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第四章「護衛騎士という名の選択肢(クリス)」
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石畳に朝の光が斜めに差し、訓練場の砂に細い影を刻んでいた。
クリス・グレイは木剣を肩に担ぎ、対面の若騎士の踏み込みを受け止める。打突は正しい。けれど肩の力が抜けきらない。
「上半身で押すな。踵から重心を送れ」
「はっ!」
甲冑の接合が澄んだ音を立て、若騎士は二合で崩れた。クリスはすぐに手を伸ばし、起こして砂を払う。
礼を交わし、稽古の列から下がると、同僚のリースが水差しを差し出した。
「聞いたか、クリス。城下が妙に騒がしい」
「朝から“妙に騒がしい”のは城門の雀のことじゃないのか」
「いや、もっと人の口だ。『公爵の婚約が近い』そうだ。相手は誰だろうな、と」
リースは冗談めかして肩をすくめた。「うちの妹まで浮き足だっていた。『護衛に頼れる男しか信じない』そうだ。俺だって護衛だっての」
水を一口飲んで喉を潤しながら、クリスは短く息を吐く。
噂は、真実を運ぶこともあれば、誰かの狙いを運ぶこともある。問題は、どちらが早いかだ。
「訓練、続けておけ。――昼には王子殿下の外回りだ」
「了解。なあ、クリス。お前は“誰の味方”だ?」
リースの問いは軽さに包んだ真顔だった。
クリスは答えず、革手袋の中で指輪を撫でた。丸い銀に、古い家紋。
グレイ家は王妃の旧臣筋。代々、剣は“誰かの正しさ”ではなく“守られるべき弱さ”の側にあると教えられてきた。
――弱きを護るは誉れ。
父が出立の朝に言った言葉が、金属よりも重く、胸の内側に在る。
誰の味方かと問われれば、迷わずに答えられる。
“名誉の側”でも“噂の側”でもない。“名を持たぬ不利”の側だ。
午下がり、王子の小随行で回廊を進む。磨かれた床石は光を返し、柱の影が一定の間隔で落ちる。
王子は侍従に次の夜会の進行を確認しながら、さりげなくクリスに視線を流した。
「城下は賑やからしいな、グレイ」
「人の口は矢より速うございます、殿下」
「的に当たれば良いが、無闇に放てば人を傷つける。……それだけだ」
王子は言葉を切り、すぐに別の話題へ移った。叱責でも命でもない。ただの独白に似た重み。
クリスは頷き、回廊の先――王妃の居館へ向かう侍女たちの列に、目だけで礼を送る。先頭に立つのは侍女長。年輪を刻んだ穏やかな眼差しが、一瞬こちらを測る。
会釈を返した侍女長が、すれ違いざまに小声で言った。
「鏡台の前で人は嘘をつきます。けれど、鏡は角度を覚えています」
「……肝に銘じます」
意味は今はわからない。けれど、胸の引き出しにしまっておくべき言葉だ、と直感が告げる。
(角度、か。光、影、反射――)
後で、訓練場の道具庫にある磨き直しの盾で、光の跳ね返りを確かめよう。写真師が使うという銀板の噂も、耳に入れておくべきだ。
クリスは思考の端で、そんな走り書きをした。
詰所に戻ると、文書係が小走りで近寄ってきた。
「グレイ卿。宮廷案内より回覧です。貴婦人の茶会の“護衛実演”の可否を検討せよ、とのこと」
「護衛実演?」
「伯爵家主催。――詳細はまだ。安全啓発を名目にした、貴族邸での公開稽古のような催しだそうです」
伯爵家。
茶会。
安全啓発――名目の軽さが、かえって重い。
「可否は上に預けよう。だが参加が決まるなら、事前に会場構造と、照明の位置、鏡や窓の配置を確認する。人混みと光は、いつだって“事故”を呼ぶ」
「了解しました。図面が入り次第、写しを回します」
文書係が去ると、別の若手が囁く。
「噂、増えてます。印刷所に“版下”が持ち込まれてるって」
クリスは眉をひそめた。「版下」
「誰が何を言った、じゃなく、『いつ、どこで、どう広めるか』が先に決まっているみたいで」
言葉が先に在り、事実が後から追いかける――それは危険だ。
誰かの名誉が、都合よく“正しい”印影で覆われる前に、角度を一つひっくり返す必要がある。
机に戻ると、革表紙の小さな帳面を開いた。
日付、場所、噂の文言、出所、確認できた証左、未確認の点。
騎士の剣が人を護るなら、記録という刃は言葉を護る。
