パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ

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第一章

16.武器錬成

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 彼女は無手だった。
 何も持っていなかったはずの右手に、いつの間にか鋼の剣が握られている。

「あの剣……いったいどこから出したんだ?」
「取り出したわけではありませんよ? 自身の魔力を武器へと変える。それがデルタの能力なんです」

 武器錬成。
 己の魔力を元に、新たな物質を生成する。
 錬金術と呼ばれるジャンルの能力だが、彼女の場合は魔力をそのまま武器に変換している。
 通常、錬金術も術式に魔力を通して発動させる。
 加えて錬成には元となる素材が不可欠だ。
 しかし彼女はそれらの条件をすべてスルーし、自身の魔力だけで物質を生み出せる。

「武器というカテゴリーに限定されますが、武器であればなんでも作れます。そして――」
「そんじゃ行くぜ!」

 剣を握って彼女は駆け出す。
 アルファほどの速度はない。
 彼女と違って、デルタの能力は自身を強化するものではない。 
 それでも十分に速いのは、彼女もドールだからだろう。
 元となるスペックが人間より遥かに高いんだ。

「デルタは武器であれば、なんでも使いこなすことができます」

 スノーコングの群れに単身突っ込んだデルタ。
 彼女に向ってコングが襲い掛かる。
 大ぶりのパンチを剣で受け流し、回避と同時に腕を斬り落とす。
 コングが悲鳴をあげる。

「すごい切れ味だ」
「彼女が作った武器の性能は消費した魔力量に依存します。魔力を多く使うほど切れ味が増すんです」
「はっは! 魔力消費気にせず作れるのって最高だな! もう一本!」

 デルタはさらにもう一本の剣を生成する。

「二刀流……」

 爺ちゃんも刀を二本使っていた。
 両手に剣を握る彼女を見ていると、なんだか昔を思い出す。
 俺にはマネできなかった爺ちゃんの剣技を。

「おらどうしたデカザル! もう片方の腕も切ってほしいのか!」

 デルタはコングを挑発する。
 激高したコングが彼女に襲い掛かるが、片腕になって動きも緩慢だ。
 受けることすら必要なく、ひらりと回避して斬撃を加える。
 今度は首を。

「まず一匹」
 
 首を斬られたコングが倒れる。
 タイミングを同じくして、彼女の左右から残りのコングが迫る。
 正面にはコングの死体、背後は大ぶりの岩がある。
 位置的に逃げられない。
 そんな状況でも彼女は余裕に剣を構える。
 腕を胸の前でクロスして、切っ先をそれぞれコングに向けた。

「飛べ」

 そのまま手を放す。
 瞬間、剣はコング目掛けて飛んだ。
 否、弾丸のように発射され、コングの脳天に突き刺さる。
 頭を貫かれたコングは血を吹き出し、ゆっくりと前のめりに倒れていった。

 デルタはパンパンと手から埃を払う。

「ざっとこんなもんだぜ! 見てくれたか? マスター」
「ああ、すごかったよ」

 アルファとは異なる彼女の強さの片りんを見た気がする。
 俺がそう答えると、デルタは嬉しそうに近づいてきた。

「これからどんどんオレを頼ってくれよな!」
「うん。さっきのが、君の能力なんだね」
「おう! 姉上から聞いただろ? 武器錬成、好きな武器を作れるんだ」

 話しながら彼女は新たにナイフを生成した。
 生成にかかる時間は一秒もない。
 気づけば彼女が武器を持っている。

「さっき飛ばしてたのは?」
「こいつはオレの魔力からできた武器だからな。簡単な命令なら出せるんだよ。剣を浮かせて発射したりとかな」
「へぇ、便利だな」
「そうだろぉ~ けど、もっと便利な使い方もあるんだぜ」

 デルタは自慢げにニコニコしながら語る。

「オレの武器は基本、オレが意図的に破壊しない限り消えないんだけどさ」
「作ったら永遠に残り続けるってことか?」
「そうそう」

 錬金術のように物質を材料にしていないのに?
 自分の魔力だけで作った物質が永遠に形を保っていられるのか。
 一体どういう技術なんだ。

「そこも便利なんだけど! そうじゃなくて、時間とか回数とかの制限をつけることで、武器に能力を付与できるんだ」
「能力の付与? 魔剣とか魔導具を作れるってことか」
「そういうこと。たとえばこのナイフは、よっと」

 彼女がナイフを投擲した。
 手から離れた途端、ナイフが消える。

「消えた?」

 一秒くらい経って、どさっという音が遠くで聞こえた。
 姿が消えただけで物体は飛んでいたようだ。

「手から離れると消える効果のナイフ。こういうのも作れるんだよ」
「すごいな」
「ラスト様も使えるようになりますよ? 私の時と同じです」
「ああ、そうか。コネクト」

 互いの力を共有し合う。
 それが俺のユニークスキル『コネクト』の能力。
 アルファと繋がって魔力放出が使えるようになったと同じで。

「俺も武器錬成が使える?」
「教えてやるよ! ほら! 手!」

 バッと俺の顔のほうにデルタの右手が近づく。
 握れという意味だろう。
 武器錬成の使い方を教えるために。
 俺は彼女の手を握る。

「いいかマスター、作りたい武器をイメージするんだ」
「イメージ……」
「大体でいいぜ。剣なのか、槍なのか、弓なのか。大きさはこのくらいで、消費する魔力量を決める。能力つけたい場合は何にするか考える。で、作る」

 大雑把な説明だったがなんとなく理解した。
 要するに想像した武器を形にする力だ。
 だったらイメージがしっかりしていれば作れる。
 ちょうどイメージしやすい武器がある。

「……できた」
「刀か」
「ああ」

 練習にはぴったりだろう。
 なにせずっと共にあった一振りだ。

「消したいときは消えろって念じればいいぜ」

 言われた通りにすると、生成した刀が消滅した。

「ありがとう、デルタ。いい能力だ」
「へっへ、どういたしまして」

 アルファの魔力放出に、デルタの武器錬成。
 二つを組み合わせれば戦いの幅がぐっと広がる。
 俺にもできることが増えるぞ。
 そう思うとわくわくして、力を試したいとか思ってしまう。
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