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翼が生えた王子、辺境伯領へ
18.王子の外出
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陽射しが暖かく降りそそぎ、空はどこまでも広い。風も穏やかで、外出にはぴったりの日だった。
ペテルは大急ぎで作られた軽食を山ほど抱え、若い騎士と二人で馬車に積み込んだ。ペテルと僕が馬車に乗り、騎士の一人が御者を務める。残る二人の騎士はそれぞれ騎乗して前後を守ってくれる。
さあ、出発!という時、エドマンドがわざわざ見送りに来てくれた。
「ミシュー、くれぐれもお気をつけて」
「うん、騎士達もいるし心配しないで。エドマンドが、ここに来る途中にたくさん話してくれたでしょう。ずっと領地を見るのを楽しみにしてたんだ」
エドマンドは何か言いかけて、すぐに口を引き結んだ。
「エドマンド?」
「……いいえ、何でもありません」
軽く首を振って、いつもの晴れやかな笑顔を浮かべる。ずっと見送ってくれるエドマンドに窓から手を振った。
辺境伯の城は城壁に囲まれているが、その外側には城下町がある。町の様子を窓越しに眺めているとたくさんの店や広場があるのが見えた。広場では市が立っているのか、多くの人々が集まっている。活気がこちらまで伝わってくるようだった。
「ペテル、見て。騎士たちが勧めるのもわかるよ。こんなに賑わってるなんて」
「ええ、さすが辺境伯のお膝元ですね。まるで王都の様です」
町の出入り口である大門を抜ければ、緑が広がっていく。草を食む動物たちを見つけて、つい窓から顔を出しそうになる。ふと、こちらに向かって大きく手を振る小さな姿が見えた。子どもたちだ。農作業に従事する民も馬車を見ると手を止めて頭を下げる。そんなことが何度もあった。
昼食のために馬車を止め、騎士たちも誘って一緒に昼食をとった。僕が途中で見た光景を話すと、騎士たちが微笑む。
「馬車にはロフォール伯爵家の紋がついています。紋を見て、領民が挨拶をしたのでしょう」
「……慕われているんだね」
騎士たちは揃って頷いた。そして、時間を見つけては辺境伯やエドマンドが各地を視察していると言った。
北の地の自然は厳しい。民が飢えることがないように土地や作物の改良を続け領民たちと対話する。辺境伯やエドマンドは領主としての役割を立派に果たしていた。
森に着くまでの間、僕は手を振る子どもを見かけたら手を振り返してみた。すると、彼らはもっと大きく手を振ってくれる。とても幸せな気持ちで外を眺め続けた。
「殿下! 見えました!」
窓の外から聞こえる言葉に、僕は思わず外を見た。すぐ側に駆けてきた騎士が前方を指し示す。遥か遠くに雪を戴く山々がそびえ、裾野には黒々とした線があった。近づくにつれ膨れ上がる線は木々が連なる林となり、更にはどこまでも続く広大な森へと姿を変える。
(広すぎる! 魔女に会いたいと思っても雲をつかむような話じゃないか)
馬車が森の前で止まり、御者を務めていた騎士が扉を開けてくれた。草の上に足を下ろすと、目の前に森が広がる。
騎士たちが馬を休ませている間、一足先に若い騎士とペテルと共に森に入った。森の中は、思ったよりもずっと明るい。
木々の間には十分に陽が入り、地に穏やかな光が届いている。ゆるやかに風が吹き、背の低い木の合間を小動物が駆けていく。
「……きれいな森」
「木々が過密にならないよう、エドマンド様が木こりたちに伐採を命じておられます。先々代の御領主の頃は戦も多く、森も鬱蒼としていたそうですが」
「うん、もっと恐ろしい所かと思っていたよ」
「奥に行けば人の手は届きませんが、城から近いこの辺りならご安心かと思います」
