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第九章 邪神降臨
第287話 母と娘
しおりを挟む「ガハッ……そんなぁ」
セレーナの口からゴボッと大きな血溜まりが落ちた。胸には深々と刺さる短剣、膝を折り前かがみに倒れる。
「アレレレ?もしかしてまだ死んでい。う~ん直前で急所を外したかな、でも即死じゃないだけだけどね!回復魔法をかけているみたいだけど、それには呪いがかけてあるし、もっとすごい効果があるんだよ!モニカのことを思い出してご覧よ」
あ!これはまさか、力が逃げていく……いえこれはそれだけではないわ………これは魂ごと!?
「オマエがゾールだったのかーー!どけぇーー!」
セレーナさんが刺された姿を見た俺は怒り突っ込んでいった。「一文字 一閃」でゾールを攻撃すると、軽いステップで回避、セレーナと距離をおいた。当たらなかったの残念だが今はセレーナさんの治療をするのが第一優先だ。傷口を見ると短剣が抜かれており血が流れていた。『治癒の朱墨(しゅずみ)』で即座に治療を行い傷口は一瞬で癒えた。
「セレーナ様大丈夫ですか?どこか他に痛いところは……………セレーナ様?…………え!?」
息をしていない?
抱きかかえているセレーナ様から生きている気配がしない。まるで壊れた人形のようにぐったりとしていた。
「セレーナ様!セレーナ様!起きてください。怪我はもう……」
「無駄だよ!蒼字(そうじ)、セレーナはもう死んだんだから………へぇ~やっぱりタクトもいい顔をする。ゾクゾクして来たよ」
俺の頭の中は熱く煮えたぎっているようだ。この野郎がセレーナさんを………ぶっ殺してやる!
怒りから強烈な殺気を放つがゾールはそれをそよ風のように受け止める。ゾールにとってはこの程度のこと取るに足らないレベルであり、むしろ嬉しく楽しいものと感じていた。
俺は怒りを糧に魔力を解放、我龍転生(がりゅうてんせい)し龍を象った黒い鎧を着た騎士となる。解放した魔力を筆に集めて剣を具現化、ゾールに向かって斬りかかる。
…………………▽
◆セレーナの視点
ここはどこ?
真っ白で何もない空間、周りを見てもどこまでもどこまでも続いていそう。どこに行っていいか分からないけど、立ち止まっているのはイヤかな。私は目の前を真っ直ぐに進んだ。
どれだけ歩いたのか、五分?十分?一時間?……一日、疲れないからかしら時間の感覚が分からない。私、どうしてここにいるのかしら、思い出せない。
頭がボヤけて考えが纏まらないや、でもそれで良いのかも、ちょっと疲れたかな。そろそろ止まろうかな。
私はゆっくりと歩みを止める。
この場所と同じ、私の意識が白く薄れていく。
そこに小さくてかすれているけど、決して聞き逃したくない声が言葉が聞こえた。
「おかあ…さん…?」
「え!?………………」
私は勢い良く振り返る。
そして真っ白な世界が一気にひらけた。
「ニーナ?……ニーナ!ニーナ~」
私は走った。そこには死んだはずの娘が居たから、夢の中で何度も見た娘はいつも触れると消えてなくなる。でも今は違う。私はしっかりと娘を抱き締めると、私をしっかりと受け止め抱き締めてくれた。私はしばらく涙が止まらなかった。そんな私をニーナは優しく撫でてくれる。どっちが母親なのかしらね。心の中で昔を思い出しクスッと笑いを漏らすと少し離れ娘のニーナの顔を見る。
「ニーナ………わたし……」
何を言っていいのか分からない。
どう謝れば良いの?
どうすれば許してくれるの?
「お母さん落ち着いて、私は怒ってないよ。母さんのことだからきっと私が死んだことで自分を責めているんだよね。お母さんらしいよ。でも私がそんなこと求めてないのも知ってるんでしょ」
「うん……あなたは頭が良くて優しい子、私なんかよりずっとずっと長く生きて欲しかったよぉ……うっうっ」
「お母さんは泣き顔は似合わないよ。いつもみたいにニッコリ笑ってよ。そうじゃないと私も笑えないじゃない。……ねぇ!」
私は涙を拭い。ニーナを見ると幸せな気分になり自然と笑えた。
「本当にね。どっちがお母さんなんだか、あなたはしっかりし過ぎなのよ。もう少し子供であって欲しかった気もする」
「何言ってるのよ!お母さん、私はいつまで経ってもお母さんの娘よ」
「うんそうだね!ニーナは私の大切な大切な娘なんだから」
それから私はニーナと色々なことを話す。母と娘……このひとときが永遠に続くことを願いながら、絶望の時を過ごす。
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