14 / 19
第13話 慌ただしい朝
しおりを挟む
信じられない出来事だった為、呆然としてしまった私達だったけれど、いち早く我に返ったのはビューホ様だった。
「ま、待ってくれ、フィナ! どういう事なんだ!?」
「ん? そのまんまの意味っしょ? 何かこの感じだとビューホといると、ヤバそうな感じがするし巻き込まれる前に逃げるだけ。これって普通じゃない?」
「というか、今までの君と印象が違うじゃないか! 一体何が…」
「まだわかんないの? あんたに好かれる為に、長い間、ずーっと演技してきたの。やっと報われる時が来たと思ったのに、他に愛人がいたっていうのは本当の話っぽいし、相手に婚約者とかがいるんだったら慰謝料とか請求されるんじゃないの? お金のないビューホに、私は興味ないんだよね、ごめんね!」
フィナさんはあっけらかんとした顔で言った後、私の方を見て言う。
「ラノアさんにも迷惑かけたよね! ほんとごめん! まあ、私はもうここで逃げるからさ。すぐに逃げれる様に出来たのはラノアさんが昨日話してくれたおかげだよ。ほんとありがと! ラノアさんも逃げるならさっさと逃げた方がいいよー。あたしが言うのもなんだけど、他の女と作った子供を育てさせようとする男が相手なんだからさ」
あははと笑った後、フィナさんは私にバイバイと手を振ってから、思い出した様にビューホ様に言う。
「あ、あたしを探したりしないでね? そんな事をしたら、あたしの仲間がビューホを襲おうとしちゃうかも! 夜道を歩く時は背後に気をつけて? なんて事になったら困るだろうから、馬鹿な事はしないでよね? あたしだって、自分の初めてをあげた人が殺されちゃったなんて聞いたら悲しいもーん」
フィナさんは私達が呆然として言葉を返せないでいる内に、私達の目の前から去っていってしまった。
本当にあっという間の出来事だった。
「そ、そんな…、フィナがあんな子だったなんて…」
ショックを受けているのはビューホ様だけでなくシェーラ様もだった。
床にしゃがみ込み、肩を震わせて泣き始めた。
本当の娘のように可愛がっていたものね。
ちょっと気の毒に思ってしまうけれど、だからって私に酷い事をしてもいいわけじゃないから、深く同情するのはやめておく。
「では、失礼します」
慰める必要もないかと思い、廊下で話をしていたので、部屋の中に入ろうとすると、シェーラ様が叫ぶ。
「待ちなさい! あなたがフィナをあんな子にしたんでしょう!!」
「……馬鹿な事を言わないで下さい。私がフィナさんと2人で話をしたのは、昨日の晩くらいです。それ以外につきましては、どなたかがいらっしゃったはずです。だから、変な事を吹き込んだりする時間はありませんが?」
「だって! あなたの仕業としか考えられないじゃないの! あの子はとても良い子だったのよ!?」
「フィナさんが悪い人かどうかはわかりませんが、あれが本性なのではないですか? …ビューホ様、あなたは知っていらしたんですか?」
床に座り込んだままのビューホ様を見下ろして尋ねると、彼は力なく首を横に振った。
「あんなフィナは初めて見た…。いつも俺には笑顔で…。初めて会った時も震えながら俺を助けてくれたんだ」
「震えながら助けてくれた…?」
聞き返すと、ビューホ様はフィナさんとの出会いを話してくれた。
フィナさんとは小さい頃に出会ったらしく、誘拐されそうになったところを助けてくれたんだそう。
その恩があって、交流を深めていくうちに、ビューホ様は彼女を好きになったそうだった。
シェーラ様がフィナさんを可愛がる理由もわかる気がする。
自分の息子の命の恩人なら平民だろうがなんだろうが、とても良い子だと感じてしまうでしょうね…。
幼い頃の話だというなら、その頃のフィナさんも大人に利用されて、ビューホ様を助けるふりをした可能性もあるけれど、そんな汚い考えをしちゃ駄目よね。
ビューホ様にとっては辛いけれど、フィナ様と出会った思い出でもあるわけだし。
「そんなに大事な人なら追いかけなくて良いんですか?」
「だ、だって、フィナが…、あんな子だと思ってなかったんだ!」
「ビューホ様、本当にフィナさんが好きだったんですよね? それなら、どうしてあんなに豹変してしまったか聞けば良かったんじゃないですか?」
「……痛い目にあうのは嫌なんだ」
「気持ちはわかりますが…。とにかく、私にはこれ以上何も出来ませんので失礼します」
このまま相手をしてもいられないので、今度こそ、部屋に戻ろうとすると、シェーラ様が叫んだ。
「絶対にあなたのせいよ! あのフィナがあんな事を言うはずがないんだから!」
シェーラ様は泣きながら私につかみかかろうとしてきたけれど、それを慌ててビューホ様が止めた。
「母上、落ち着いて下さい!」
「落ち着けるはずがないでしょう!」
「ラノア、早く部屋の中に入るんだ!」
ビューホ様が体を張ってシェーラ様を止めてくれたので、私は部屋の中に入り鍵を締めた。
