生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

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33話 一人電撃戦①

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 手を離すと、発煙筒のようなところから、煙がもくもくと上がっていく。
 すると如何だ。
 僕は、木の影に隠れて、敵の様子を見てみることにした。

「な、なんなあれは!?」
「煙、火事か!」
「おいヤベェぞ。どうするどうする!」
「どうするって。俺に聞くなよ!」

 うわぁ、これぐらいでこうなるんだ。
 経験不足。完全にパニックだった。

 盗賊たちは気づいていないが、これぐらいなら、誰だってすぐにわかる。
 その根拠は三つ。

 一つ、火の手がない。
 二つ、臭いがない。
 三つ、焦げ炭がない。

 全てがない。無い無い尽くしだった。
 単純なことにも気づかずに、慌てふためく姿。木の影から隠れて見ていても、流石に笑ってしまう。

「って、僕も最初は引っかかったっけ。さてと、ふんっ!」

 煙の中。僕は、すたすたと歩きながら、音も気配も無く、同化する。
 すると盗賊たちは慌てふためく中、僕は背中にナイフを突き立てた。

 シュパッ!ーー
 バタン!ーー

 うつ伏せで倒れる。
 殴ったような音がして、周りにいた仲間が見に来るが、それを皮切りに、僕は寄ってきた盗賊たちを、まるで餌に群がる魚のような気持ちで、次々に切り裂いた。

「よしっ。何人かは死んじゃったかもしれないけど、いいよね?」

 僕はナイフを突き立てて、一応峰打ちにはした。
 しかし狙いも狙いで、うなじを狙ったりもした。
 勘づかれる前に、叩く。そのためには、時としてこういった残酷かつ残虐な行為も、あるのだ。

「煙が消える前に、死体は隠して……後は、上にどうやって上がるか。うーん」

 僕は建物の上にいる盗賊の男が邪魔だった。
 思いついたのは、ナイフにワイヤーを引っ掛ける。それから、弾みをつけて壁を登る。

「うーん。困ったね。あの煙、後二分ぐらいしか出ないんだよね」

 僕が持っていたあの発煙筒みたいな筒は、緊急時の奇襲と離脱を目的としたもの。
 だから範囲は狭いし、持続時間もない。
 でも軽い。そんな使い勝手の難しい代物だった。

「って、その前に上の敵だけど、下は撹乱したけど、建物内部にはまだ三人いるんでしょ? ってことは、うーん……やっぱり、上の人が邪魔だね」

 僕は壁を登ると、そこには警戒を続ける男の人の姿。
 まだ煙には気づいていないみたいだ。計算して、反対側から出したからね。

(こっちに気づいていないなら、好都合だよ)

 それを好機と見た僕。
 はっきりとうなじまで見せる背中。そこに忍び寄るように、足音に加えて気配も完全にシャットアウト。
 そんな状態で気づかれるわけがないのだよ。舐めてもらっちゃ困る。

「ぐはぁっ!」

 バタッーー

 男の人が倒れる前に、腕を掴んで音を消す。
 それから何をやるのか。着てきた服を剥ぎ取り、僕が代わりに着る。だけどローブぐらいしか着ずに、残りは放置。後は武器の類を隠蔽しておくが、あまりいいものじゃない。

「これでよし。ちょっと大きいけど、降りてみようかな」

 そう、これがやりたかったこと。
 今の僕は、背丈は違うけど、男の姿を完全にとっていた。普通に言おう、これには誰も気づかない。
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