生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

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31話 助けたのに、なんだか冷たい目をしている

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 僕は盗賊を全員片付けた。
 とりあえず、これで大丈夫なはずだ。多分。

「うーん、周りに敵はいないんだ」

 周囲、それこそ半径十キロ圏内は、すでにテリトリー。
 もう少しテリトリーを狭くしてもいい。
 そしたら、かなりはっきりするはずだが、他に生体反応。特に、敵意を示しているものはなかった。

(でも、師匠たちみたいにもっと上手くならないと。せめて半径百キロはできないとね)

 僕は固く誓った。目標は、どこまでも高く。けれど、

「リーファさん、その人は……」
「はい、一応手当は施しましたけど。生存の見込みは、かなり低いですね。ご愁傷様です」
「そっか。如何する? こいつら、もっとボコボコにする?」

 僕は死体蹴りを提案した。
 だけどリーファさんは首を縦にはしない。

 僕も死体蹴りを、わざわざ望んでする趣味はない。これは、ただの腹いせに近い。

 人の命を人が奪うことの愚かさ。
 確かに同種同士の争いは、時としてある。人間はそれを知能と理性でコントロールして、無自覚のうちに制約をかけて、臨もうとしない。

 だけど時として。それこそ、極めて稀なの才能を誰しもが持っていると、推測する。

「ふぅ。あの、大丈夫でしたか? 怪我とかしてませんか?」
「大丈夫だよ。ありがとう、通りすがりの冒険者諸君」

 僕はスーツ姿の男の人に声をかけた。
 怪我をしていたけれど、自分よりも護衛の冒険者の方を優先する、紳士。

 今は腕に添え木と、包帯で簡易的な治療を施されていた。
 その面構えは大人びていて、かなりダンディ。僕は尊敬した。

「すみません、助けられなくて」
「いいや、君たちはよくやってくれたよ。だけどまだ終わっていない。君たち、悪いけど早急に、娘を取り返してくれないか」
「娘? 連れ去られたんですか!」
「ああ、そうなんだ。すまないね、こんな時まで冷静で」

 確かにさっきからずっと冷静。
 騒ぐこともなく、おとなしいまま。
 さっき浴びた、冷ややかな目に似ている。

 だけど、

「私は昔から、こんな蒼白で育てられてきたんだ。だから今頃娘はと思うと、顔は変わらなくても、心では心配しているんだよ」
「そうですか。わかりました。ちなみに娘さんは、どっちの方向に?」
「わからない。煙玉を上げられてしまってね」

 煙玉。かなり、原始的な手段だが、効果は絶大。
 姿を一瞬だけでいいから、消すにはうってつけの方法で、暗殺や逃走に適している。僕も習ったよ。

 忍者上りの盗賊。そうとでも捉えるべきか。

 僕はふと考え込み、気配を飛ばした。
 当然魔力は使わず、もう少し範囲を狭める。すると、

「小さい気配が幾つかある。その中で一つだけ、大きめの気配。これかな」
「わかるんですか?」

 リーファさんが尋ねた。
 そリャそうだよ。僕も練習してたんだ。これぐらいできなくて、冒険者なんてやってられない。

「敵は森の中にいるみたいだから、僕が追跡するね。リーファさんは、ここで見張ってて」
「わかりました」
「何かあったら、すぐに合図して。飛んでくるから」

 僕はそう言い残すと、躊躇いもなく森に飛び込んだ。
 こういった事態の収拾は早めに対処する。僕はそう決めているので、迷いはなかった。
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