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第四章「集う変人と犯人への手掛かり」
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その後、レオニルに許可を得て早々に屋敷へ帰ることにした三人。リリアンナは、この件について婚約者に話すべきかどうかを、ここ最近ずっと悩んでいた。
冷静沈着、完璧な王子として謳われている彼に、まさかあんなにも意外な一面があったとは今でも信じがたいが、ケイティベルをとても大切に思っているレオニルならば、事情を打ち明ければきっと二人を守ってくれるはずだ。
王家の力を借りれば、自分一人で行動するよりもずっと安全なのではないか、と。両親には信じてもらいたくないだろうから言いたくないと、悲しそうにしていた弟妹を思い出すと今でも胸が締め付けられる。
味方が増えるのは心強いが、どうしても信用してもらえなかった場合を考えてしまい、彼女は二の足を踏んでいた。
「リリアンナお姉様、どうしたの?」
長い廊下を歩く道すがら、ケイティベルに声をかけられた彼女ははっと顔を上げる。
「僕が変なことを言ったから?」
案じるようなルシフォードの声を聞いて、それは違うと首を横に振る。二人を不安にさせてはならないと、リリアンナはきりりと眉を吊り上げ気合いを入れ直す。
そして穏やかに微笑みながら、両脇を歩く弟妹のふかふかとした手を優しく握った。
「あら?リリアンナ様ではないですか。それに、ルシフォード様とケイティベル様も」
不意に後ろから聞こえてきた台詞に、ほとんど同時に振り向く。かつてベルシアの出産時に立ち会った助産婦のエマーニーが、にこにこと嬉しそうに笑いながら三人に近付いてきた。
「お三方とも本当に立派になられて!こうして久しぶりにお姿を拝見出来て、とっても嬉しいですわ」
「エマーニーも、元気そうで何よりです。こちらには、サマンサ王子妃殿下のご出産に控えて?」
「ええ、そうです。きっと次の満月には、尊い嬰児の元気なお声がこの王宮中に響き渡ることでしょう」
エマーニーは目尻に皺を寄せながら、柔らかな笑みで空を見上げる。彼女は現在、レオニルの義姉の出産に向けて大忙しだ。次期国王の子を取り上げるということの重責は計り知れないだろうが、サマンサから名指しされるほど腕前を持つエマーニーならば心配いらないと、リリアンナも大きく頷いた。
因みに、サマンサの出産が無事終わり生誕祭を済ませた後に、レオニルとリリアンナの結婚式が執り行われる段取りとなっている。
「お姉様のお知り合い?」
「ええ、助産婦のエマーニーよ。私の時もそうだけれど、貴方達を取り上げたのもこの方なの」
「へえ、そうなんだ」
双子はもちろん覚えているはずもなく、きょとんと首を傾げる。エマーニーは慈愛に溢れた雰囲気で、ルシフォードもケイティベルもすぐに慣れた。
「実はお二人がお生まれになったあの夜、リリアンナ様がこっそりと泣いていらしたのを偶然見てしまって」
「ええ……っ、まさかそんな」
「ふふっ、今だから言える話ですけれど」
過去の恥ずかしい話を急に暴露されたリリアンナは恥ずかしさから眉根を寄せ、エマーニーはいたずらっ子のような笑みを浮かべる。
リリアンナにとってもエマーニーにとっても、あの夜は特別だった。この国で繁栄と幸福の啓示として崇拝されている男女の双生児であり、初めて出来た弟妹。
エマーニーがベルシアの目を盗んでこっそり触らせてくれた、あの時の温もりと柔らかさを彼女は今でも鮮明に覚えている。小さな小さな手でリリアンナの小指をきゅっと握る尊い存在に、自分のすべてを受け入れられた気がしたのだ。
――産まれてきてくれてありがとう、私の大切な弟と妹。
すでにこの頃から辛く当たられていたリリアンナは、双子の弟妹が産まれたことで今後さらにぞんざいな扱いを受けるようになる。実際、誕生の知らせを無表情で聞いている様子を見て、多くの人は彼女が妬んでいるのだと誤解した。