父の時代も、その前も、戦のない季節には“記す”ことが家の務めだった。王妃の旧臣にふさわしく。
――弱きを護るは誉れ。
――それは、声の小さい者の言葉を拾うことでもある。
クリスは羽根ペンを動かし、最後の欄に小さく書いた。
「茶会“護衛実演”提案:伯爵家主催。注意:照明・鏡・窓。目的:不明(啓発を装う?)」
そして、もうひとつ。
「“婚約近い”噂:対象=公爵。相手名不明。印刷所に版下。意図=誰かを“相手”に見せたい者がいる」
ペン先が止まる。
“相手”として、いちばん都合のよい名は、誰だ。
人は納得したい名を信じる――かつて老執事が言った言葉が、灰になった暖炉の匂いとともに甦る。
そのとき、詰所の入口に影が差した。
王妃付き侍女長が、供を一人だけ連れて立っていた。
「グレイ卿。王妃さまの御意向です。『噂は風だが、風向きは測れる』。あなたの記録を、月末の報告に添えなさい」
「拝命いたします」
侍女長は、目だけで笑った。「あなた方の剣は、形あるものだけを斬る道具ではないでしょう」
「ええ。言葉の影も、光で断ち切れます」
短い会話が終わり、扉が静かに閉まる。
クリスは深く息を吸い、帳面の端を折った。
剣帯を締め直し、棚から磨き上げた小盾を取り出す。角度を変え、光を受けては壁に弧を描かせる。
光は嘘をつかない。
嘘をつくのは、角度を選ぶ人間のほうだ。
夕刻、訓練場はひと気がまばらになり、空は薄紫に変わりつつあった。
クリスは一人で構えに入る。斬り、受け、半歩退き、踏み込む。動きは静かで、砂だけがさらりと鳴る。
視界の端に、城壁越しの白い何かが揺れた。遠すぎて形は掴めない。ただ、風に応じてほどけない“結び目”のように見えた。
(ほどけないなら、護ればいい)
(ほどけてしまうなら、結び直せるように支えればいい)
誰の名も、まだ書かれていない。
だからこそ、誰かが書きたいように書こうとする。
剣はそこに立つ。名が書かれる“前”に。
稽古を終えて詰所に戻ると、扉の隙間から夕餉の匂いが流れ込んできた。
クリスは帳面を革紐で綴じ、懐へ収める。
今日の記録はここまで。明日は、印刷所の仕事場の灯りの点き方を、人づてに訊いて回ろう。版下が運ばれるのは朝か夜か、休日か。それだけでも“角度”がひとつ変わる。
灯りがともる。
剣の影が床に長く伸びる。
弱きを護るは誉れ――その言葉は、静かな誓いとなって、鞘の中で冷たく光った。
クリス・グレイは木剣を肩に担ぎ、対面の若騎士の踏み込みを受け止める。打突は正しい。けれど肩の力が抜けきらない。
「上半身で押すな。踵から重心を送れ」
「はっ!」
甲冑の接合が澄んだ音を立て、若騎士は二合で崩れた。クリスはすぐに手を伸ばし、起こして砂を払う。
礼を交わし、稽古の列から下がると、同僚のリースが水差しを差し出した。
「聞いたか、クリス。城下が妙に騒がしい」
「朝から“妙に騒がしい”のは城門の雀のことじゃないのか」
「いや、もっと人の口だ。『公爵の婚約が近い』そうだ。相手は誰だろうな、と」
リースは冗談めかして肩をすくめた。「うちの妹まで浮き足だっていた。『護衛に頼れる男しか信じない』そうだ。俺だって護衛だっての」
水を一口飲んで喉を潤しながら、クリスは短く息を吐く。
噂は、真実を運ぶこともあれば、誰かの狙いを運ぶこともある。問題は、どちらが早いかだ。
「訓練、続けておけ。――昼には王子殿下の外回りだ」
「了解。なあ、クリス。お前は“誰の味方”だ?」
リースの問いは軽さに包んだ真顔だった。
クリスは答えず、革手袋の中で指輪を撫でた。丸い銀に、古い家紋。
グレイ家は王妃の旧臣筋。代々、剣は“誰かの正しさ”ではなく“守られるべき弱さ”の側にあると教えられてきた。
――弱きを護るは誉れ。
父が出立の朝に言った言葉が、金属よりも重く、胸の内側に在る。
誰の味方かと問われれば、迷わずに答えられる。
“名誉の側”でも“噂の側”でもない。“名を持たぬ不利”の側だ。
午下がり、王子の小随行で回廊を進む。磨かれた床石は光を返し、柱の影が一定の間隔で落ちる。
王子は侍従に次の夜会の進行を確認しながら、さりげなくクリスに視線を流した。
「城下は賑やからしいな、グレイ」
「人の口は矢より速うございます、殿下」
「的に当たれば良いが、無闇に放てば人を傷つける。……それだけだ」
