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閑話 元王太子と聖女の企み
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「どうして、ミーファはリーフ達の味方をするんだ…」
モーリスは自室で一人、頭を悩ませていた。
幼い頃から、ちやほやされて育った彼には、自分の事を好きにならない人間がいる事が信じられなかった。
もちろん、男性は別だ。
モーリスは自分の容姿が人より優れていると考えていたため、王太子であり、容姿も優れている自分に嫉妬するから、自分を嫌っているし、それはしょうがないとも思っていた。
もちろん、相手は自分の事を嫌いだと、あからさまな態度を見せるわけではないが、彼は周りのよそよそしさを嫉妬のせいだと思い込んでいた。
実際は関わりたくないだけ、なのだが。
自分の弟であるリーフ達も、そう顔は悪くない。
けれど、自分の方が上だと思っているモーリスは、弟達と仲良くしているミーファの気持ちがわからなかった。
(全てにおいて、この俺が勝っているじゃないか! リュークだってそうだ。そりゃあ、リュークもマシな顔だとは思うが、俺のほうがカッコいい。なのに、なぜ、ミーファは俺から離れていったんだ? あんなにかまってやっていたのに! 裏切り者め!)
残念ながら、彼の思い込みを間違っていると伝えてくれる人物はいなかった。
彼が謹慎中の内に、一人、また一人と彼のそばに仕えていた人間がいなくなっている事にも、自分の事しか考えていない彼は気付いていなかった。
トントン、と扉が叩かれる音がして、ベッドの上に寝転んでいたモーリスは身を起こす。
許可をすると、キュララと聖女の侍女の一人が部屋に入ってきた。
侍女はモーリスの分の食事をのせたワゴンから、彼のテーブルに食事を移動させると、無言で一礼して、キュララを残して部屋を出ていく。
侍女が出て行ってから少し経った後、モーリスは扉の前に立ったままのキュララに話しかける。
「どうした。何か用か?」
「…もしかしたら、ミーファに気付かれてしまったかもしれません」
「どういう事だ?」
キュララは身を起こしたモーリスの胸に飛び込んでいくと言う。
「私とトリンがわざと手を抜いている事を、ミーファが気付いたかもしれないんです」
「どうしてだ? バレないように上手くやれ、と言っただろう!」
「そうしたつもりです! 北の辺境の結界が破られた時と同じ様に、ミスだと思うと思ったんです!」
キュララはモーリスの胸に顔を擦り寄せて続ける。
「どうしてミーファが気付いたと思うんだ?」
「侍女達が聖女が城にいる間は、休暇を取りたいと言い始めたんです」
「それで、どうしてミーファにバレたとわかるんだ?」
「今まで、そんな事はなかったからです! 私達が城にいても、侍女達は私達の世話をしてくれていました。ですが、これからは城にいる時にはサポートしないし、出来ないだなんて言い出したんです!」
「何だと!? そんな奴らはクビにしてしまえばいい!」
モーリスはキュララの肩を抱き寄せて続ける。
「そう言われてみれば、ここ最近、俺のメイドも見なくなったな。ちょっと身体を触っただけで、仕事を放棄するとは…。それにしても、新しいメイドも来ないし、一体、どうなってるんだ」
「モーリス様に触れられる事なんて、本当に名誉な事ですのにね」
キュララはモーリスの胸に頬を寄せたまま、上目遣いで言った。
「お前とトリン以外は俺を捨てて聖女の仕事をしている。信じられん! 国民よりも俺の命の方が大事だろう!」
「モーリス様が国王陛下になれないとわかったから、手のひらを返してしまったんですよ。最低な聖女達ですね」
最低な聖女の基準がキュララとモーリスは他の人間の考える基準と違う。
だから、キュララの言葉にモーリスも大きく頷いた。
