スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

文字の大きさ
68 / 278

第44話 ただ試験を頑張っただけなんです #2

しおりを挟む
さあ、今日はいよいよ編入試験の日だ。
――何だろう、今からもう緊張してきたよ。

今日やる試験は『実技』と『学科』のふたつ。
魔法クラスだから『実技』はもちろん魔法。試験の内容は、自分が使える魔法を見せるだけなんだって。元校長先生が言うんだから間違いないよね。
『学科』はみんなに教えてもらったからきっと大丈夫。基礎となる読み書きや計算のやり方なんかは昔父さんや母さんから教えてもらったのと同じだった。ベルベルさんも問題なしって言ってくれたからきっと大丈夫。

そのベルベルさんからは地理とか歴史を、オートカさんからは魔法や魔力に関する基礎知識、ギルマスからは各地の魔物やダンジョンとかについて教えてもらった。
モリスさんから教えてもらったのは魔道具作成について。魔力を動力に変換する方法とか。モリスさんは馬の代わりに魔力で動く乗り物を作りたいんだって。流石インフラの人だね。ああ、あとはアルゴリズムを少し。『条件分岐こそ至高!』みたいな?

ミレアさんは『私はオートカ先輩のアシスタントをやるから』だって。まあこれだけ教えてくれる人がいるんだから教える分野が足りなくなるよね。ミレアさんの場合はもっと大事な理由があるからだろうけど。

そして『学科』の勉強の最終日――
「――これだけ詰め込めばまあ十分だろうね。これならいつでも卒業出来るだろうさ」
あれ、聞き間違いかな? 今『編入』じゃなくて『卒業』って言った?
聞き間違いじゃなければ……、まさか前にピノさんが言ってた「オーバーキル」ってやつ!?

一方『実技』はと言えば……
学校の内容と直接関係ないけどロベリーさんから付与について教えてもらった。もちろんロベリー式のだけど、基礎知識や細かい便利技とかを。
そしてピノさん。
一緒に料理をやりながら色々な調理方法や技術を教えてくれた。それに野営の時の時短調理とかも。最近は待ってるだけじゃなくって、少しお手伝いしたり一緒に料理出来るようになってきたのがすっごく嬉しい――

魔法については座学だけで『実技』は最後まで誰も何も教えてくれなかったんだ。
『やらかし不可避』とか『リカバリー時間が』とか『責任問題』とか言ってね。
みんなちょっと酷くないかな……?
ここは『ゴブま』の中級編みたいな感じで教えてくれませんか、ミレアさん?
あ、目を逸らさないで……お願いします……ダメ?……そうですか……
以上!



――という事で今日の試験を迎えた訳なんだ。
「ベルベルさん、おはようございます」
「ああ、来たねカルア。それじゃあこのまま学校に向かおうか」
「はい、お願いします」

学校に到着すると、聞いていた通り今日は休みの日で生徒は誰もいない。
僕達は直立不動で目だけが泳いでいる門衛の人の前を通って受付へ。挙動不審なのはベルベルさんと一緒だからかな?
受付でベルベルさんが学校の人に声を掛けると――うわっ、学校の人のほうがすっごく緊張した顔で頭を下げてる。挙動不審の原因はやっぱりベルベルさんかぁ。

「じゃあカルア、あんたはこの試験官の案内に従って試験を受けるんだよ。あたしはラーバルの奴と話があるから一緒なのはここまでだ。終わる頃にまた来るからね。しっかりやり過ぎるんじゃないよ」
「はい、分かりました」

って答えたけど、えっと――
『しっかりやり過ぎるんじゃないよ』ってどういう意味?
しっかりやるほうがいいの? やらないほうがいいの?

「君はこちらだ。ついて来たまえ」
その試験官の人について行くと、到着した場所は以前見学した講堂のひとつだった。他には誰もいないみたい。って事は……
今からここで僕一人試験を受けるのか。まるで貸し切りみたい。

という事で学科試験だけど……ひとつひとつの問題は超簡単、だけど問題の数が多かった。これもしかして1年分の内容全部が出題範囲なのかな?
――とは言ってもやっぱり問題は簡単だったから、見直しを含めても30分も経たないうちに全部解き終わっちゃった。
えっと……時間が来るまで待たなきゃダメなのかな?

「あの、すみません」
「はい、どうしましたか? 何かトラブルが?」
「いえ、全て終わったんですけど、時間まで待たなきゃダメですか?」
「ええっ……まだ随分時間が残っているけれど、本当に終了して大丈夫かな?」
「はい。全部出来ましたので」
「そうですか……。分かりました、では少々早いが実技試験に移りましょう」



そして移動した先は――
ここって確か技術実習室だったよね。魔法とか剣術の訓練をする場所。
「これからここで魔法の実技試験を行います。ここでは魔法の熟練度を見せてもらうのだが、君の適性は土魔法と時空間魔法だったね。それ以外は?」
「適性チェックしたんですけど、よく分からない結果になって。その後は調べていないんですけど、風とか水は使えるんじゃないかって言われました」

「分かりました。では最初にあの的に向かって何か魔法を撃ってみて下さい」
そう言って指差した先には……鎧を着た案山子が数体並んでる。ギルドで魔剣の試し斬りをしたアレと似た感じ。久し振り、元気?

