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57話 黒い影の狂気②
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僕は少女に向き合った。
今回は素手だ。ナイフは危ないから使わない。
「どうしたのかな? もしかして、何か嫌なことでもあったの?」
「殺ス……傷ツケル奴、皆ンナ殺ス!」
うわぁ、これはかなりヤバいかも。
心のケアが必要だ。
それにしても、どうしてこれだけの狂気と、頭から角が生えてるんだろ。
いや、待てよ。よく思い出してみろ、僕。
確かホズキ師匠に言われたはずだ。
鬼族の中にはいくつかパターンがあること。そして、その中には……
「天月、面白い話してあげる」
「面白い話ですか?」
僕は心配になった。
しかし、話の内容は難しい種族に関する話。特に熱がこもっていたのは、鬼族の話だった。
「いい、天月。鬼は怖いものじゃない。確かに童話の中では、鬼って虎や竜みたいに、恐ろしいものって書かれるけど、それはあくまでも一部の種族。普通は怒らせなければ、優しい。それに、下手な風習を避ければの話」
「それはそれで難しそうですけど」
「それもそう。だから弱点も教えておく」
「いいんですか! それじゃあ僕、ホズキ師匠に勝っちゃいますよ!」
「それはそれでいい。でも、私には弱点の角はない」
確かにホズキ師匠の角は少し変だ。
どうやら、自分で弱点の角を破壊して、弱点部位を取り除いたみたいだ。
「痛くなかったんですか?」
「大丈夫。もう、痛みは超越してるから感じない」
それを聞いて、納得した。
ホズキ師匠と練習すると、いつも感情の無い拳が振り下ろされる。
よく教えられてきた。
自分を忘れるな、相手を思う気持ちは忘れるな。相手を思い、自らを正して無心で拳を打ち込め。そうでもしなければ、心は簡単に滅びると。
「そうだ、面白い話の続きだったな」
「そうでした」
「鬼の中には特殊な鬼がいる。例えばそれは、影鬼族などだ。影を纏うことで、鬼としての本質を開花する。それが影鬼族」
影鬼族。
この時の僕は、何にも考えていなかった。そんなのがいる。ただそれだけの話だと、たかを括っていた。
しかし今僕が対峙しているものは、まさにそうだ。
あの二本の影の角。
それから全身から出る、禍々しい黒い影。
影を操るから、影鬼族なんじゃない。
影があるから、影鬼族。それは心のストレスだった。
僕はそのことを思い出した。
それを思えば、きっとストレスが心のどこかにある。
それを取っ払えばいい。
しかし話は簡単ではない。
近づくのが難しい。それはこの、実態を持った影にある。
どうにかして、この影を越える必要がある。
だけどナイフは使えない。となると、やることはたった一つだけ。強行突破で、ぶち破るだけの、それこそ、
「ファイ師匠スタイル、やってみよっかな」
僕は本気を出さないようにした。
何故かって? だって、殺しちゃうかもでしょ?
今回は素手だ。ナイフは危ないから使わない。
「どうしたのかな? もしかして、何か嫌なことでもあったの?」
「殺ス……傷ツケル奴、皆ンナ殺ス!」
うわぁ、これはかなりヤバいかも。
心のケアが必要だ。
それにしても、どうしてこれだけの狂気と、頭から角が生えてるんだろ。
いや、待てよ。よく思い出してみろ、僕。
確かホズキ師匠に言われたはずだ。
鬼族の中にはいくつかパターンがあること。そして、その中には……
「天月、面白い話してあげる」
「面白い話ですか?」
僕は心配になった。
しかし、話の内容は難しい種族に関する話。特に熱がこもっていたのは、鬼族の話だった。
「いい、天月。鬼は怖いものじゃない。確かに童話の中では、鬼って虎や竜みたいに、恐ろしいものって書かれるけど、それはあくまでも一部の種族。普通は怒らせなければ、優しい。それに、下手な風習を避ければの話」
「それはそれで難しそうですけど」
「それもそう。だから弱点も教えておく」
「いいんですか! それじゃあ僕、ホズキ師匠に勝っちゃいますよ!」
「それはそれでいい。でも、私には弱点の角はない」
確かにホズキ師匠の角は少し変だ。
どうやら、自分で弱点の角を破壊して、弱点部位を取り除いたみたいだ。
「痛くなかったんですか?」
「大丈夫。もう、痛みは超越してるから感じない」
それを聞いて、納得した。
ホズキ師匠と練習すると、いつも感情の無い拳が振り下ろされる。
よく教えられてきた。
自分を忘れるな、相手を思う気持ちは忘れるな。相手を思い、自らを正して無心で拳を打ち込め。そうでもしなければ、心は簡単に滅びると。
「そうだ、面白い話の続きだったな」
「そうでした」
「鬼の中には特殊な鬼がいる。例えばそれは、影鬼族などだ。影を纏うことで、鬼としての本質を開花する。それが影鬼族」
影鬼族。
この時の僕は、何にも考えていなかった。そんなのがいる。ただそれだけの話だと、たかを括っていた。
しかし今僕が対峙しているものは、まさにそうだ。
あの二本の影の角。
それから全身から出る、禍々しい黒い影。
影を操るから、影鬼族なんじゃない。
影があるから、影鬼族。それは心のストレスだった。
僕はそのことを思い出した。
それを思えば、きっとストレスが心のどこかにある。
それを取っ払えばいい。
しかし話は簡単ではない。
近づくのが難しい。それはこの、実態を持った影にある。
どうにかして、この影を越える必要がある。
だけどナイフは使えない。となると、やることはたった一つだけ。強行突破で、ぶち破るだけの、それこそ、
「ファイ師匠スタイル、やってみよっかな」
僕は本気を出さないようにした。
何故かって? だって、殺しちゃうかもでしょ?
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