「本当に酷い女達だ。でもまあ、俺にはお前とトリスがいるからな。国王にはなれないかもしれないが、贅沢はさせてやるぞ。ミーファは後で後悔すればいい」
「本当にそう思います。私達をこんなにも苦しめたんですし、不幸になって、やっぱりモーリス殿下が良かったと後悔すれば良いんです」
「なあ、キュララ。あとどれくらいで、お前達の予想していた事が起こるんだ?」
「数日後には起こると思います。国民はパニックになりますよ。そこで、その原因はミーファだと皆に伝えればいいんです。ミーファが聖女の仕事を放棄したから、こんな事になったのだと。国民に責められるミーファは、どんな顔をするんでしょう? きっと、その発表を訂正する様に、モーリス殿下や国王陛下に助けを求めるのでしょうね」
キュララはその時が来る事を考えるだけでも楽しいのか、にんまりと笑った。
キュララとトリンはミーファを恨んでいた。
ミーファが元聖女になった事により、自分達の仕事量が増えただけでなく、今まで従順だった侍女達が、自分達に意見する様になった。
侍女達は正しい事を言っているのだが、キュララとトリンは納得いかなかった。
自分達は聖女であり、崇められなければいけない存在であるのに、どうして、侍女風情に意見されなければならないのか、と。
休みもとれないし、あんなにちやほやしてくれていた国民達は、ミーファが無料で回復魔法をかけていった事により、お金をとって回復魔法をかける彼女達を非難するようになった。
そんな不満が溜まっていたところに、今度はモーリスの王位継承権の剥奪だった。
自分達が何の為にモーリスに媚びへつらっていたのか。
これまでの何年間かの努力が、全て水の泡になってしまった。
王太子でなくなったとしても、王子である事にかわりはない。
だが、キュララ達は王妃になりたかった。
新しく王太子になったリーフは自分達を良く思っていない事を、キュララ達も自覚していた。
それも、ミーファが自分達の悪口を彼に言ったからだと思っていた。
実際は、彼女達の行動を見たリーフ自身が、彼女達を良く思っていないという事を考えようともしなかった。
キュララとトリンの中では全てミーファが悪かった。
だから、ミーファを困らせてやろうと思った。
自分達が真面目に聖女の仕事をしている様に見せかけて、わざと同じ時に結界に穴が開く様に調整し、各地で魔物が同時に入れるようにしようと考えた。
そして、騒がれたところで、国王から、こんな事になったのはミーファのせいだと国民に発表させる事にした。
自分の退位を早めたミーファに恨みを持っていた国王は、キュララ達の考えに同意し、この計画を進める事になった。
けれど、自分の力を過信している彼女達は知らない。
自分達が上手く調節して、一部分だけ結界を弱くする事など出来ないという事を。
モーリスは自室で一人、頭を悩ませていた。
幼い頃から、ちやほやされて育った彼には、自分の事を好きにならない人間がいる事が信じられなかった。
もちろん、男性は別だ。
モーリスは自分の容姿が人より優れていると考えていたため、王太子であり、容姿も優れている自分に嫉妬するから、自分を嫌っているし、それはしょうがないとも思っていた。
もちろん、相手は自分の事を嫌いだと、あからさまな態度を見せるわけではないが、彼は周りのよそよそしさを嫉妬のせいだと思い込んでいた。
実際は関わりたくないだけ、なのだが。
自分の弟であるリーフ達も、そう顔は悪くない。
けれど、自分の方が上だと思っているモーリスは、弟達と仲良くしているミーファの気持ちがわからなかった。
(全てにおいて、この俺が勝っているじゃないか! リュークだってそうだ。そりゃあ、リュークもマシな顔だとは思うが、俺のほうがカッコいい。なのに、なぜ、ミーファは俺から離れていったんだ? あんなにかまってやっていたのに! 裏切り者め!)