「あの女のせいよ! ビューホ、離婚よ! 離婚しなさい! あの女は疫病神なのよ!」
「母上、ちゃんと説明しますから…!」
ビューホ様は何とかシェーラ様をなだめて、私の部屋の前から移動してくれたようだった。
さっきのシェーラ様の様子を見て、私は急いで荷物をまとめる事にした。
10日の猶予期間は伝えたけれど、この家に住み続けるとは言っていないから。
この家にいたら、ビューホ様は私がいないと困るから手を出してこないにしても、シェーラ様が危害を加えようとしてくる可能性がある。
命が大事だわ。
ジェリー様のお家にメイドとして雇ってもらえるまでに時間はかかるだろうから、それまではどこか、家を借りるなりなんなりするしかないかもしれない。
ジェリー様に会ったら、厚かましい事はわかっているけれど、ミオナの事も相談してみようかしら…。
少ない荷物だった為、すぐに荷造りを終えると、ミオナを呼んで、着替えを手伝ってもらった。
「ま、待ってくれ、フィナ! どういう事なんだ!?」
「ん? そのまんまの意味っしょ? 何かこの感じだとビューホといると、ヤバそうな感じがするし巻き込まれる前に逃げるだけ。これって普通じゃない?」
「というか、今までの君と印象が違うじゃないか! 一体何が…」
「まだわかんないの? あんたに好かれる為に、長い間、ずーっと演技してきたの。やっと報われる時が来たと思ったのに、他に愛人がいたっていうのは本当の話っぽいし、相手に婚約者とかがいるんだったら慰謝料とか請求されるんじゃないの? お金のないビューホに、私は興味ないんだよね、ごめんね!」
フィナさんはあっけらかんとした顔で言った後、私の方を見て言う。
「ラノアさんにも迷惑かけたよね! ほんとごめん! まあ、私はもうここで逃げるからさ。すぐに逃げれる様に出来たのはラノアさんが昨日話してくれたおかげだよ。ほんとありがと! ラノアさんも逃げるならさっさと逃げた方がいいよー。あたしが言うのもなんだけど、他の女と作った子供を育てさせようとする男が相手なんだからさ」
あははと笑った後、フィナさんは私にバイバイと手を振ってから、思い出した様にビューホ様に言う。
「あ、あたしを探したりしないでね? そんな事をしたら、あたしの仲間がビューホを襲おうとしちゃうかも! 夜道を歩く時は背後に気をつけて? なんて事になったら困るだろうから、馬鹿な事はしないでよね? あたしだって、自分の初めてをあげた人が殺されちゃったなんて聞いたら悲しいもーん」
フィナさんは私達が呆然として言葉を返せないでいる内に、私達の目の前から去っていってしまった。
本当にあっという間の出来事だった。
「そ、そんな…、フィナがあんな子だったなんて…」
ショックを受けているのはビューホ様だけでなくシェーラ様もだった。
床にしゃがみ込み、肩を震わせて泣き始めた。
本当の娘のように可愛がっていたものね。
ちょっと気の毒に思ってしまうけれど、だからって私に酷い事をしてもいいわけじゃないから、深く同情するのはやめておく。
「では、失礼します」
慰める必要もないかと思い、廊下で話をしていたので、部屋の中に入ろうとすると、シェーラ様が叫ぶ。
「待ちなさい! あなたがフィナをあんな子にしたんでしょう!!」
「……馬鹿な事を言わないで下さい。私がフィナさんと2人で話をしたのは、昨日の晩くらいです。それ以外につきましては、どなたかがいらっしゃったはずです。だから、変な事を吹き込んだりする時間はありませんが?」
「だって! あなたの仕業としか考えられないじゃないの! あの子はとても良い子だったのよ!?」
「フィナさんが悪い人かどうかはわかりませんが、あれが本性なのではないですか? …ビューホ様、あなたは知っていらしたんですか?」
床に座り込んだままのビューホ様を見下ろして尋ねると、彼は力なく首を横に振った。
「あんなフィナは初めて見た…。いつも俺には笑顔で…。初めて会った時も震えながら俺を助けてくれたんだ」
「震えながら助けてくれた…?」
聞き返すと、ビューホ様はフィナさんとの出会いを話してくれた。
フィナさんとは小さい頃に出会ったらしく、誘拐されそうになったところを助けてくれたんだそう。
その恩があって、交流を深めていくうちに、ビューホ様は彼女を好きになったそうだった。
シェーラ様がフィナさんを可愛がる理由もわかる気がする。
自分の息子の命の恩人なら平民だろうがなんだろうが、とても良い子だと感じてしまうでしょうね…。
幼い頃の話だというなら、その頃のフィナさんも大人に利用されて、ビューホ様を助けるふりをした可能性もあるけれど、そんな汚い考えをしちゃ駄目よね。
ビューホ様にとっては辛いけれど、フィナ様と出会った思い出でもあるわけだし。
「そんなに大事な人なら追いかけなくて良いんですか?」
