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56話 黒い影の狂気①
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ヴァンプコヨーテは全部狩った。
赤く血濡れた顔を、持っていた水筒の水で洗い流し、ヴァンプコヨーテの死骸は、燃やして黒い灰になった。
こうでもしないと大変なことになる。
ヴァンプコヨーテは、体内に細菌を持っているから、感染したら大変だ。最悪死ぬ。
抗体を持っていない人は、普通に死ぬ。
今回はリーファさんが治療をして、体内の細菌を全部除去してくれたから、よかった。
僕はそんな感じで、体を清めてから、馬車に戻ることにした。
「ふはぁー。早く寝たいなー」
結構疲れた。
流石にあの数はしんどい。僕だって人間だから、昼夜問わず寝ずに過ごすのは、流石に三日が限度だよ。
「さてと、ご飯も食べて早く寝た……ん?」
僕は馬車に戻ってきた。
いや、戻ってきたはずだった。だけどそこにあったのは、さっきまでの楽しげなムードではない。
何故ならリーファさんが手から血を流し、チェリムさんはお腹を抑えている。
それから馬車は大破まではしていないが、屋根が完全に破壊されていた。
まるで内側から突き上げられたみたいに、上方に上がっている。変なこともあるなと呑気に考えるも、実際はそうではなかった。
僕たちが助けた少女。
彼女の目は赤くなり、頭からは外側に向けて二本の角が生えている。
その姿はまるで鬼のよう。だけどホズキ師匠とは少し違う。
もっと黒くて悍ましい、それこそ何かが蠢いていた。黒い何か。それがうねりを上げながら、リーファさんに迫る。
「くっ。《ウィンドシールド》!」
リーファさんは風で縦を張る。
しかしその縦を貫通……いや、意図も容易くすり抜けてしまい、リーファさんは弾かれる。
「きゃあ!」
「殺サナイト……殺サナイト、殺サレル……ダカラ、皆ンナイナクナッチャエ!」
カタコトの喋り口調。
僕は瞬時に察した。リーファさんは、黒い何かに胸を貫かれそうになるが、僕が割り込んで、それを防いだ。
「天月さん!」
「リーファさん、これどういうこと? なんであの子、あんなに黒く染まってるの?」
「黒く? 確かに、悍ましい気配は感じますが、一体何が起きているのか。私には影のように見えますので」
「影? もしかして、この黒い感じはその影なのかな。これは厄介かも」
影は掴めない。
何故なら影とは実像がないから。例え魔力で練り上げたものだとしても、それには実態はない。つまりは、すり抜けることはない。万が一それがあるとすれば、それはすなわち本物の影である。
「まさか、こんなところで厄介な魔法に出くわしちゃうなんてね」
「厄介な魔法ではあります。ですが!」
「わかってるよ。あの子は、狂気に取り憑かれている。大丈夫、僕に任せて」
「天月さん……」
不安そうな顔をしないでよ。
僕は、リーファさんの手をそっと触れ、頭を軽く撫でると、ナイフではなく素手になり、少女に向き合った。
赤く血濡れた顔を、持っていた水筒の水で洗い流し、ヴァンプコヨーテの死骸は、燃やして黒い灰になった。
こうでもしないと大変なことになる。
ヴァンプコヨーテは、体内に細菌を持っているから、感染したら大変だ。最悪死ぬ。
抗体を持っていない人は、普通に死ぬ。
今回はリーファさんが治療をして、体内の細菌を全部除去してくれたから、よかった。
僕はそんな感じで、体を清めてから、馬車に戻ることにした。
「ふはぁー。早く寝たいなー」
結構疲れた。
流石にあの数はしんどい。僕だって人間だから、昼夜問わず寝ずに過ごすのは、流石に三日が限度だよ。
「さてと、ご飯も食べて早く寝た……ん?」
僕は馬車に戻ってきた。
いや、戻ってきたはずだった。だけどそこにあったのは、さっきまでの楽しげなムードではない。
何故ならリーファさんが手から血を流し、チェリムさんはお腹を抑えている。
それから馬車は大破まではしていないが、屋根が完全に破壊されていた。
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僕たちが助けた少女。
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その姿はまるで鬼のよう。だけどホズキ師匠とは少し違う。
もっと黒くて悍ましい、それこそ何かが蠢いていた。黒い何か。それがうねりを上げながら、リーファさんに迫る。
「くっ。《ウィンドシールド》!」
リーファさんは風で縦を張る。
しかしその縦を貫通……いや、意図も容易くすり抜けてしまい、リーファさんは弾かれる。
「きゃあ!」
「殺サナイト……殺サナイト、殺サレル……ダカラ、皆ンナイナクナッチャエ!」
カタコトの喋り口調。
僕は瞬時に察した。リーファさんは、黒い何かに胸を貫かれそうになるが、僕が割り込んで、それを防いだ。
「天月さん!」
「リーファさん、これどういうこと? なんであの子、あんなに黒く染まってるの?」
「黒く? 確かに、悍ましい気配は感じますが、一体何が起きているのか。私には影のように見えますので」
「影? もしかして、この黒い感じはその影なのかな。これは厄介かも」
影は掴めない。
何故なら影とは実像がないから。例え魔力で練り上げたものだとしても、それには実態はない。つまりは、すり抜けることはない。万が一それがあるとすれば、それはすなわち本物の影である。
「まさか、こんなところで厄介な魔法に出くわしちゃうなんてね」
「厄介な魔法ではあります。ですが!」
「わかってるよ。あの子は、狂気に取り憑かれている。大丈夫、僕に任せて」
「天月さん……」
不安そうな顔をしないでよ。
僕は、リーファさんの手をそっと触れ、頭を軽く撫でると、ナイフではなく素手になり、少女に向き合った。
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