けれどこのエマーニーだけは、リリアンナが戸惑いながらも潤んだ瞳で弟妹に触れるのを、すぐ側で見ていた。妬んでいるなんてとんでもない。きっと将来、この方はとても素敵な姉となるに違いないと確信しながら。
冷静沈着、完璧な王子として謳われている彼に、まさかあんなにも意外な一面があったとは今でも信じがたいが、ケイティベルをとても大切に思っているレオニルならば、事情を打ち明ければきっと二人を守ってくれるはずだ。
王家の力を借りれば、自分一人で行動するよりもずっと安全なのではないか、と。両親には信じてもらいたくないだろうから言いたくないと、悲しそうにしていた弟妹を思い出すと今でも胸が締め付けられる。
味方が増えるのは心強いが、どうしても信用してもらえなかった場合を考えてしまい、彼女は二の足を踏んでいた。
「リリアンナお姉様、どうしたの?」
長い廊下を歩く道すがら、ケイティベルに声をかけられた彼女ははっと顔を上げる。
「僕が変なことを言ったから?」
案じるようなルシフォードの声を聞いて、それは違うと首を横に振る。二人を不安にさせてはならないと、リリアンナはきりりと眉を吊り上げ気合いを入れ直す。
そして穏やかに微笑みながら、両脇を歩く弟妹のふかふかとした手を優しく握った。
「あら?リリアンナ様ではないですか。それに、ルシフォード様とケイティベル様も」
不意に後ろから聞こえてきた台詞に、ほとんど同時に振り向く。かつてベルシアの出産時に立ち会った助産婦のエマーニーが、にこにこと嬉しそうに笑いながら三人に近付いてきた。
「お三方とも本当に立派になられて!こうして久しぶりにお姿を拝見出来て、とっても嬉しいですわ」
「エマーニーも、元気そうで何よりです。こちらには、サマンサ王子妃殿下のご出産に控えて?」
「ええ、そうです。きっと次の満月には、尊い嬰児の元気なお声がこの王宮中に響き渡ることでしょう」
エマーニーは目尻に皺を寄せながら、柔らかな笑みで空を見上げる。彼女は現在、レオニルの義姉の出産に向けて大忙しだ。次期国王の子を取り上げるということの重責は計り知れないだろうが、サマンサから名指しされるほど腕前を持つエマーニーならば心配いらないと、リリアンナも大きく頷いた。
因みに、サマンサの出産が無事終わり生誕祭を済ませた後に、レオニルとリリアンナの結婚式が執り行われる段取りとなっている。
「お姉様のお知り合い?」
「ええ、助産婦のエマーニーよ。私の時もそうだけれど、貴方達を取り上げたのもこの方なの」
「へえ、そうなんだ」
双子はもちろん覚えているはずもなく、きょとんと首を傾げる。エマーニーは慈愛に溢れた雰囲気で、ルシフォードもケイティベルもすぐに慣れた。
「実はお二人がお生まれになったあの夜、リリアンナ様がこっそりと泣いていらしたのを偶然見てしまって」
「ええ……っ、まさかそんな」
「ふふっ、今だから言える話ですけれど」
過去の恥ずかしい話を急に暴露されたリリアンナは恥ずかしさから眉根を寄せ、エマーニーはいたずらっ子のような笑みを浮かべる。
リリアンナにとってもエマーニーにとっても、あの夜は特別だった。この国で繁栄と幸福の啓示として崇拝されている男女の双生児であり、初めて出来た弟妹。
エマーニーがベルシアの目を盗んでこっそり触らせてくれた、あの時の温もりと柔らかさを彼女は今でも鮮明に覚えている。小さな小さな手でリリアンナの小指をきゅっと握る尊い存在に、自分のすべてを受け入れられた気がしたのだ。
――産まれてきてくれてありがとう、私の大切な弟と妹。
すでにこの頃から辛く当たられていたリリアンナは、双子の弟妹が産まれたことで今後さらにぞんざいな扱いを受けるようになる。実際、誕生の知らせを無表情で聞いている様子を見て、多くの人は彼女が妬んでいるのだと誤解した。
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