どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません

しげむろ ゆうき

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 目を覚ますと自室のベッドの上だった。
 なんで自分は寝ていたんだろうと考える。そして思い出す。
 昨日、お父様の帰りをずっと待っていたが帰ってこなかった。だから、朝まで起きて待っていようとしたら、お母様とユリに怒られてしまったので泣く泣く自分の部屋に戻ったのだ。それで横になっているうちに寝てしまっていたらしい。

 お父様はもう帰っているかしら? もしかして何かあったとか……

 そう考えたら、居ても立っても居られなくなり、起きるとすぐに部屋を飛び出す。しかし、飛び出した瞬間、驚いてしまう。目の前になぜかウルフイット第三王子が立っていたから。
 私は声も出せず、驚いていたが段々と状況を理解する。

「これは夢の中なのね……」

 私はこのあり得ない状況に納得して頷いていると、ウルフイット第三王子が顔を慌てて背けながら否定した。

「ち、違う。夢じゃない……」
「えっ……。なぜでしょうか? 王族であるあなた様がこんな場所におられるはずはございません。きっと私の願望が願って、夢の中に出てしまったのですね……」
「が、願望だと? お前は俺に夢の中で会いたいと思ってくれていたのか?」
「はい、もちろんです……」

 私は夢の中なのでつい本音で言ってしまったが、やはり途中から恥ずかしくなり俯く。
 しかし、欲がまた出てしまったのだ。夢の中だしウルフイット第三王子のお顔をもっと間近で見てしまおうと……
 だから、私は顔を上げてウルフイット第三王子をしっかりと目に焼き付けようとしたら、目の前には怒った表情のユリが立っていたのだ。

「あらっ? 今度はユリが怒った顔をして立っているわ。なぜかしら?」
「怒るのは当たり前です。お嬢様、なぜ、その様なお姿で部屋から出られているのですか?」
「はい?」

 私はユリに言われて自分がまだ、ネグリジェだということに気づく。しかし、それがなんだというのだろう。だって、今は夢の中なのだから気にする必要はないのだ。
 だから、私はユリが消えてまたウルフイット第三王子が現れるように念じる。しかし、全くユリは消えずに仁王立ちになって私を睨んでいた。だから、私は思わずユリに言ったのだ。

「夢の中くらい良いじゃないの。さあ、また、ウルフイット第三王子が私の前に出てきて……」

 私は今度は祈りのポーズを取ると、ユリが私の肩をがっちり掴んで言ってきた。

「夢ではなく、現実です。ちゃんと目を覚ましましょうね。お嬢様」

 ユリはそう言って可哀想な人を見るような目で私を見てきた。そのユリの憐れみの瞳と、肩に感じる手の温もりで私は現実を知り固まる。
 そして辺りを見回し、離れた場所でこちらを見ないようにしているウルフイット第三王子の姿を見つけると私は卒倒してしまうのだった。



 私はなんとか意識を取り戻し、今は応接間でウルフイット第三王子と一緒にいる。別にアルバン様とダーマル男爵令嬢みたいにイチャイチャしているわけではない。
 真剣な話をこれからしようとしているのだ。私は早速、口を開いた。

「……あの、ウルフイット第三王子が来られたのはやはり、昨日お父様が王宮にお話しに行ったからでしょうか?」
「ああ。昨日ホイット子爵が来て隣国の件を話してくれたんだ。それで、情報共有や今後のことを話し合うためホイット子爵は二、三日王宮に泊まることを伝えにきたんだ」

 ウルフイット第三王子の説明を聞き、お父様が無事である事にほっとすると同時に疑問も浮かんだ。

「そうだったのですか……。でも、なぜわざわざウルフイット第三王子が来られたのですか?」
「それはお前に……いや、俺なら伝令より早く動けるからな」
「そうだったのですか。それはわざわざ申し訳ありません」
「い、いや、気にする必要はない。俺が勝手に動いてるだけだからな。それよりもホイット子爵家は厄介な事に巻き込まれたな」
「はい……」
「だが、安心しろ。今、王家が全力で動いている。だから、お前は普段通りにしていればいい」
「普段通りですか……。そうなるとアルバン様との事はどうしたら……」

 するとウルフイット第三王子は苦虫を噛み潰したような顔になる。

「残念だが隣国との繋がりが取れるまでは刺激をしないで欲しい。誰と誰が繋がっているかわからないからな……」
「やはり、そうなりますか……」

 せっかくアルバン様との婚約を取り消せると思っていたのに落胆する。ウルフイット第三王子が頭を下げて謝ってきた。

「すまないな……」
「頭をお上げ下さい。悪いのはダナトフ子爵家とダーマル男爵家です」
「……ああ、そうだな」

 ウルフイット第三王子は頷くと立ち上がった。

「……俺はそろそろ戻る。少し調べたいこともあるからな」
「……あまり、無理をなさらないで下さいね」
「ふふ、良いものだな」

 なぜかウルフイット第三王子は嬉しそうに笑うので私は首を傾げる。

「……良いものですか?」
「ああ、出かける時にこうやって毎回言われたいものだ……」
「ウルフイット第三王子……何度でも言いますわ。その時が来たら……」

 私が微笑むと、ウルフイット第三王子も優しげに微笑んでくるのだった。
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