「だ、だって、フィナが…、あんな子だと思ってなかったんだ!」
「ビューホ様、本当にフィナさんが好きだったんですよね? それなら、どうしてあんなに豹変してしまったか聞けば良かったんじゃないですか?」
「……痛い目にあうのは嫌なんだ」
「気持ちはわかりますが…。とにかく、私にはこれ以上何も出来ませんので失礼します」
このまま相手をしてもいられないので、今度こそ、部屋に戻ろうとすると、シェーラ様が叫んだ。
「絶対にあなたのせいよ! あのフィナがあんな事を言うはずがないんだから!」
シェーラ様は泣きながら私につかみかかろうとしてきたけれど、それを慌ててビューホ様が止めた。
「母上、落ち着いて下さい!」
「落ち着けるはずがないでしょう!」
「ラノア、早く部屋の中に入るんだ!」
ビューホ様が体を張ってシェーラ様を止めてくれたので、私は部屋の中に入り鍵を締めた。
「あの女のせいよ! ビューホ、離婚よ! 離婚しなさい! あの女は疫病神なのよ!」
「母上、ちゃんと説明しますから…!」
ビューホ様は何とかシェーラ様をなだめて、私の部屋の前から移動してくれたようだった。
さっきのシェーラ様の様子を見て、私は急いで荷物をまとめる事にした。
10日の猶予期間は伝えたけれど、この家に住み続けるとは言っていないから。
この家にいたら、ビューホ様は私がいないと困るから手を出してこないにしても、シェーラ様が危害を加えようとしてくる可能性がある。
命が大事だわ。
ジェリー様のお家にメイドとして雇ってもらえるまでに時間はかかるだろうから、それまではどこか、家を借りるなりなんなりするしかないかもしれない。
ジェリー様に会ったら、厚かましい事はわかっているけれど、ミオナの事も相談してみようかしら…。
少ない荷物だった為、すぐに荷造りを終えると、ミオナを呼んで、着替えを手伝ってもらった。
97
あなたにおすすめの小説
訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
夫に家を追い出された女騎士は、全てを返してもらうために動き出す。
ゆずこしょう
恋愛
女騎士として働いてきて、やっと幼馴染で許嫁のアドルフと結婚する事ができたエルヴィール(18)
しかし半年後。魔物が大量発生し、今度はアドルフに徴集命令が下った。
「俺は魔物討伐なんか行けない…お前の方が昔から強いじゃないか。か、かわりにお前が行ってきてくれ!」
頑張って伸ばした髪を短く切られ、荷物を持たされるとそのまま有無を言わさず家から追い出された。
そして…5年の任期を終えて帰ってきたエルヴィールは…。
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
婚約者から悪役令嬢と呼ばれた公爵令嬢は、初恋相手を手に入れるために完璧な淑女を目指した。
石河 翠
恋愛
アンジェラは、公爵家のご令嬢であり、王太子の婚約者だ。ところがアンジェラと王太子の仲は非常に悪い。王太子には、運命の相手であるという聖女が隣にいるからだ。
その上、自分を敬うことができないのなら婚約破棄をすると言ってきた。ところがアンジェラは王太子の態度を気にした様子がない。むしろ王太子の言葉を喜んで受け入れた。なぜならアンジェラには心に秘めた初恋の相手がいるからだ。
実はアンジェラには未来に行った記憶があって……。
初恋の相手を射止めるために淑女もとい悪役令嬢として奮闘するヒロインと、いつの間にかヒロインの心を射止めてしまっていた巻き込まれヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:22451675)をお借りしています。
こちらは、『婚約者から悪役令嬢と呼ばれた自称天使に、いつの間にか外堀を埋められた。』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/572212123/891918330)のヒロイン視点の物語です。
私は愛する婚約者に嘘をつく
白雲八鈴
恋愛
亜麻色の髪の伯爵令嬢。
公爵子息の婚約者という立場。
これは本当の私を示すものではない。
でも私の心だけは私だけのモノ。
婚約者の彼が好き。これだけは真実。
それは本当?
真実と嘘が入り混じり、嘘が真実に置き換わっていく。
*作者の目は節穴ですので、誤字脱字は存在します。
*不快に思われれば、そのまま閉じることをお勧めします。
*小説家になろうでも投稿しています。
「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚
ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。
※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる