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第四十二章 「王妃の召喚(王家の動き)」
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王城の最奥、
白薔薇の間――。
王妃の居室は
朝の光が大理石の床に反射し、
まるで“光そのもの”が形を持って降り立ったように
白く、静かに輝いていた。
薔薇の刺繍を施した薄金のカーテンが揺れ、
淡い香木の香りが空気を整えている。
王妃レイナは、
書簡を一枚、静かに閉じた。
優雅で、凛とした瞳。
だが、その奥には鋭い判断の光が揺れていた。
「……思ったより早く、街が動いたわね」
侍女長メレディスが首を垂れる。
「はい、陛下。
“影の婚約”の噂は、
すでに王都全域へ広まっております」
「影は消せる。
だが――“噂”は燃えるのが早い」
王妃は立ち上がり、
細い手で杖の柄を軽く押した。
「この件、
放置すれば二家が争う。
争いは、やがて王家の判断を鈍らせる。
……その前に動きましょう」
「――まずは三名。
ヴァレンタイン嬢、
公爵カルロス、
近衛騎士クリスを“召喚”なさい」
侍女長の手が止まった。
「……陛下、三名同時に……?」
「ええ」
王妃の声は静かだが、揺るぎない。
「“沈黙の誤解”を解くには、
沈黙に陥る理由を与えた者たちに
まず事実を語らせる必要がある」
その口調は優雅でさえあるのに、
内容は容赦なかった。
「――“揃えて話させる”のが一番早い」
「それでは……伯爵家ロズモンドへは?」
問われた王妃は
扉の外へ意識を向けるように視線を上げた。
「……あの家は後回し。
証拠が揃っていないうちに呼び出せば、
“被害者の顔”をして逃げるわ」
「さすがでございます、陛下……」
「まずは“影を浴びた者”を守るのが先よ」
王妃の目が細くなった。
「シャーロット嬢は――
誰よりも先に、
白薔薇の庇護を与えるべき子だわ」
その口調には微かな柔らかさがあった。
(……見ておられたのね、陛下)
メレディスは胸の奥で誇らしさを覚えた。
王妃は侍女を振り返り、
静かに命じた。
「“召喚状”を三通。
ただし、文言は違えて」
「違えて……?」
「ええ――
三人それぞれに必要な“呼び方”がある」
ひとりひとりの性質を
熟知している者しかできない采配だった。
カルロスへの召喚状
『公爵家後継者として、
“名誉保全に関する重要な確認”につき
速やかに参殿されたし』
――怒りではなく“責務”で動かす。
シャーロットへの召喚状
『貴女の名誉に関わる案件につき、
王家として保護の意思をもって
御出座を願います』
――“守られている”と感じさせる。
クリスへの召喚状
『近衛騎士としての記録と証言を求む。
王妃庁に参上のこと』
――元来の職務として呼ぶ。
侍女たちは、
王妃の細やかさに息を飲んだ。
「メレディス」
「はい、陛下」
「――準備を。
“白薔薇の間”で、
三人を待つわ」
王妃の声は柔らかく、
しかし鋭かった。
「そして……
ヴァレンタイン嬢に伝えなさい」
「……伝えるとは?」
王妃レイナは、
微笑をひとつ浮かべた。
「『泣く必要はない』と」
その微笑は、
弱き者を守る者の強い光を宿していた。
王妃が歩き出す。
薄金のドレスの裾が
大理石を静かに滑り、
白薔薇の間に向けて
静かな足音が響く。
――王家が動いたのだ。
噂も影も、
マリナの策略でさえも、
ここからは“王妃の手のひら”の上で揺れることになる。
白薔薇の間――。
王妃の居室は
朝の光が大理石の床に反射し、
まるで“光そのもの”が形を持って降り立ったように
白く、静かに輝いていた。
薔薇の刺繍を施した薄金のカーテンが揺れ、
淡い香木の香りが空気を整えている。
王妃レイナは、
書簡を一枚、静かに閉じた。
優雅で、凛とした瞳。
だが、その奥には鋭い判断の光が揺れていた。
「……思ったより早く、街が動いたわね」
侍女長メレディスが首を垂れる。
「はい、陛下。
“影の婚約”の噂は、
すでに王都全域へ広まっております」
「影は消せる。
だが――“噂”は燃えるのが早い」
王妃は立ち上がり、
細い手で杖の柄を軽く押した。
「この件、
放置すれば二家が争う。
争いは、やがて王家の判断を鈍らせる。
……その前に動きましょう」
「――まずは三名。
ヴァレンタイン嬢、
公爵カルロス、
近衛騎士クリスを“召喚”なさい」
侍女長の手が止まった。
「……陛下、三名同時に……?」
「ええ」
王妃の声は静かだが、揺るぎない。
「“沈黙の誤解”を解くには、
沈黙に陥る理由を与えた者たちに
まず事実を語らせる必要がある」
その口調は優雅でさえあるのに、
内容は容赦なかった。
「――“揃えて話させる”のが一番早い」
「それでは……伯爵家ロズモンドへは?」
問われた王妃は
扉の外へ意識を向けるように視線を上げた。
「……あの家は後回し。
証拠が揃っていないうちに呼び出せば、
“被害者の顔”をして逃げるわ」
「さすがでございます、陛下……」
「まずは“影を浴びた者”を守るのが先よ」
王妃の目が細くなった。
「シャーロット嬢は――
誰よりも先に、
白薔薇の庇護を与えるべき子だわ」
その口調には微かな柔らかさがあった。
(……見ておられたのね、陛下)
メレディスは胸の奥で誇らしさを覚えた。
王妃は侍女を振り返り、
静かに命じた。
「“召喚状”を三通。
ただし、文言は違えて」
「違えて……?」
「ええ――
三人それぞれに必要な“呼び方”がある」
ひとりひとりの性質を
熟知している者しかできない采配だった。
カルロスへの召喚状
『公爵家後継者として、
“名誉保全に関する重要な確認”につき
速やかに参殿されたし』
――怒りではなく“責務”で動かす。
シャーロットへの召喚状
『貴女の名誉に関わる案件につき、
王家として保護の意思をもって
御出座を願います』
――“守られている”と感じさせる。
クリスへの召喚状
『近衛騎士としての記録と証言を求む。
王妃庁に参上のこと』
――元来の職務として呼ぶ。
侍女たちは、
王妃の細やかさに息を飲んだ。
「メレディス」
「はい、陛下」
「――準備を。
“白薔薇の間”で、
三人を待つわ」
王妃の声は柔らかく、
しかし鋭かった。
「そして……
ヴァレンタイン嬢に伝えなさい」
「……伝えるとは?」
王妃レイナは、
微笑をひとつ浮かべた。
「『泣く必要はない』と」
その微笑は、
弱き者を守る者の強い光を宿していた。
王妃が歩き出す。
薄金のドレスの裾が
大理石を静かに滑り、
白薔薇の間に向けて
静かな足音が響く。
――王家が動いたのだ。
噂も影も、
マリナの策略でさえも、
ここからは“王妃の手のひら”の上で揺れることになる。
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