悪役令嬢は六度目の人生を平穏に送りたい

柴田はつみ

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第十五章 妊娠の噂と深まる絶望

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側室が王宮に迎えられてから、アーチ王子殿下の足がリーチェの元から遠ざかるにつれて、リーチェの心は深い孤独に沈んでいた。

そんな中、王宮をざわつかせる新たな噂がリーチェの耳に届いた。

「どうやら、側室様がご懐妊なさったとか‥」侍女たちのヒソヒソ話しが、リーチェの耳に飛び込んできた。

その瞬間、リーチェの全身から血の気が引いた。五度目の人生を繰り返してきた彼女にとって、側室の妊娠は、自身の「役目」の終わり、そして存在価値の喪失を意味した。

(ついに、来てしまった‥)

リーチェは、息をすることさえ苦しく感じた。アーチの溺愛は、自分を殺さないための手段だったのか。

世継ぎのため、王国の安定のため、自分はただの「王妃」という肩書きにすぎなかったのか。過去の人生で味わった「捨てられる」痛みと、自分自身の無力感が、リーチェの心を激しく打ちのめした。

アーチの溺愛は、いつしかリーチェにとっての甘い檻となっていた。その檻の中で、リーチェは彼からの愛情だけを心の支えにして生きてきた。

その支えが、今、目の前から消え去ろうとしている。リーチェは、王妃としての務めを機械的にこなしながらも、その心は深い悲しみと絶望に囚われていた。

食事も喉を通らず、夜は眠れない日々が続いた。アーチは、相変わらずリーチェの元へはほとんど来ず、側室の元で夜を過ごしていると聞かされるたび、リーチェの心は凍り付いていくようだった。
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