死に戻りぽっちゃり双子、悪役お姉様を味方につける。

清澄 セイ

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第七章「いざ、双子同士の対決へ!」

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「馬鹿、何やってんだオリビア……!」
 体制の崩れた妹を庇う為、オリバーまでもが身を乗り出す。その背後からこれまでずっと部屋の隠し扉に潜んでいたレオニルが、彼の首元を剣で制圧した。
「そこまでだ」
「……は?アンタ一体どこから」
 気配に過敏なオリバーは、自分がレオニルの存在に気が付かなかったことに驚愕する。そして同様にオリビアも、エドモンドが手配した精鋭騎士によって後ろ手に拘束されていた。
「は、離しなさいよ!この……っ!」
 筋骨隆々の騎士に敵うはずもないが、彼女は金切り声を上げながらぶんぶんと首を振って捨て身で抵抗する。
「だめ、皆に気付かれちゃう!」
 しゃがんでいたケイティベルががばっと立ち上がり、とっさに自身が被っていたシーツをオリビアの頭に掛けた。
「静かにしないと、他の人が来るわ」
「黙れ白豚!」
「し、しろぶ……」
 面と向かって悪態を吐かれたケイティベルは思わず怯むが、自身を睨みつけるオリビアの半顔に広がる痣を見て、引きそうになった足にぐっと力を入れる。
 リリアンナの言った通り、犯人は痣持ちの双生児。理不尽に酷い扱いを受けてきた、いわば被害者も同然なのだと。
「近付くなケイティベル。何を隠し持っているか分からない」
「私なら平気です、レオニル殿下」
 怖くない、怖くない、怖くない。心の中で何度も何度も唱えながら、ケイティベルはオリビアの頬にそっと手を伸ばす。まさかそんな行動に出るとは想像していなかった彼女は、思わず目を見開いた。
「初めまして、オリビアさん?私の名前は、ケイティベルです」
「は、はぁ……?あんた何言って」
「仲良くなるには、まず自己紹介からが基本だもの」
 ケイティベルの記憶の中に残る声と、目の前の少女から発せられるそれは同じで、やはりあれは起こった未来の出来事だったのだと確信する。
 今ここで二人を止めなければ、いずれ誰かの命が失われてしまう。自分自身か、家族か、それとも犯人であるこの子達か。
「ベル、僕も一緒に!」
 慌てながらそう口にするルシフォードの手には、小ぶりのバックラーがしっかりと握られている。オリビアに襲撃された時に響いた激しい金属音は、この盾とナイフがぶつかり合う音だったのだ。
 彼はたたっとケイティベルに駆け寄ると、その手をぎゅうっと握る。思った通り、それは氷のように冷たく小刻みに震えていた。
「さっきそう呼ばれていらっしゃったから、貴女はオリビアさんで合ってているわよね?あちらの方のお名前は?」
「うるさい、話しかけるな白豚!」
「違うわ、私はケイティベルよ」
「そんなこと分かってる!」
 まんまと捕えられたことよりも、情けをかけられているような物言いに我慢がならない。今すぐにこの場でトドメを刺すか、それが敵わないのならば自害を選ぶまで。出来るだけ惨たらしく、惨めに、この双子の記憶にしっかりと赤く染みつくようにと。
「僕達は二人を傷付けたくないんだ。その痣のことをリリアンナお姉様から聞いて、今までどれだけ辛い経験をしてきたんだろうって……」
「ふん。だから同情しようって?」
「そう言われたら、否定出来ないわ。どう取り繕っても、私は貴方達の境遇をとても可哀想だと思っているのは事実だから」
 ルシフォードとケイティベルは、人を傷付けるような嘘は吐かない。愛され双子は手を繋ぎ、痣持ちの双子に深々と謝罪を口にした。
「酷いことを言ってごめんなさい。あれは、本心じゃないんだ」
「今は私達を嫌いでも、いつか仲良くなれたらって」
 空色の瞳の奥は、どこまでも澄んでいる。薄汚い掃き溜めの中に身を置いてきたオリバーとオリビアには、二人が本心からそう口にしているとすぐに分かった。だからこそ、歯痒くて堪らない。
 綺麗な心も他人を信じる気持ちも、とうの昔に溝川に投げ捨てた。そうしなければ、とても正気を保ってはいられない。ルシフォードとケイティベルは、身に付けているものだけではなく中身まで清らかで、あまつさえ暗殺者である自分達に救いの手を差し伸べる。

――もっと最低な人間だったなら、罪悪感など抱かずに済んだものを。

 オリビアの表情がみるみるうちに苦悶に染まり、これまで大人しかったオリバーが突然暴れだした。一瞬の不意を突き、レオニルの刀身をシースナイフで弾き飛ばす。誰もが焦り双子を守ろうと彼に手を伸ばすが、オリバーは他には目もくれずがくりとその場に膝をついた。
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