前方の木々の間にきらきらしたものが見えて、近づいていくと小さな泉があった。澄んだ水はまるで鏡面のように輝いている。手を触れようとすると、若い騎士にやんわりと止められた。
ペテルは大急ぎで作られた軽食を山ほど抱え、若い騎士と二人で馬車に積み込んだ。ペテルと僕が馬車に乗り、騎士の一人が御者を務める。残る二人の騎士はそれぞれ騎乗して前後を守ってくれる。
さあ、出発!という時、エドマンドがわざわざ見送りに来てくれた。
「ミシュー、くれぐれもお気をつけて」
「うん、騎士達もいるし心配しないで。エドマンドが、ここに来る途中にたくさん話してくれたでしょう。ずっと領地を見るのを楽しみにしてたんだ」
エドマンドは何か言いかけて、すぐに口を引き結んだ。
「エドマンド?」
「……いいえ、何でもありません」
軽く首を振って、いつもの晴れやかな笑顔を浮かべる。ずっと見送ってくれるエドマンドに窓から手を振った。
辺境伯の城は城壁に囲まれているが、その外側には城下町がある。町の様子を窓越しに眺めているとたくさんの店や広場があるのが見えた。広場では市が立っているのか、多くの人々が集まっている。活気がこちらまで伝わってくるようだった。
「ペテル、見て。騎士たちが勧めるのもわかるよ。こんなに賑わってるなんて」
「ええ、さすが辺境伯のお膝元ですね。まるで王都の様です」
町の出入り口である大門を抜ければ、緑が広がっていく。草を食む動物たちを見つけて、つい窓から顔を出しそうになる。ふと、こちらに向かって大きく手を振る小さな姿が見えた。子どもたちだ。農作業に従事する民も馬車を見ると手を止めて頭を下げる。そんなことが何度もあった。
昼食のために馬車を止め、騎士たちも誘って一緒に昼食をとった。僕が途中で見た光景を話すと、騎士たちが微笑む。
「馬車にはロフォール伯爵家の紋がついています。紋を見て、領民が挨拶をしたのでしょう」
「……慕われているんだね」
騎士たちは揃って頷いた。そして、時間を見つけては辺境伯やエドマンドが各地を視察していると言った。
北の地の自然は厳しい。民が飢えることがないように土地や作物の改良を続け領民たちと対話する。辺境伯やエドマンドは領主としての役割を立派に果たしていた。
森に着くまでの間、僕は手を振る子どもを見かけたら手を振り返してみた。すると、彼らはもっと大きく手を振ってくれる。とても幸せな気持ちで外を眺め続けた。
「殿下! 見えました!」
窓の外から聞こえる言葉に、僕は思わず外を見た。すぐ側に駆けてきた騎士が前方を指し示す。遥か遠くに雪を戴く山々がそびえ、裾野には黒々とした線があった。近づくにつれ膨れ上がる線は木々が連なる林となり、更にはどこまでも続く広大な森へと姿を変える。
(広すぎる! 魔女に会いたいと思っても雲をつかむような話じゃないか)
馬車が森の前で止まり、御者を務めていた騎士が扉を開けてくれた。草の上に足を下ろすと、目の前に森が広がる。
騎士たちが馬を休ませている間、一足先に若い騎士とペテルと共に森に入った。森の中は、思ったよりもずっと明るい。
木々の間には十分に陽が入り、地に穏やかな光が届いている。ゆるやかに風が吹き、背の低い木の合間を小動物が駆けていく。
「……きれいな森」
「木々が過密にならないよう、エドマンド様が木こりたちに伐採を命じておられます。先々代の御領主の頃は戦も多く、森も鬱蒼としていたそうですが」
「うん、もっと恐ろしい所かと思っていたよ」
「奥に行けば人の手は届きませんが、城から近いこの辺りならご安心かと思います」
前方の木々の間にきらきらしたものが見えて、近づいていくと小さな泉があった。澄んだ水はまるで鏡面のように輝いている。手を触れようとすると、若い騎士にやんわりと止められた。
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