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第17章「消えた鍵と閉ざされた扉」
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朝になっても、
シャルロットの胸は冷えたままだった。
外は明るいのに、
心は昨夜のあの笑い声に囚われている。
(“ふふ”……
確かに聞こえた……
あれは空耳なんかじゃない)
それでも――
シャルロットは“言葉”ではなく“静かな表情”で、
朝を迎えようとしていた。
「……奥さま、着替えをお持ちいたしました」
ローザが入ってくる。
けれど彼女の手元に抱えられた
衣装箱が、不自然に軽い。
「あら……?
今日の午前のお茶会用の鍵は?」
衣装部屋の鍵は、
いつもこの小箱の横に添えられているはずだった。
ローザは青ざめて首を振る。
「そ、それが……どこを探しても見当たらず……
奥さまのお部屋からも、
衣装部屋からも……消えてしまって……」
「鍵が……消えた?」
シャルロットの胸がざわついた。
ただの紛失なら、
まだいい。
しかし――
昨夜のあの笑い声、白百合の香り、
控室で見た赤い跡。
それらの記憶が
ひとつにつながってしまう。
(……また、何かが動いているの?)
ローザは声を震わせた。
「夜のあいだに、
誰かが鍵を持ち出したのかもしれません……」
「夜のあいだに……」
シャルロットは喉を押さえた。
昨夜は自分も眠れず、
部屋の外で“影”が動くのを見た。
笑い声も。
(……まさか、あれが……?
前妻様が……?)
胸がぎゅっと締め付けられる。
その時――
「シャルロット」
カルロスが扉の向こうに立っていた。
昨夜と違い、
その表情には“決意”が浮かんでいる。
「……鍵が消えたと聞いた」
「はい……
ローザが朝になって気づいたようでして……」
カルロスは深いため息をひとつ落とした。
「……屋敷のすべての鍵を確認させる。
扉という扉を――今日中に」
シャルロットは目を瞬いた。
「すべて……ですか?」
「そうだ」
カルロスの声は低く硬い。
「この屋敷のどこかで
“何者かが自由に動けている”可能性がある」
シャルロットは息を呑む。
(何者か……
それは……何?
誰?)
カルロスは続けた。
「シャルロット、
午前中は絶対に部屋から出ないでくれ。
ローザたちが付き添っていれば安全だ」
「……安全かどうか、
どうして……分かるのですか?」
シャルロットの声が壊れそうに震える。
「昨夜……わたくし、本当に……
笑い声を聞いたのです。
気のせいなんかじゃありません」
カルロスの表情が痛む。
触れたいのに触れられない手が、
胸元で静かに握られる。
「……前妻様が怒っているようにしか……
思えなくて」
「違う!」
カルロスは、
シャルロットの言葉を強く否定した。
「エリザベラは――」
と言いかけて、
言葉を飲み込む。
沈黙。
その沈黙がまた、
シャルロットを傷つける。
(どうして……
大事なところで、教えてくださらないの……?)
カルロスは視線をそらし、
絞り出すように言った。
「……厨房でも“鍵の異変”があった。
食器庫の扉が、
“内側から”閉ざされていたと」
シャルロットは息を呑んだ。
「内側……?」
「普通なら、
人が中にいなければありえないことだ」
(中に……誰か……?
でも……厨房には誰もいない時間だったはず……)
胸に冷たいものが流れ落ちる。
そこへ、別の使用人が慌てて駆け込んできた。
「公爵さま! 奥さま!
東棟の“前妻様の部屋”の扉が……!」
シャルロットの心臓が跳ねた。
カルロスは鋭く問う。
「どうした?」
「鍵が……
鍵穴ごと、外されていました」
「っ……!」
シャルロットは手を口元に当てた。
「鍵穴ごと……?
そんな……誰が……」
使用人の声が震える。
「しかも……部屋の中から……
白百合の香りが……」
白百合。
昨夜と同じ。
手紙と同じ。
肖像画と同じ。
そして、笑い声も。
シャルロットの視界が揺らぐ。
(……わたくし……
本当に……前妻様に……狙われている……?)
カルロスはシャルロットに向き直り、
鋭く言った。
「シャルロット。
今すぐここを出る準備をしてくれ」
シャルロットは首を横に振る。
「……逃げるのですか?」
「逃げるのではない。
“君を守るための場所”に移すんだ」
(守る……?
