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翼が生えた王子、辺境伯領へ
17.魔女の棲む森
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「そ、それでも元に戻れたんだ?」
「……父母は魔女に会ったそうです」
「!?」
「母が衝撃のあまり部屋に閉じこもったので、父は全てを話して母の愛を乞いました。そして、狼になった母を抱えて魔女の棲む森に行き、呪いを緩和してもらったと聞きます」
「ま、魔女って今もいるの? そんなに簡単に会えるものなの?」
エドマンドは首を横に振った。こちらがいくら望んでも、魔女が会おうと思った時にしか会えることはない。隣国との境である森は広く、どこにいるのかもわからないと言う。
まるでおとぎ話のようだと思う。でも、僕の背には翼があるし、リリアナ様は確かに狼だった。エドマンドが名残惜しそうに仕事に戻った後も、僕は魔女の話が頭から離れなかった。
「森に行きたい」
「行って、どうなさるんです?」
「魔女に会う」
ペテルの目に怯えが走り、明らかにやめろと言っている。無謀だということはわかっている。何しろ、辺境伯領の森は広大だ。魔女たちがどこにいるのかなんて誰も知らない。しかも、会えるかどうかは魔女次第だ。
「恐れながら、殿下はこちらにいらしたばかりです。領地の見回りさえされたこともないのに、魔女のいるような森に行けるはずがないでしょう」
「……森だって領地の一部だ」
「え?」
「見回りだと言えば何とかならないかな……?」
(できれば、一人で魔女に会いたい。そして……)
「殿下あああ!」と叫ぶペテルの声を聞き流しながら、僕は魔女の棲む森に行く方法を考えていた。
翌日、考えすぎて寝不足の頭で朝食に向かうと、エドマンドがしゅんとしていた。新たな貿易協定を結ぶために隣国から使者がやってくる。彼らが滞在する三日間は僕と一緒にいられないと言う。確かにこの翼があっては、食事の同席もできないだろう。ため息をつくエドマンドを慰めながら、はっとした。これは絶好の機会なのではないだろうか。
「エドマンド! 城の外をちょっと見て回ってもいいかな」
「え? 城の外を?」
「うん。領地の様子が見たいんだ」
「ミシューが我が領地に関心を持ってくださるのは嬉しいです。しかし、お一人で行動されるのは危険です」
いつ何があるかわからないとエドマンドは首を振る。僕はエドマンドの瞳をじっと見つめた。
「護衛騎士たちがいる。それに、ベールも必ず付けるよ」
エドマンドは眉を寄せてしばらく考え込んでいた。自分が側にいないのに大丈夫だろうか、やっぱり危険では?と迷いが顔に書いてある。僕はそっと、エドマンドの手に自分の手を重ねた。
「エドマンドと会えない間、一人きりだろう? 寂しいし、外に出たら気が紛れると思うんだ。心配をかけるようなことはしないと誓うから」
「ミシュー……」
「お、お願い」
エドマンドは僕の手を優しく握り返した。心配そうに見つめられると、心の奥まで覗かれそうでドキドキする。エドマンドは「約束ですよ」と言って了承してくれた。
朝食後すぐに、僕の護衛に付く騎士が選ばれた。あまり大勢では目立ちすぎるので、三人の騎士が付くことになった。二人は王都からここに来るまでの間も護衛を務めた騎士で、一人は初めて見る顔だ。城付きで腕が立つという騎士は、僕とあまり年が変わらない若さで驚いた。
彼らは机に辺境伯領の地図を広げた。北に連なる山々とその麓から西に森が広がっている。まず、城下町をご覧になりますかと聞かれて、僕は首を振った。
「魔女が棲むと言われる森に行ってみたいんだ」
騎士たちはぎょっとしたように顔を見合わせた。
「殿下、ご覧の通り森は広大です。魔女がいるとは言われておりますが……」
「見てみたいだけなんだ。あまり遠出はできないから近くだといいんだけど」
