死に戻りぽっちゃり双子、悪役お姉様を味方につける。

清澄 セイ

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「第二章 この状況を、有効活用することにしました」

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 屋敷に戻った三人は、母ベルシアからケイティベルの婚約話を聞かされた。彼女達はすでに知っているので、サプライズは台無しになっているが。
「誰かが秘密を漏らしたせいで、私が恥をかいたわ」
 ベルシアはティーカップのハンドルを指で摘みながら、じろりとリリアンナに視線を向ける。いまだに彼女の仕業だと思っているらしい。
「どうする?やっぱりお母様に打ち明ける?」
「止めた方が良いわよ、絶対良い方向には向かない」
「それもそっか」
 ぷっくりとした白い頬を突き合わせながら、双子は密談を交わす。誰にも気付かれていないと思っているのは、本人達だけだった。
「あらあら、貴方達二人は本当に仲が良いわね」
 ベルシアの言葉にはっとして、適当な愛想笑いを浮かべる。母のことは大好きだったが、盲目的に信じられるほど子どもではない。
 シーツぐるぐる巻きの未来回避の為にはやはり姉の力が必要だと、二人は確信していた。
「エドモンド殿下はとても素敵なお方よ。私の可愛いケイティベルの婚約者として、これ以上の男性はきっといないわ」
「ああ、うん。うーん、うん」
「あら、反応が良くないわね。気が進まないの?」
 まったくもってその通りだと、ケイティベルはうんうん頷く。外国へ嫁ぐのも、あんな美丈夫の妻になるのも、全てが嫌で仕方ない。それに、誕生日パーティー当日に自分はその人に振られたような形になってしまうのだ。非常に不本意だし、すでに嫌いになりそうだった。
「家族と離れるのが寂しいの」
「私も寂しいわ。けれど会おうと思えばいつだって会えるし、なんといってもあんな大国の王族へ嫁げるのだから、こんなに幸運なことはないのよ」
 最初にこの話を聞いた時、ケイティベルはわんわん泣いた。ルシフォードと共に何度も両親に抗議して、部屋に籠城したりもしてみたけれど、結局結果は変わらず。
 今こうして冷静に母の顔を見てみると、娘の婚約を純粋に喜んでいる気持ちに嘘はないのだろうが、なんとなく他にも理由が隠れているように感じる。
 急死に一生を得る(あるいは一度死んでいるかも)体験をした二人は、以前よりもずっと大人になっていた。死なない為には、感情だけで動かずにきちんと考えなければならないのだから。
「お姉様はどう思う?」
 ケイティベルは、向かいに座るリリアンナに話を振ることにした。彼女はあくまで冷静に、自分には関係ないと頭を振る。

 ――ケイティベルが外国へ⁉︎そんなの寂し過ぎるわ‼︎ルシフォードだって泣いてしまうだろうし、私も耐えられない‼︎‼︎

 と、心の中はこういった具合にダメージを受けていた。最初聞いた時は半信半疑だったが、改めて現実を突きつけられると非常に落ち込む。もちろんケイティベルが幸せならそれが一番なのだが、なんとなくそんな風には思えなかった。
「ケイティベルなら、必ず殿下に気に入っていただけるわ。優しくて可愛らしくて、愛さずにはいられないもの」
「お母様ったら、それは言い過ぎよ」
「あら、本当のことですもの」
 ベルシアの口元は弧を描きながら、視線はちらりとリリアンナを見ている。まるで「貴女とは大違い」とでも言いたげに。
「ねぇ、お姉様。お姉様は、どんな男性がタイプなの?」
 ケイティベルの突拍子もない質問に、さすがのリリアンナもぎょっとする。もしも姉の想い人がエドモンドなら、あんな風に婚約者を取り替えなくても最初から譲るのにと、彼女は考えた。
 実際そんなに簡単な話ではないのだけれど、いかんせんまだ子どもなので仕方ない。
「ちなみに私は、ルシフォードみたいな人が良いわ。穏やかで優しくて、わがままをなんでも聞いてくれる人!あと、頬っぺたがふにふにしているところも」
「……ベル、それは褒め言葉に聞こえないよ」
「そんなことないったら」
 じゃれ合う双子を前に「なんて尊いのかしら」と憂いの溜息を吐きながら、リリアンナは妹からの質問を真剣に考える。
 どんな男性が好みかなど、想像したこともなかった。少しでも両親に認められたいと必死に生きてきて、婚約者であるレオニルのことも当然受け入れた。それは好き嫌いの問題ではなく、それを望まれているから。家のさらなる繁栄の為、大切な弟妹の為、自身の感情など関係ない。
「私は、レオニル殿下の婚約者よ。他に言えることはないわ」
 きっと彼と結婚しても、大切にされないと分かっている。昔から自分以外に想い人いることに、なんとなく気付いていたから。それがいつからなのか、誰なのかまでは知らないが、感情のない結婚をしなければならないのは彼も同じ。恨む気持ちなどなく、むしろ同情すら感じていた。
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