でも……
離されるだけ……)
シャルロットの胸に寂しさが込み上げる。
「わたくし……ここにいたい……
公爵さまと……離れたくない……」
涙のように揺れる声だった。
カルロスはその声に絶句し、
触れられない手を握りしめる。
彼は言った。
「俺だって、離れたくない」
そう言いながら
触れられない距離がまた二人を隔てる。
「だが……今の屋敷には“敵”がいる。
それは幽霊か、人か……まだ分からない。
だが確実に“誰かがシャルロットを狙っている”」
シャルロットは息を震わせた。
(わたくし……誰に……?
そして、なぜ……?)
カルロスは続ける。
「君がいなくなれば……
その標的は移るかもしれない」
「……移る……?」
「つまり、
“君以外の誰かを狙い始める可能性がある”ということだ」
シャルロットは呆然とした。
(わたくしが……
この屋敷にいないほうが……
みんなが安全になる……?)
それは――
まさに“影の夫人”という言葉を
突きつけられるような痛みだった。
その刹那。
扉が――
ガンッ!!
強い力で叩かれた。
ローザが叫ぶ。
「だ、誰ですか!?
そこにいるのは……!」
返事はない。
ただ、静かに。
――カチャ……カチャ……
扉の鍵が、
外側から、ゆっくり回された。
(っ……!)
シャルロットの背が凍りつく。
カルロスがシャルロットを背に庇い、
短く剣を抜く。
鍵が、完全に回り切った。
ガチャ。
ゆっくり、ゆっくり、扉が開く。
その隙間から流れ込んだのは――
またあの甘く重い、白百合の香りだった。
シャルロットの喉が震える。
「……また……
エリザベラ様の……」
カルロスは低く言った。
「違う。
これは……“誰かがやっている”香りだ」
扉の隙間。
誰かが立っている。
細い影。
シャルロットは胸を掴んだ。
(……この屋敷には……
本当に……“誰か”がいる……!)
そしてその“誰か”は
“鍵の異変”と“閉ざされた扉”を使って
シャルロットに近づいている。
暗い廊下の向こうで、
影がゆっくりこちらを見た。
その瞳だけが、
はっきりと笑っていたように見えた。
――“ふふ”
微笑む気配だけを残して、
その影はすっと闇に消えた。
シャルロットは崩れ落ちそうなほど震えた。
カルロスは剣を握りしめたまま言う。
「もう……限界だ。
シャルロット、君を別邸へ移す」
それは“守る”という名の決断であり、
ふたりの距離をさらに引き裂く選択でもあった。
白百合の香りが途切れた廊下で、
影だけがまだ笑っていた。
シャルロットの胸は冷えたままだった。
外は明るいのに、
心は昨夜のあの笑い声に囚われている。
(“ふふ”……
確かに聞こえた……
あれは空耳なんかじゃない)
それでも――
シャルロットは“言葉”ではなく“静かな表情”で、
朝を迎えようとしていた。
「……奥さま、着替えをお持ちいたしました」
ローザが入ってくる。
けれど彼女の手元に抱えられた
衣装箱が、不自然に軽い。
「あら……?
今日の午前のお茶会用の鍵は?」
衣装部屋の鍵は、
いつもこの小箱の横に添えられているはずだった。
ローザは青ざめて首を振る。
「そ、それが……どこを探しても見当たらず……
奥さまのお部屋からも、
衣装部屋からも……消えてしまって……」
「鍵が……消えた?」
シャルロットの胸がざわついた。
ただの紛失なら、
まだいい。
しかし――
昨夜のあの笑い声、白百合の香り、
控室で見た赤い跡。
それらの記憶が
ひとつにつながってしまう。
(……また、何かが動いているの?)
ローザは声を震わせた。
「夜のあいだに、
誰かが鍵を持ち出したのかもしれません……」
「夜のあいだに……」
シャルロットは喉を押さえた。
昨夜は自分も眠れず、
部屋の外で“影”が動くのを見た。
笑い声も。
(……まさか、あれが……?
前妻様が……?)
胸がぎゅっと締め付けられる。
その時――
「シャルロット」
カルロスが扉の向こうに立っていた。
昨夜と違い、
その表情には“決意”が浮かんでいる。
「……鍵が消えたと聞いた」
「はい……
ローザが朝になって気づいたようでして……」
カルロスは深いため息をひとつ落とした。
「……屋敷のすべての鍵を確認させる。
扉という扉を――今日中に」
シャルロットは目を瞬いた。
「すべて……ですか?」
「そうだ」
カルロスの声は低く硬い。
「この屋敷のどこかで
“何者かが自由に動けている”可能性がある」
シャルロットは息を呑む。
(何者か……
それは……何?
誰?)