王子は言葉を切り、すぐに別の話題へ移った。叱責でも命でもない。ただの独白に似た重み。
クリスは頷き、回廊の先――王妃の居館へ向かう侍女たちの列に、目だけで礼を送る。先頭に立つのは侍女長。年輪を刻んだ穏やかな眼差しが、一瞬こちらを測る。
会釈を返した侍女長が、すれ違いざまに小声で言った。
「鏡台の前で人は嘘をつきます。けれど、鏡は角度を覚えています」
「……肝に銘じます」
意味は今はわからない。けれど、胸の引き出しにしまっておくべき言葉だ、と直感が告げる。
(角度、か。光、影、反射――)
後で、訓練場の道具庫にある磨き直しの盾で、光の跳ね返りを確かめよう。写真師が使うという銀板の噂も、耳に入れておくべきだ。
クリスは思考の端で、そんな走り書きをした。
詰所に戻ると、文書係が小走りで近寄ってきた。
「グレイ卿。宮廷案内より回覧です。貴婦人の茶会の“護衛実演”の可否を検討せよ、とのこと」
「護衛実演?」
「伯爵家主催。――詳細はまだ。安全啓発を名目にした、貴族邸での公開稽古のような催しだそうです」
伯爵家。
茶会。
安全啓発――名目の軽さが、かえって重い。
「可否は上に預けよう。だが参加が決まるなら、事前に会場構造と、照明の位置、鏡や窓の配置を確認する。人混みと光は、いつだって“事故”を呼ぶ」
「了解しました。図面が入り次第、写しを回します」
文書係が去ると、別の若手が囁く。
「噂、増えてます。印刷所に“版下”が持ち込まれてるって」
クリスは眉をひそめた。「版下」
「誰が何を言った、じゃなく、『いつ、どこで、どう広めるか』が先に決まっているみたいで」
言葉が先に在り、事実が後から追いかける――それは危険だ。
誰かの名誉が、都合よく“正しい”印影で覆われる前に、角度を一つひっくり返す必要がある。
机に戻ると、革表紙の小さな帳面を開いた。
日付、場所、噂の文言、出所、確認できた証左、未確認の点。
騎士の剣が人を護るなら、記録という刃は言葉を護る。
父の時代も、その前も、戦のない季節には“記す”ことが家の務めだった。王妃の旧臣にふさわしく。
――弱きを護るは誉れ。
――それは、声の小さい者の言葉を拾うことでもある。
クリスは羽根ペンを動かし、最後の欄に小さく書いた。
「茶会“護衛実演”提案:伯爵家主催。注意:照明・鏡・窓。目的:不明(啓発を装う?)」
そして、もうひとつ。
「“婚約近い”噂:対象=公爵。相手名不明。印刷所に版下。意図=誰かを“相手”に見せたい者がいる」
ペン先が止まる。
“相手”として、いちばん都合のよい名は、誰だ。
人は納得したい名を信じる――かつて老執事が言った言葉が、灰になった暖炉の匂いとともに甦る。
そのとき、詰所の入口に影が差した。
王妃付き侍女長が、供を一人だけ連れて立っていた。
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剣帯を締め直し、棚から磨き上げた小盾を取り出す。角度を変え、光を受けては壁に弧を描かせる。
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嘘をつくのは、角度を選ぶ人間のほうだ。
夕刻、訓練場はひと気がまばらになり、空は薄紫に変わりつつあった。
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視界の端に、城壁越しの白い何かが揺れた。遠すぎて形は掴めない。ただ、風に応じてほどけない“結び目”のように見えた。
(ほどけないなら、護ればいい)
(ほどけてしまうなら、結び直せるように支えればいい)
誰の名も、まだ書かれていない。
だからこそ、誰かが書きたいように書こうとする。
剣はそこに立つ。名が書かれる“前”に。
稽古を終えて詰所に戻ると、扉の隙間から夕餉の匂いが流れ込んできた。
クリスは帳面を革紐で綴じ、懐へ収める。
今日の記録はここまで。明日は、印刷所の仕事場の灯りの点き方を、人づてに訊いて回ろう。版下が運ばれるのは朝か夜か、休日か。それだけでも“角度”がひとつ変わる。
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