32 / 86
31話 助けたのに、なんだか冷たい目をしている
しおりを挟む
僕は盗賊を全員片付けた。
とりあえず、これで大丈夫なはずだ。多分。
「うーん、周りに敵はいないんだ」
周囲、それこそ半径十キロ圏内は、すでにテリトリー。
もう少しテリトリーを狭くしてもいい。
そしたら、かなりはっきりするはずだが、他に生体反応。特に、敵意を示しているものはなかった。
(でも、師匠たちみたいにもっと上手くならないと。せめて半径百キロはできないとね)
僕は固く誓った。目標は、どこまでも高く。けれど、
「リーファさん、その人は……」
「はい、一応手当は施しましたけど。生存の見込みは、かなり低いですね。ご愁傷様です」
「そっか。如何する? こいつら、もっとボコボコにする?」
僕は死体蹴りを提案した。
だけどリーファさんは首を縦にはしない。
僕も死体蹴りを、わざわざ望んでする趣味はない。これは、ただの腹いせに近い。
人の命を人が奪うことの愚かさ。
確かに同種同士の争いは、時としてある。人間はそれを知能と理性でコントロールして、無自覚のうちに制約をかけて、臨もうとしない。
だけど時として人間は、他のどの生物よりも悍ましくて凶悪な悪意と本能を秘めている。それこそ、極めて稀な天性の同種殺しの才能を誰しもが持っていると、推測する。
「ふぅ。あの、大丈夫でしたか? 怪我とかしてませんか?」
「大丈夫だよ。ありがとう、通りすがりの冒険者諸君」
僕はスーツ姿の男の人に声をかけた。
怪我をしていたけれど、自分よりも護衛の冒険者の方を優先する、紳士。
今は腕に添え木と、包帯で簡易的な治療を施されていた。
その面構えは大人びていて、かなりダンディ。僕は尊敬した。
「すみません、助けられなくて」
「いいや、君たちはよくやってくれたよ。だけどまだ終わっていない。君たち、悪いけど早急に、娘を取り返してくれないか」
「娘? 連れ去られたんですか!」
「ああ、そうなんだ。すまないね、こんな時まで冷静で」
確かにさっきからずっと冷静。
騒ぐこともなく、おとなしいまま。
さっき浴びた、冷ややかな目に似ている。
だけど、
「私は昔から、こんな蒼白で育てられてきたんだ。だから今頃娘はと思うと、顔は変わらなくても、心では心配しているんだよ」
「そうですか。わかりました。ちなみに娘さんは、どっちの方向に?」
「わからない。煙玉を上げられてしまってね」
煙玉。かなり、原始的な手段だが、効果は絶大。
姿を一瞬だけでいいから、消すにはうってつけの方法で、暗殺や逃走に適している。僕も習ったよ。
忍者上りの盗賊。そうとでも捉えるべきか。
僕はふと考え込み、気配を飛ばした。
当然魔力は使わず、もう少し範囲を狭める。すると、
「小さい気配が幾つかある。その中で一つだけ、大きめの気配。これかな」
「わかるんですか?」
リーファさんが尋ねた。
そリャそうだよ。僕も練習してたんだ。これぐらいできなくて、冒険者なんてやってられない。
「敵は森の中にいるみたいだから、僕が追跡するね。リーファさんは、ここで見張ってて」
「わかりました」
「何かあったら、すぐに合図して。飛んでくるから」
僕はそう言い残すと、躊躇いもなく森に飛び込んだ。
こういった事態の収拾は早めに対処する。僕はそう決めているので、迷いはなかった。
とりあえず、これで大丈夫なはずだ。多分。
「うーん、周りに敵はいないんだ」
周囲、それこそ半径十キロ圏内は、すでにテリトリー。
もう少しテリトリーを狭くしてもいい。
そしたら、かなりはっきりするはずだが、他に生体反応。特に、敵意を示しているものはなかった。
(でも、師匠たちみたいにもっと上手くならないと。せめて半径百キロはできないとね)
僕は固く誓った。目標は、どこまでも高く。けれど、
「リーファさん、その人は……」
「はい、一応手当は施しましたけど。生存の見込みは、かなり低いですね。ご愁傷様です」
「そっか。如何する? こいつら、もっとボコボコにする?」
僕は死体蹴りを提案した。
だけどリーファさんは首を縦にはしない。
僕も死体蹴りを、わざわざ望んでする趣味はない。これは、ただの腹いせに近い。
人の命を人が奪うことの愚かさ。
確かに同種同士の争いは、時としてある。人間はそれを知能と理性でコントロールして、無自覚のうちに制約をかけて、臨もうとしない。
だけど時として人間は、他のどの生物よりも悍ましくて凶悪な悪意と本能を秘めている。それこそ、極めて稀な天性の同種殺しの才能を誰しもが持っていると、推測する。
「ふぅ。あの、大丈夫でしたか? 怪我とかしてませんか?」
「大丈夫だよ。ありがとう、通りすがりの冒険者諸君」
僕はスーツ姿の男の人に声をかけた。
怪我をしていたけれど、自分よりも護衛の冒険者の方を優先する、紳士。
今は腕に添え木と、包帯で簡易的な治療を施されていた。
その面構えは大人びていて、かなりダンディ。僕は尊敬した。
「すみません、助けられなくて」
「いいや、君たちはよくやってくれたよ。だけどまだ終わっていない。君たち、悪いけど早急に、娘を取り返してくれないか」
「娘? 連れ去られたんですか!」
「ああ、そうなんだ。すまないね、こんな時まで冷静で」
確かにさっきからずっと冷静。
騒ぐこともなく、おとなしいまま。
さっき浴びた、冷ややかな目に似ている。
だけど、
「私は昔から、こんな蒼白で育てられてきたんだ。だから今頃娘はと思うと、顔は変わらなくても、心では心配しているんだよ」
「そうですか。わかりました。ちなみに娘さんは、どっちの方向に?」
「わからない。煙玉を上げられてしまってね」
煙玉。かなり、原始的な手段だが、効果は絶大。
姿を一瞬だけでいいから、消すにはうってつけの方法で、暗殺や逃走に適している。僕も習ったよ。
忍者上りの盗賊。そうとでも捉えるべきか。
僕はふと考え込み、気配を飛ばした。
当然魔力は使わず、もう少し範囲を狭める。すると、
「小さい気配が幾つかある。その中で一つだけ、大きめの気配。これかな」
「わかるんですか?」
リーファさんが尋ねた。
そリャそうだよ。僕も練習してたんだ。これぐらいできなくて、冒険者なんてやってられない。
「敵は森の中にいるみたいだから、僕が追跡するね。リーファさんは、ここで見張ってて」
「わかりました」
「何かあったら、すぐに合図して。飛んでくるから」
僕はそう言い残すと、躊躇いもなく森に飛び込んだ。
こういった事態の収拾は早めに対処する。僕はそう決めているので、迷いはなかった。
11
あなたにおすすめの小説
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる