15 / 46
三女サーシャ
⑤
しおりを挟む
声をかけてくれた三人は、昔からの幼馴染だという。
リーダーの剣士リュウ、盾役のドドロン、魔法使いのルードス。
そこに回復役の僧侶が加わっていたのだけど、数日前に体調を崩してから、冒険者を辞めてしまったのだという。
事情を把握すると、祈りの力で傷を癒すことに出来るボクは、欠員を補うにはうってつけだった。
「ほいっと!」
「凄いな、サーシャちゃん。剣術も得意なんだね」
「えへへ~ 小さい頃から鍛えられてますから!」
「なるほど、頼りになるよ」
初めての魔物との戦闘は、恐怖するものだと聞いていた。
戦い方を教えてくれた騎士さんたちも、初めては身が竦んで上手く動けなかったらしい。
だけどボクの場合はそんなことなく、訓練通りに身体が動いてくれた。
聞いていたよりも怖くない。
お兄さんたちが気をつかって弱い魔物を選んでくれたから、相手の動きもよく見える。
実はちょっぴり不安だったけど、これなら大丈夫そうで安心した。
「怪我をしたら言ってくださいね! ボクが治しますから!」
「頼もしいですね」
「うん。冒険者になったばかりとは思えないな」
頼られるのも気分が良い。
やっぱりボクには、冒険者が向いていたのだと思った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「たっだいまー!」
「お帰りなさい」
「ちゃんと帰って来たね」
「もちろんだよ!」
初めての依頼を終えた日は、寝るまで気持ちが高ぶっていた。
身体を動かす楽しさと、これまでの訓練の成果が発揮される喜び。
何より報酬を受け取ると、自分の頑張りが形になったと実感できる。
「あのねあのね! みんな良い人ばっかりだったよ!」
「そう。なら良かったわ」
「サーシャちゃんは素直過ぎるから……騙されないようにね」
「確かにそうね。変な人について行っちゃダメよ?」
「わかってるよぉ」
受付のお姉さんと同じことをアイラお姉ちゃんに言われた。
変な人……と言われて思い浮かんだのは、一人でホールの隅に佇む隻腕のおじさんだった。
お兄さんたちは、あの人のことを変わり者だって言っていた。
見た目は確かにそんな感じがして……でも、本当にそうなのかな。
「よーし! 考えるのは面倒くさいし、明日直接聞いてみようかな!」
それがボクらしい。
たぶん大丈夫だとも思うから、自分の直感を信じよう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日。
集合時間よりも早く、ボクは冒険者ギルドに足を運んだ。
「いるかな~」
建物に入って目を向ける。
すると、あの人は昨日と同じ場所で座ってる彼を見つけた。
「いた!」
やっぱり怖い人には見えない。
ボクは彼に近づき、思い切って声をかけてみる。
「ねぇおじさん、何をしているの?」
「……」
返事がない。
聞こえていると思うけど、明らかに無視されている。
「おーい! おじさん聞こえている?」
「……オレはおじさんじゃない」
「あっ、やっぱり聞こえてたんだ。無視するなんて酷いなぁ~」
ボクはおじさんの前に座る。
「ねぇねぇ! ボクはサーシャって言うんだ! おじさんの名前は?」
「……」
「また無視してる……あっ、もしかしておじさんだから耳が遠いとか?」
「そこまで老化してないわ! あっ……」
ボクは予想通りに返してくれて、ニコニコ笑いながらおじさんを見つめる。
そんな僕を見て、おじさんは大きなため息をつく。
「はぁ……何なんだよお前」
「ボクはサーシャだよ」
「そうじゃなくて、何でオレに話しかけてるんだ? 昨日パーティーはどうした?」
「まだ集合時間じゃないんだ。おじさんと話したくて、ちょっと早く来たんだよ」
「オレと? お前……変な奴だな」
「お兄さんたちは、おじさんが変な人だって言ってたよ」
ボクがそう言うと、おじさんはピクリと反応する。
「だったら尚更話しかけてくるな」
「何で?」
「何でって、変な奴と話してると余計な心配かけるぞ」
「大丈夫だよ。だっておじさんは変な人でも、悪い人でもないでしょ?」
話しかけてみてわかった。
やっぱりボクが思った通りだ。
「お前……あんまり素直過ぎると、いずれ痛い目を見るぞ」
「大丈夫! ボクはこう見えて強いんだ」
「そうかい」
「おじさんも冒険者だよね? 依頼は受けないの?」
「受けてるぞ。適当にな」
「へぇ~ ねぇねぇ、冒険者って楽しい?」
「普通だ。オレは別に、報酬さえもらえれば何でもいいからな」
話の途中で、おじさんの視線が動く。
出入り口の付近に目を向けると、お兄さんたちがいた。
気付けば約束の時間に近づいている。
「もう行かなきゃ」
席をたち、お兄さんたちのほうへ向かう。
すると、後ろからおじさんが言う。
「気を付けろよ」
「うん! おじさんも、戻ったら名前教えてね!」
ああ、やっぱりおじさんは良い人だ。
見た目はちょっぴり怖いけど、言葉とか声に優しさが感じられる。
それにどうしてだろう。
おじさんと話している時は、変に緊張もしない。
何だかお姉ちゃんたちと話しているような感じがする。
戻ったらまた話してみたいな。
リーダーの剣士リュウ、盾役のドドロン、魔法使いのルードス。
そこに回復役の僧侶が加わっていたのだけど、数日前に体調を崩してから、冒険者を辞めてしまったのだという。
事情を把握すると、祈りの力で傷を癒すことに出来るボクは、欠員を補うにはうってつけだった。
「ほいっと!」
「凄いな、サーシャちゃん。剣術も得意なんだね」
「えへへ~ 小さい頃から鍛えられてますから!」
「なるほど、頼りになるよ」
初めての魔物との戦闘は、恐怖するものだと聞いていた。
戦い方を教えてくれた騎士さんたちも、初めては身が竦んで上手く動けなかったらしい。
だけどボクの場合はそんなことなく、訓練通りに身体が動いてくれた。
聞いていたよりも怖くない。
お兄さんたちが気をつかって弱い魔物を選んでくれたから、相手の動きもよく見える。
実はちょっぴり不安だったけど、これなら大丈夫そうで安心した。
「怪我をしたら言ってくださいね! ボクが治しますから!」
「頼もしいですね」
「うん。冒険者になったばかりとは思えないな」
頼られるのも気分が良い。
やっぱりボクには、冒険者が向いていたのだと思った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「たっだいまー!」
「お帰りなさい」
「ちゃんと帰って来たね」
「もちろんだよ!」
初めての依頼を終えた日は、寝るまで気持ちが高ぶっていた。
身体を動かす楽しさと、これまでの訓練の成果が発揮される喜び。
何より報酬を受け取ると、自分の頑張りが形になったと実感できる。
「あのねあのね! みんな良い人ばっかりだったよ!」
「そう。なら良かったわ」
「サーシャちゃんは素直過ぎるから……騙されないようにね」
「確かにそうね。変な人について行っちゃダメよ?」
「わかってるよぉ」
受付のお姉さんと同じことをアイラお姉ちゃんに言われた。