残念ながら、彼の思い込みを間違っていると伝えてくれる人物はいなかった。
彼が謹慎中の内に、一人、また一人と彼のそばに仕えていた人間がいなくなっている事にも、自分の事しか考えていない彼は気付いていなかった。
トントン、と扉が叩かれる音がして、ベッドの上に寝転んでいたモーリスは身を起こす。
許可をすると、キュララと聖女の侍女の一人が部屋に入ってきた。
侍女はモーリスの分の食事をのせたワゴンから、彼のテーブルに食事を移動させると、無言で一礼して、キュララを残して部屋を出ていく。
侍女が出て行ってから少し経った後、モーリスは扉の前に立ったままのキュララに話しかける。
「どうした。何か用か?」
「…もしかしたら、ミーファに気付かれてしまったかもしれません」
「どういう事だ?」
キュララは身を起こしたモーリスの胸に飛び込んでいくと言う。
「私とトリンがわざと手を抜いている事を、ミーファが気付いたかもしれないんです」
「どうしてだ? バレないように上手くやれ、と言っただろう!」
「そうしたつもりです! 北の辺境の結界が破られた時と同じ様に、ミスだと思うと思ったんです!」
キュララはモーリスの胸に顔を擦り寄せて続ける。
「どうしてミーファが気付いたと思うんだ?」
「侍女達が聖女が城にいる間は、休暇を取りたいと言い始めたんです」
「それで、どうしてミーファにバレたとわかるんだ?」
「今まで、そんな事はなかったからです! 私達が城にいても、侍女達は私達の世話をしてくれていました。ですが、これからは城にいる時にはサポートしないし、出来ないだなんて言い出したんです!」
「何だと!? そんな奴らはクビにしてしまえばいい!」
モーリスはキュララの肩を抱き寄せて続ける。
「そう言われてみれば、ここ最近、俺のメイドも見なくなったな。ちょっと身体を触っただけで、仕事を放棄するとは…。それにしても、新しいメイドも来ないし、一体、どうなってるんだ」
「モーリス様に触れられる事なんて、本当に名誉な事ですのにね」
キュララはモーリスの胸に頬を寄せたまま、上目遣いで言った。
「お前とトリン以外は俺を捨てて聖女の仕事をしている。信じられん! 国民よりも俺の命の方が大事だろう!」
「モーリス様が国王陛下になれないとわかったから、手のひらを返してしまったんですよ。最低な聖女達ですね」
最低な聖女の基準がキュララとモーリスは他の人間の考える基準と違う。
だから、キュララの言葉にモーリスも大きく頷いた。
「本当に酷い女達だ。でもまあ、俺にはお前とトリスがいるからな。国王にはなれないかもしれないが、贅沢はさせてやるぞ。ミーファは後で後悔すればいい」
「本当にそう思います。私達をこんなにも苦しめたんですし、不幸になって、やっぱりモーリス殿下が良かったと後悔すれば良いんです」
「なあ、キュララ。あとどれくらいで、お前達の予想していた事が起こるんだ?」
「数日後には起こると思います。国民はパニックになりますよ。そこで、その原因はミーファだと皆に伝えればいいんです。ミーファが聖女の仕事を放棄したから、こんな事になったのだと。国民に責められるミーファは、どんな顔をするんでしょう? きっと、その発表を訂正する様に、モーリス殿下や国王陛下に助けを求めるのでしょうね」
キュララはその時が来る事を考えるだけでも楽しいのか、にんまりと笑った。
キュララとトリンはミーファを恨んでいた。
ミーファが元聖女になった事により、自分達の仕事量が増えただけでなく、今まで従順だった侍女達が、自分達に意見する様になった。
侍女達は正しい事を言っているのだが、キュララとトリンは納得いかなかった。
自分達は聖女であり、崇められなければいけない存在であるのに、どうして、侍女風情に意見されなければならないのか、と。
休みもとれないし、あんなにちやほやしてくれていた国民達は、ミーファが無料で回復魔法をかけていった事により、お金をとって回復魔法をかける彼女達を非難するようになった。
そんな不満が溜まっていたところに、今度はモーリスの王位継承権の剥奪だった。
自分達が何の為にモーリスに媚びへつらっていたのか。
これまでの何年間かの努力が、全て水の泡になってしまった。
王太子でなくなったとしても、王子である事にかわりはない。
だが、キュララ達は王妃になりたかった。
新しく王太子になったリーフは自分達を良く思っていない事を、キュララ達も自覚していた。
それも、ミーファが自分達の悪口を彼に言ったからだと思っていた。
実際は、彼女達の行動を見たリーフ自身が、彼女達を良く思っていないという事を考えようともしなかった。
キュララとトリンの中では全てミーファが悪かった。
だから、ミーファを困らせてやろうと思った。
自分達が真面目に聖女の仕事をしている様に見せかけて、わざと同じ時に結界に穴が開く様に調整し、各地で魔物が同時に入れるようにしようと考えた。
そして、騒がれたところで、国王から、こんな事になったのはミーファのせいだと国民に発表させる事にした。
自分の退位を早めたミーファに恨みを持っていた国王は、キュララ達の考えに同意し、この計画を進める事になった。
けれど、自分の力を過信している彼女達は知らない。
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