死に戻りぽっちゃり双子、悪役お姉様を味方につける。

清澄 セイ

文字の大きさ
16 / 75
「第二章 この状況を、有効活用することにしました」

5

しおりを挟む
「深い意味はないわ。気に障ったのなら」
「違うよ、そうじゃない。僕達はお姉様が本当はどう思っているのか、それが知りたいんだ!」
「私は……」
 珍しくあたふたと取り乱しているリリアンナの右と左に、それぞれルシフォードとケイティベルが寄り添う。まん丸な空色の瞳は、一点の曇りもなく輝いていた。
「お願いお姉様、誤魔化さないで本当のことを言って!」
「嫌いなら、嫌いって!」
「そ、それは違うわ!」
 可愛らしい声が両サイドから聞こえてきて、リリアンナはくらくらと眩暈がしそうだった。今日はどうしてこんなに積極的なのだろうと戸惑いながらも、まっすぐにぶつかってもらえることが嬉しくてたまらない。
 ブラックドレスの裾をきゅっと握り締め、幾分自信なさげな声色でぼそぼそと呟いた。
「ケイティベルにはもっと、元気で満開の花が似合うと思ったから……」
「似合わないって、思っていないの?」
 ふるふると首を左右に振る姉を見て、ケイティベルはほうっと安堵の溜息を吐く。それを勘違いしたリリアンナは、呆れられたのではと顔から血の気が引いた。
「僕、この萎れたお花が可哀想だと思ったんだ。ベルと一緒なら、この子も喜ぶから」
「そうだったのね……」
 なんて優しい子なのだろうと、リリアンナは無意識のうちに腰元を探る。ハンカチは見つからなかったが、代わりにぎゅうっと太腿をつねって涙を引っ込めた。
「い、痛っ!」
 力加減が出来ず、彼女は勢いあまってどしんと尻餅をつく。姉が失敗する姿なんて初めて見たと、双子は顔を見合わせた。
「もしかしてお姉様って、意外とドジなのかな」
「そうかも。あの時私の花冠を踏んだのも、きっとわざとじゃないのよ」
「意地悪って噂は、嘘なのかもしれないね」
 ふふっと笑う双子と、恥ずかしくてたまらないリリアンナ。白パンのようにふっくらした丸い手が二つ、彼女に向かって伸ばされる。
「はい、お姉様!」
「僕達が引っ張るから掴まって!」
 太陽の光を背負ったルシフォードとケイティベルは、きらきらと輝いて見える。リリアンナは瞳を逸らせず、そのままか細い両手を差し出した。
 無事和解を果たした三人は、そのまま遊び始める。と言ってもリリアンナは弟妹のはしゃぐ姿を見ているだけだったが、鉄仮面の下でとても幸せそうな表情を浮かべている。
「わぁ、お姉様とっても上手ね!」
「本当、ベルとは大違いだ」
「なんですって?ルーシーのばか!」
 ケイティベルはぷくっと頬を膨らませて、ルシフォードに詰め寄る。彼ら声を上げながら逃げ出し、いつの間にか花冠作りは鬼ごっこに変わった。
「お嬢様、お坊ちゃま。奥様がお呼びでございます」
 その時、母ベルシア付きの侍女の一人が近付いてきて、二人に向かってそう口にする。まるでリリアンナのことは見えていないかのように、視界に映そうとはしない。
「やっぱり、僕達が知ってるまんまだ」
「あれは、過去の出来事なのね」
 大方記憶通りに進むストーリーに、双子は鋭く推理する。気分は名探偵で、ありもしない眼鏡をくいっと上げる仕草をしてみせた。
「分かった、今すぐに行くよ」
 夢のような時間が終わってしまったことに、リリアンナは内心絶望する。今日で一生分の幸運を使い果たしてしまったが、一切の悔いはないと。
「お姉様も、早く!」
「……私も一緒に?」
「当たり前でしょう?ほら!」
 もちもちとした柔らかな手が、それぞれリリアンナを掴む。自分の意思とは関係なく溢れてくる涙が溢れないよう、彼女はぐっと顎を上げる。握り返す勇気はなかったけれど、ほんの少しだけ指に力を入れた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。 化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。 所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。 親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。 そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。 実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。 おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。 そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

処理中です...