生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

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32話 探索は得意じゃないけど

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 僕は森の中に潜った。
 まるで森の中を泳ぐ魚みたいに、僕は、その場に溶け込んだ。

「うわぁ、気持ちいい!」

 やっぱり森の中を走るのはいい。
 故郷の忌々しい村も、師匠たちと暮らした土地も、自然豊かなところだった。

 それが如何しても肌に馴染んで、僕の心は胸躍る。
 それこそ、跳ね上がるみたいだ。

「やっぱり僕、森って好きかも。でも、今は違うかな。いけないからね」

 僕は厳しい目を向けた。
 さっきから森がざわついている。

 僕はあまり、探索が得意じゃない。
 なぜなら魔力の扱いが下手くそだからだ。こればかりは、流石のリュウラン師匠も、難しい顔をしていた。

 それこそ才能がないわけじゃない。
 僕は師匠から、とお墨付きをもらった。しかしその肝心の魔力。こっちも量や集中力は問題ないのだが、している。

 マジで如何にもならない。
 そんなこと言われたら、悲しくなるけど、リュウラン師匠曰く、と励まされた。だからこそ、僕は頑張れたんだ。そのおかげで、

「よし、このあたりから、一気に探知しよう!」

 限りなく、意識を集中する。
 無数に漂う魔力の破片。それを掴むみたいに、僕は意識を集中した。

 全身をみなぎる魔力。
 それらとは別の意識体。いわゆる、気配ってやつだ。

 僕は気配の方を飛ばして、周囲の気配を察知する。
 実は、魔力を探るには魔力が、気配を探るには気配が必要。

 それこそ完全に後者派。僕は、気配を探る方が得意なんだ。
 だって、魔力って難しいんでもん。
 慣れない上に、苦手。

 そんな絶望的な状態な中でも、生き残れる。
 その術はあった。それがあの血の滲むような努力と、死に物狂いの、迸るほどの修練だった。

「よし、だいたい見えたよ。この近く、八百メートル先に、人の気配が四つ。その奥に建物。中に、三人。下に、二人で、上に一人。あ、もう一人上にいるみたいだね。結構厳重そうだけど、女の子は……薄い気配が一つ、建物二階だね」

 僕の気配はそれこそ魔力を貫通する。
 だからどんなに消しても、消しても、絶対に見破る。

 それぐらいできなきゃ、師匠たちを追えない。
 だから僕はこれを頑張ったんだ。

 そしてこれがその成果。ドヤァ!
 ついでに建物も古くて、老朽化の激しい小屋みたいだ。
 天井には光が入っている気がする。
 穴あきとなると、侵入は容易。

「後は女の子を傷つけないで済ませる方法だけど、仕方ない。正面突破しつつ、撹乱しよっかな」

 完全に、プランは練れていた。
 これを分割思考の中で細胞内に保留。このために魔力を使って、後は覚えた通りに、体を動かすだけだ。

「よしっ。ちゃっちゃと、やっちゃおう!」

 僕は、ナイフを三本。
 ベルトから取り出して、ワイヤーを張って、その先に発煙筒みたいなものを取り付けた。
 後はこれを適当な木々の合間にポイントして、僕は少し短い距離にして、千切れないようにしながら、手を離したんだ。
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