死に戻りぽっちゃり双子、悪役お姉様を味方につける。

清澄 セイ

文字の大きさ
39 / 75
第四章「集う変人と犯人への手掛かり」

8

しおりを挟む
「仲がよろしいようで、私も嬉しいです。リリアンナ様もそれはそれはお幸せそうで」
 繋がれた手を見つめながら、再び彼女の目尻に皺が寄る。
「もう、からかわないで」
 どこか素直で子供っぽい受け答えをする姉を見るのは新鮮で、双子も一緒になって笑った。
「そういえば、あの夜も満月だったわね」
 ふと思い出すリリアンナに、エマーニーが頷く。
「昔から男女の双生児が誕生する夜は、満月のかかる清夜と決まっているそうですよ。まるで天からも祝福を受けているようだと」
「そうなんだ、凄いなぁ」
「ひとつも例外はないってこと?」
 自分達の出生話を聞くのはなんだか新鮮で、ルシフォードとケイティベルは思わず前のめりになる。その様子が可愛くて、リリアンナの鼻の下が無意識に伸びた。
「……ええ、そうですね。私の知る限りでは」
 たった一瞬、いつでも穏やかなエマーニーの表情が陰った気がする。些細な異変も決して見逃さないよう常に気を張っているリリアンナは、やはり根が真面目な逸材であった。
「あら、つい長話をしてしまったわ。ごめんなさい、嬉しくて」
「僕達もエマーニーさんに会えて嬉しかったです」
「また今度、お話聞かせてくださいね」
 はしゃぐ二人を見ていると、今この場で指摘する気にはなれない。たおやかに手を振る彼女を見送りながら、リリアンナだけが心を騒つかせていた。
 とてつもなく不吉な何かが、こちらを覗いている気がしてならなかった。

 そして数日後。リリアンナは、レオニルにサマンサ王子妃殿下への見舞いの許可を得てから再び王宮へと足を運んだ。あの時、助産婦エマーニーが最後の会話で一瞬浮かべた表情がどうしても胸に引っかかっており、杞憂でも構わないからもう一度話を聞いてみようと考えたのだ。
 余計な心配をさせたくないと、愛する弟妹は屋敷にてお留守番。二人が姉を案じてついていきたいと駄々をこねたので、リリアンナは道中の馬車で咽び泣いた。
 可愛い、可愛い、愛らしくてたまらない。ずっと昔からそう思っていたが、やはり懐いてくれると余計に愛着が湧いてくる。
 あんなにも可愛らしい二人を、たとえ夢であっても手にかけるような不届者は、今すぐに剣で叩き斬ってやりたいと思う。剣術の心得はないが、愛さえあればきっとなんとかなるはずだ。
「あらまぁ、リリアンナ様。こんなにすぐお会い出来るなんて」
 エマーニーはいつものように目尻に皺を寄せ、慈しみの瞳をリリアンナに向ける。サマンサは臨月の割にあっけらかんとしており、なんとかなるわと豪快に笑っていた。そんな様子を見ていると、リリアンナの方が励まされるような気がした。
 無事にサマンサへの謁見を終えた後、少し話がしたいとエマーニーに声を掛ける。突然のことであったのに、彼女は快く部屋へと入れてくれた。
「私が一人で過ごすには素敵過ぎて、少し落ち着かないのよ」
「それだけ、王子妃陛下からの信頼が厚いということでしょう」
 肩をすくめるエマーニーの正面に座り、リリアンナは淡々と口にする。内心緊張しているせいもあり、普段以上に表情筋を動かす余裕もない。が、エマーニーはまったく気にしていない様子で彼女に紅茶とお菓子を勧めた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。 化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。 所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。 親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。 そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。 実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。 おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。 そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

処理中です...