――ってちょっと待って! 今僕が使える魔法で攻撃って……? あれ? 【空間ずらし】は使用禁止だよね。魔物じゃないから【スティール】は効かないし――ってそもそも【スティール】だって使用禁止だよ。あとは……魔剣? いや魔法の試験に魔剣ってダメに決まってるよ。あと他に出来そうな事って……? 不味い、これじゃあ試験に落ちちゃうよ! えっと、何か何か何か……鎧を壊す……魔法――あっそうだよ、鎧を壊せばいいんだよ! それならアレでいけるかも!

「もし無理そうなら何か別の――」
「大丈夫! 今からやります!」
危ない危ない、中止されるところだった。
よし、じゃあ空間把握からあの鎧を指定して……うん、思った通り大丈夫そうだ。
じゃあ――
「【融解】」

鎧はドロドロに溶け、ずるずるぼとぼとと案山子の足元に落ちていった。
よし、狙い通り! どうですか試験管さん!?
って試験官の人を見ると――あれ? いつかどこかで見た事ある表情を……?
そう、あれはギルマスとかモリスさんとかが――
「――あの、どうでしょう、か?」

「……あ、っと、そ、そうだった、すまないね。ちょっと驚いたというか……ええーと……それで今のはどのような攻撃魔法かな?」
「あっいえ、攻撃魔法っていう訳じゃなくって、時空間魔法で鎧を指定してから錬成魔法で【融解】したんです」
「なっ!? 遠隔……錬成……だって?」

「あの、もしかして……『錬成』じゃダメ、でしたか?」
「いや大丈夫だ……多分。――それでこの魔法は複数の相手への同時攻撃などは?」
「ああ、それなら出来ると思います。ちょっとやってみますね」

並んでいる鎧は全部範囲内だから問題なし。それら全てを指定したら――
「【融解】」

――うん、成功。
どうですか、試験官さん――って、あれ? 校舎の中に走って行っちゃった。
「ちょちょちょ、ちょっとそのまま待つように! すぐに戻るからぁぁぁ…………」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

一流冒険者トウマの道草旅譚

黒蓬
ファンタジー
主人公のトウマは世界の各地を旅しながら、旅先で依頼をこなす冒険者。 しかし、彼には旅先で気になるものを見つけると寄らずにはいられない道草癖があった。 そんな寄り道優先の自由気ままなトウマの旅は、今日も新たな出会いと波乱を連れてくる。

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

極限効率の掃除屋 ――レベル15、物理だけで理を解体する――

銀雪 華音
ファンタジー
「レベル15か? ゴミだな」 世界は男を笑い、男は世界を「解体」した。 魔力も才能も持たず、万年レベル15で停滞する掃除屋、トワ。 彼が十年の歳月を費やして辿り着いたのは、魔法という神秘を物理現象へと引きずり下ろす、狂気的なまでの**『極限効率』**だった。 一万回の反復が生み出す、予備動作ゼロの打撃。 構造の隙間を分子レベルで突く、不可視の解体。 彼にとって、レベル100超えの魔物も、神の加護を受けた聖騎士も、ただの「非効率な肉の塊」に過ぎない。 「レベルは恩恵じゃない……。人類を飼い慣らすための『制限(リミッター)』だ」 暴かれる世界の嘘。動き出すシステムの簒奪者。 管理者が定めた数値(レベル)という鎖を、たった一振りのナイフで叩き切る。 これは、最弱の掃除屋が「論理」という名の剣で、世界の理(バグ)を修正する物語。気になる方は読んでみてください。 ※アルファポリスで先行で公開されます。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた

Mr.Six
ファンタジー
 仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。  訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。 「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」  そう開き直り、この世界を探求することに――

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

不死王はスローライフを希望します

小狐丸
ファンタジー
 気がついたら、暗い森の中に居た男。  深夜会社から家に帰ったところまでは覚えているが、何故か自分の名前などのパーソナルな部分を覚えていない。  そこで俺は気がつく。 「俺って透けてないか?」  そう、男はゴーストになっていた。  最底辺のゴーストから成り上がる男の物語。  その最終目標は、世界征服でも英雄でもなく、ノンビリと畑を耕し自給自足するスローライフだった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  暇になったので、駄文ですが勢いで書いてしまいました。  設定等ユルユルでガバガバですが、暇つぶしと割り切って読んで頂ければと思います。

処理中です...