カルロスは続けた。
「シャルロット、
午前中は絶対に部屋から出ないでくれ。
ローザたちが付き添っていれば安全だ」
「……安全かどうか、
どうして……分かるのですか?」
シャルロットの声が壊れそうに震える。
「昨夜……わたくし、本当に……
笑い声を聞いたのです。
気のせいなんかじゃありません」
カルロスの表情が痛む。
触れたいのに触れられない手が、
胸元で静かに握られる。
「……前妻様が怒っているようにしか……
思えなくて」
「違う!」
カルロスは、
シャルロットの言葉を強く否定した。
「エリザベラは――」
と言いかけて、
言葉を飲み込む。
沈黙。
その沈黙がまた、
シャルロットを傷つける。
(どうして……
大事なところで、教えてくださらないの……?)
カルロスは視線をそらし、
絞り出すように言った。
「……厨房でも“鍵の異変”があった。
食器庫の扉が、
“内側から”閉ざされていたと」
シャルロットは息を呑んだ。
「内側……?」
「普通なら、
人が中にいなければありえないことだ」
(中に……誰か……?
でも……厨房には誰もいない時間だったはず……)
胸に冷たいものが流れ落ちる。
そこへ、別の使用人が慌てて駆け込んできた。
「公爵さま! 奥さま!
東棟の“前妻様の部屋”の扉が……!」
シャルロットの心臓が跳ねた。
カルロスは鋭く問う。
「どうした?」
「鍵が……
鍵穴ごと、外されていました」
「っ……!」
シャルロットは手を口元に当てた。
「鍵穴ごと……?
そんな……誰が……」
使用人の声が震える。
「しかも……部屋の中から……
白百合の香りが……」
白百合。
昨夜と同じ。
手紙と同じ。
肖像画と同じ。
そして、笑い声も。
シャルロットの視界が揺らぐ。
(……わたくし……
本当に……前妻様に……狙われている……?)
カルロスはシャルロットに向き直り、
鋭く言った。
「シャルロット。
今すぐここを出る準備をしてくれ」
シャルロットは首を横に振る。
「……逃げるのですか?」
「逃げるのではない。
“君を守るための場所”に移すんだ」
(守る……?
でも……
離されるだけ……)
シャルロットの胸に寂しさが込み上げる。
「わたくし……ここにいたい……
公爵さまと……離れたくない……」
涙のように揺れる声だった。
カルロスはその声に絶句し、
触れられない手を握りしめる。
彼は言った。
「俺だって、離れたくない」
そう言いながら
触れられない距離がまた二人を隔てる。
「だが……今の屋敷には“敵”がいる。
それは幽霊か、人か……まだ分からない。
だが確実に“誰かがシャルロットを狙っている”」
シャルロットは息を震わせた。
(わたくし……誰に……?
そして、なぜ……?)
カルロスは続ける。
「君がいなくなれば……
その標的は移るかもしれない」
「……移る……?」
「つまり、
“君以外の誰かを狙い始める可能性がある”ということだ」
シャルロットは呆然とした。
(わたくしが……
この屋敷にいないほうが……
みんなが安全になる……?)
それは――
まさに“影の夫人”という言葉を
突きつけられるような痛みだった。
その刹那。
扉が――
ガンッ!!
強い力で叩かれた。
ローザが叫ぶ。
「だ、誰ですか!?
そこにいるのは……!」
返事はない。
ただ、静かに。
――カチャ……カチャ……
扉の鍵が、
外側から、ゆっくり回された。
(っ……!)
シャルロットの背が凍りつく。
カルロスがシャルロットを背に庇い、
短く剣を抜く。
鍵が、完全に回り切った。
ガチャ。
ゆっくり、ゆっくり、扉が開く。
その隙間から流れ込んだのは――
またあの甘く重い、白百合の香りだった。
シャルロットの喉が震える。
「……また……
エリザベラ様の……」
カルロスは低く言った。
「違う。
これは……“誰かがやっている”香りだ」
扉の隙間。
誰かが立っている。
細い影。
シャルロットは胸を掴んだ。
(……この屋敷には……
本当に……“誰か”がいる……!)
そしてその“誰か”は
“鍵の異変”と“閉ざされた扉”を使って
シャルロットに近づいている。
暗い廊下の向こうで、
影がゆっくりこちらを見た。
その瞳だけが、
はっきりと笑っていたように見えた。
――“ふふ”
微笑む気配だけを残して、
その影はすっと闇に消えた。
シャルロットは崩れ落ちそうなほど震えた。
カルロスは剣を握りしめたまま言う。
「もう……限界だ。
シャルロット、君を別邸へ移す」
それは“守る”という名の決断であり、
ふたりの距離をさらに引き裂く選択でもあった。
白百合の香りが途切れた廊下で、
影だけがまだ笑っていた。
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