生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

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67話 拝殿

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 僕はリーファさんたちから離れて、ソトオニ村の奥にある、離れた拝殿に向かっていた。
 拝殿は小さいけど、何となく神聖そうな場所だとすぐにわかった。

 他とは明らかに違う白い壁。
 しかも屋根は、金色のニンニクのような形をしている。しかも壁一面には、赤や緑で装飾がされていて、基調な絵が敷き詰められていた。

 本当に何かを神聖視しているのがわかる。
 残念なことに、僕は何も信仰していない。
 そもそも一度生贄にされた身なので、そこのところは甘い性格にひねくれてしまった。

 神様がいないとは言わないけど、ぶっちゃけ対等な扱いにはならない。
 僕は愚かでも傲慢でもないようにはしたいけど、結局人間なんだから、仕方ないんだ。

 でもいないよりも、いたほうが面白い。
 そう言った信仰意識があるのは、確かで僕だって神頼みはする。だから否定はしなかった。
 否定をする気なんてさらなさらなかった。

 だけどここまで仰々しいと、心底喉が息詰まりそうになる。
 けれどそんなことは言ってられず、僕は拝殿の中に入った。

「ささっ。こちらですぞ」
「失礼します! うわぁ、なんですかこの部屋。外から見た時よりも小さいですね」
「あはは。小さいのはわざとなんですよ。狭い造りの方が、一つになった気がするのです」

 一つになった気がする。
 あまり分かり合える気がしないな。と、僕は黙っていたが、ふと思ってしまった。詮索はやめておこう。身のためにならない。

「それでこの卵は何処に?」
「ここですぞ。この奉納棚に置いてくだされ」
「わかりました。よいしょっと」

 僕は腰を落として卵を置いた。
 金色の奉納棚にリュウガの卵を置いた。これでよし、依頼完了。

 満足感を抱いた僕だったが、不意に顔をあげると思いも寄らないものがあった。
 そこには不思議なお面。
 赤い般若の面だった。

「あの、これって?」
「不思議ですかな? この辺りの人間は、これが何かわからないもので」
「般若ですよね?」
「おお、知っておるのですか!」
「は、はい」

 まさかとは思うが、この村は般若を信仰しているのかな。
 僕はゾッとした。全身から血の気が引いていくのがわかる。

「ソトオニとかウチオニとか、オオオニとか、まさかとは思っていたけど、もしかして鬼を信仰しているんですか!」
「そうですね。今から百年以上も前のことになりますが、その時以来この村、そして山の中にあるウチオニ村では、オオオニ山に住む鬼のことを信仰しているのですよ」
「信仰……何があったとか、聞いてもいいですか?」

 僕は勇気を振り絞って試しに聞いてみた。
 詮索はしてはいけない。とか思っていた時期が、こんな僕にもありました。すると、村長さんは重たい口でもなく、僕に聞かせてくれた。

「そうですな。この村で起こったこと。ざっくりではありますが、お話しいたします。この村は、鬼によって畏怖される。だからこそ、この村は呪われているのですよ」
「呪い……」
「はい」

 重たい空気が流れる。
 僕は喉が詰まりそうになり、今一度聞く体勢になった。
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