだろう。実技は、まあ見ての通りだ。これが不合格だって言うのならこの先合格の判定を受けられる者など皆無だろうね。当然合格だよ。そしてこれが一番大事な点だけれど――ここで起きた事とここで見た事は全て口外を禁ずる。いいね?」
「勿論です! 例え相手が校内の関係者であっても口外はしません。――私の身も危ういですから」
「その通りだ。という事でカルア君、本校の校長として、私は君の編入を許可します。君が来るのを楽しみにしているよ」

――やったぁ!!



学校からの帰り道――
「カルア、あんたさっきの『軍隊殺し』ってピンときてなかっただろう?」
「ええ、実はそうなんです。そんな大袈裟なって――」
「やっぱりねえ。いいかいカルア、ちょっと想像してごらん。例えばあんたが敵の中に突っ込んでったとするだろう? そこでさっきの魔法を発動する。指定するのは周り全ての金属だ。そうするとどうなる?」

「ええっと、周りの兵士の鎧や剣や他の武器なんかが全部――あっ!?」
「分かったかい? 武器と防具を失った軍隊なんざ、一部の連中を除いたらあとはちょっと力が強いだけの烏合の衆さ。そこに味方の軍が押し寄せたらどうなる? 魔法師にさえ気をつければ、あっという間に敵軍を殲滅出来ちまうだろう?」
「それは……確かに軍隊殺し、かも……」
「だろう? じゃあさ、それが魔道具になったら? そんなものを放り込まれた方は、もう戦う前から完全に終わっちまうだろう? それをあんたは単独で魔法として実行出来る上に、付与によって魔道具だって作れちまう。つまりは――そういう事さ」

ただ編入試験を頑張っただけ、だったのに……

「完全とは思っちゃいないけど、それなりの枷を付けたつもりだったんだけどねえ。あんた、これでまた国やら貴族連中なんかから狙われる可能性が出てきちまったんだ。全く……帰ったらあいつらにどう説明したもんだかねえ。はぁ、ほんと気が重いよ」



試験の前にベルベルさんが言ってた「しっかりやり過ぎるんじゃないよ」って、これの事だったんだ……
はぁ、しっかりやり過ぎちゃったみたい。



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