騎士たちは、魔女が現れたという伝説のある場所を幾つか示してくれた。その中で一番城から近い場所に、早速出発することにした。
「……父母は魔女に会ったそうです」
「!?」
「母が衝撃のあまり部屋に閉じこもったので、父は全てを話して母の愛を乞いました。そして、狼になった母を抱えて魔女の棲む森に行き、呪いを緩和してもらったと聞きます」
「ま、魔女って今もいるの? そんなに簡単に会えるものなの?」
エドマンドは首を横に振った。こちらがいくら望んでも、魔女が会おうと思った時にしか会えることはない。隣国との境である森は広く、どこにいるのかもわからないと言う。
まるでおとぎ話のようだと思う。でも、僕の背には翼があるし、リリアナ様は確かに狼だった。エドマンドが名残惜しそうに仕事に戻った後も、僕は魔女の話が頭から離れなかった。
「森に行きたい」
「行って、どうなさるんです?」
「魔女に会う」
ペテルの目に怯えが走り、明らかにやめろと言っている。無謀だということはわかっている。何しろ、辺境伯領の森は広大だ。魔女たちがどこにいるのかなんて誰も知らない。しかも、会えるかどうかは魔女次第だ。
「恐れながら、殿下はこちらにいらしたばかりです。領地の見回りさえされたこともないのに、魔女のいるような森に行けるはずがないでしょう」
「……森だって領地の一部だ」
「え?」
「見回りだと言えば何とかならないかな……?」
(できれば、一人で魔女に会いたい。そして……)
「殿下あああ!」と叫ぶペテルの声を聞き流しながら、僕は魔女の棲む森に行く方法を考えていた。
翌日、考えすぎて寝不足の頭で朝食に向かうと、エドマンドがしゅんとしていた。新たな貿易協定を結ぶために隣国から使者がやってくる。彼らが滞在する三日間は僕と一緒にいられないと言う。確かにこの翼があっては、食事の同席もできないだろう。ため息をつくエドマンドを慰めながら、はっとした。これは絶好の機会なのではないだろうか。
「エドマンド! 城の外をちょっと見て回ってもいいかな」
「え? 城の外を?」
「うん。領地の様子が見たいんだ」
「ミシューが我が領地に関心を持ってくださるのは嬉しいです。しかし、お一人で行動されるのは危険です」
いつ何があるかわからないとエドマンドは首を振る。僕はエドマンドの瞳をじっと見つめた。
「護衛騎士たちがいる。それに、ベールも必ず付けるよ」
エドマンドは眉を寄せてしばらく考え込んでいた。自分が側にいないのに大丈夫だろうか、やっぱり危険では?と迷いが顔に書いてある。僕はそっと、エドマンドの手に自分の手を重ねた。
「エドマンドと会えない間、一人きりだろう? 寂しいし、外に出たら気が紛れると思うんだ。心配をかけるようなことはしないと誓うから」
「ミシュー……」
「お、お願い」
エドマンドは僕の手を優しく握り返した。心配そうに見つめられると、心の奥まで覗かれそうでドキドキする。エドマンドは「約束ですよ」と言って了承してくれた。
朝食後すぐに、僕の護衛に付く騎士が選ばれた。あまり大勢では目立ちすぎるので、三人の騎士が付くことになった。二人は王都からここに来るまでの間も護衛を務めた騎士で、一人は初めて見る顔だ。城付きで腕が立つという騎士は、僕とあまり年が変わらない若さで驚いた。
彼らは机に辺境伯領の地図を広げた。北に連なる山々とその麓から西に森が広がっている。まず、城下町をご覧になりますかと聞かれて、僕は首を振った。
「魔女が棲むと言われる森に行ってみたいんだ」
騎士たちはぎょっとしたように顔を見合わせた。
「殿下、ご覧の通り森は広大です。魔女がいるとは言われておりますが……」
「見てみたいだけなんだ。あまり遠出はできないから近くだといいんだけど」
騎士たちは、魔女が現れたという伝説のある場所を幾つか示してくれた。その中で一番城から近い場所に、早速出発することにした。
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