変な人……と言われて思い浮かんだのは、一人でホールの隅に佇む隻腕のおじさんだった。
お兄さんたちは、あの人のことを変わり者だって言っていた。
見た目は確かにそんな感じがして……でも、本当にそうなのかな。
「よーし! 考えるのは面倒くさいし、明日直接聞いてみようかな!」
それがボクらしい。
たぶん大丈夫だとも思うから、自分の直感を信じよう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日。
集合時間よりも早く、ボクは冒険者ギルドに足を運んだ。
「いるかな~」
建物に入って目を向ける。
すると、あの人は昨日と同じ場所で座ってる彼を見つけた。
「いた!」
やっぱり怖い人には見えない。
ボクは彼に近づき、思い切って声をかけてみる。
「ねぇおじさん、何をしているの?」
「……」
返事がない。
聞こえていると思うけど、明らかに無視されている。
「おーい! おじさん聞こえている?」
「……オレはおじさんじゃない」
「あっ、やっぱり聞こえてたんだ。無視するなんて酷いなぁ~」
ボクはおじさんの前に座る。
「ねぇねぇ! ボクはサーシャって言うんだ! おじさんの名前は?」
「……」
「また無視してる……あっ、もしかしておじさんだから耳が遠いとか?」
「そこまで老化してないわ! あっ……」
ボクは予想通りに返してくれて、ニコニコ笑いながらおじさんを見つめる。
そんな僕を見て、おじさんは大きなため息をつく。
「はぁ……何なんだよお前」
「ボクはサーシャだよ」
「そうじゃなくて、何でオレに話しかけてるんだ? 昨日パーティーはどうした?」
「まだ集合時間じゃないんだ。おじさんと話したくて、ちょっと早く来たんだよ」
「オレと? お前……変な奴だな」
「お兄さんたちは、おじさんが変な人だって言ってたよ」
ボクがそう言うと、おじさんはピクリと反応する。
「だったら尚更話しかけてくるな」
「何で?」
「何でって、変な奴と話してると余計な心配かけるぞ」
「大丈夫だよ。だっておじさんは変な人でも、悪い人でもないでしょ?」
話しかけてみてわかった。
やっぱりボクが思った通りだ。
「お前……あんまり素直過ぎると、いずれ痛い目を見るぞ」
「大丈夫! ボクはこう見えて強いんだ」
「そうかい」
「おじさんも冒険者だよね? 依頼は受けないの?」
「受けてるぞ。適当にな」
「へぇ~ ねぇねぇ、冒険者って楽しい?」
「普通だ。オレは別に、報酬さえもらえれば何でもいいからな」
話の途中で、おじさんの視線が動く。
出入り口の付近に目を向けると、お兄さんたちがいた。
気付けば約束の時間に近づいている。
「もう行かなきゃ」
席をたち、お兄さんたちのほうへ向かう。
すると、後ろからおじさんが言う。
「気を付けろよ」
「うん! おじさんも、戻ったら名前教えてね!」
ああ、やっぱりおじさんは良い人だ。
見た目はちょっぴり怖いけど、言葉とか声に優しさが感じられる。
それにどうしてだろう。
おじさんと話している時は、変に緊張もしない。
何だかお姉ちゃんたちと話しているような感じがする。
戻ったらまた話してみたいな。
6
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。
黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。
差出人は幼馴染。
手紙には絶縁状と書かれている。
手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。
いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。
そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……?
そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。
しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。
どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。
【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない
あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。
王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。
だがある日、
誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。
奇跡は、止まった。
城は動揺し、事実を隠し、
責任を聖女ひとりに押しつけようとする。
民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。
一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、
奇跡が失われる“その日”に備え、
治癒に頼らない世界を着々と整えていた。
聖女は象徴となり、城は主導権を失う。
奇跡に縋った者たちは、
何も奪われず、ただ立場を失った。
選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。
――これは、
聖女でも、英雄でもない
「悪役令嬢」が勝ち残る物語。
地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ
タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。
灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。
だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。
ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。
婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。
嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。
その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。
翌朝、追放の命が下る。
砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。
――“真実を映す者、偽りを滅ぼす”
彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。
地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる