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8 父の考えと妹の誤算
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「ど、どうしてアズがここにいるの…?」
ルピノは驚愕の表情で、挨拶をすると言っていた事も忘れて、アズアルド殿下に向かって尋ねた。
「やあ、ルピノ嬢、久しぶりだね」
アズアルド殿下はトーリ様とソファーに並んで座っていて、特にルピノが現れて驚いた様子もなく、笑顔で彼女に向かって言った。
「本当に久しぶりだわ…。ああ、アズ! 私、ずっと、ずっとあなたに会いたかったのよ! どんなに調べてもあなたの行方がわからなくて、本当に辛かった…!」
ルピノは目に涙を浮かべながら、アズアルド殿下の所に行こうとしたけれど、お父様が慌てて止める。
「ルピノ、落ち着きなさい。相手は隣国の王太子殿下だぞ。馴れ馴れしく話しかけてはいけない」
「え…? 嘘でしょう? 王太子殿下は横にいらっしゃる方なのでは…?」
ルピノは口をぽかんと開け、キョトンとした表情で、お父様に尋ねた。
すると、お父様が何か言う前に、アズアルド殿下が口を開く。
「横にいるのは僕の側近だよ。改めて自己紹介するけど、僕の本当の名前はアズアルド・フィノン。隣国の王太子だよ」
「アズアルド…、フィノン…?」
ルピノは声を震わせて聞き返した後、慌ててカーテシーをする。
「殿下にお会いできて光栄です。ですが…」
「何かな」
「どうして…、身分を隠していらっしゃったんですか? もっと早くに言っていただけていれば…」
「身分を隠してないと、人質にとられたりする可能性があるだろ? それに、周りの皆だって萎縮する。あと、誰にも話をしてなかったなんて事はないんだ。君の国の国王陛下にはお伝えしてあったし、高位貴族は知っていたと思う。君のお父上のようにね」
お父様の方を見て、アズアルド殿下は言った。
やはり、お父様は前々から知っておられたのね。
アズアルド殿下の行き先もわかっていて教えなかったんだわ。
すると、ルピノはアズアルド殿下に声を震わせて尋ねる。
「……そんな…、殿下は…、私を騙していたんですか?」
「騙す? まあ、そう言われてみればそういう事だけど、そんなに気に入らない? 僕としても心苦しかった事は確かだし、事情を理解してもらえると有り難いんだけど」
「……そういうわけではございません…」
ルピノは必死に考えを巡らせているようだった。
あんなにも会いたかった人と再会できた上に、相手は王太子殿下だった。
彼女が焦っているのは、自分とセイン殿下の婚約の話が進んでいる事でしょうね。
本来なら自分が婚約者になるはずだったと思っているのかもしれない。
ルピノを見ていると、私の視線に気が付いたのか、彼女と目があった。
だから、意地悪かもしれないけど言ってみる。
「ルピノ、アズアルド殿下と会えて良かったわね。あんなに会いたがっていたじゃない」
「……お姉様、この事を知っていたの…?」
ルピノは表情を歪め、私を睨んでくる。
「知らなかったわ。知っていたら、アズだなんて恐れ多くて呼べなかった」
「僕だって騙したくて騙したんじゃない。自分の身を守るためだ。父からの命令で自国では学べない事を学びにこさせてもらっていただけだよ」
「……信じられない…」
ルピノは叫び、今度はお父様に怒りをぶつける。
「どうして、私の婚約者候補の相手がアズアルド殿下だと教えてくださらなかったんですか!?」
「アズアルド殿下じゃなかったからだ」
お父様があまりにもさらりと答えたので、ルピノは呆気にとられた顔をする。
「……え?」
「元々、ルピノの婚約者は別の人物にする予定だった。だけど、ルピノがセイン殿下を誘惑していると国王陛下から連絡が入り確認すると、セイン殿下はルリに仕事を押し付けて、ルピノと2人で会っている事がわかった」
お父様の言葉に衝撃を受けた。
いつから、そんな事になっていたのかしら…。
私もどれだけ気付かないのよ…。
まあ、仕事をしている時は他の事なんて目に入らなかったのもあるし、私の前ではそんな素振りを見せなかっただけなのかしら?
セイン殿下の部屋に何度もルピノが来ているのはメイド達はわかるから、怪しいと思って、私には言わずにメイド長に報告して、そこから上の方に報告をしてくださったのかもしれないわね。
「その事について調べようと思っていた時に、ルピノからセイン殿下と婚約したいと言われてな。それじゃあルリが可哀想だから、以前、ルリとの婚約を望まれていたアズアルド殿下に声を掛けさせていただいた。アズアルド殿下には、婚約者がいらっしゃらなかったから、まだルリを思ってくださっているのかもしれないと思ったから」
「そ…そんな…」
お父様の言葉を聞いて、ルピノは悔しさで顔を歪めて、唇を噛んだ。
「お前の思う通りにしてやっただけなのに、何が不満なんだ?」
尋ねられたルピノは顔を真っ赤にして、お父様を睨んだ。
ルピノは驚愕の表情で、挨拶をすると言っていた事も忘れて、アズアルド殿下に向かって尋ねた。
「やあ、ルピノ嬢、久しぶりだね」
アズアルド殿下はトーリ様とソファーに並んで座っていて、特にルピノが現れて驚いた様子もなく、笑顔で彼女に向かって言った。
「本当に久しぶりだわ…。ああ、アズ! 私、ずっと、ずっとあなたに会いたかったのよ! どんなに調べてもあなたの行方がわからなくて、本当に辛かった…!」
ルピノは目に涙を浮かべながら、アズアルド殿下の所に行こうとしたけれど、お父様が慌てて止める。
「ルピノ、落ち着きなさい。相手は隣国の王太子殿下だぞ。馴れ馴れしく話しかけてはいけない」
「え…? 嘘でしょう? 王太子殿下は横にいらっしゃる方なのでは…?」
ルピノは口をぽかんと開け、キョトンとした表情で、お父様に尋ねた。
すると、お父様が何か言う前に、アズアルド殿下が口を開く。
「横にいるのは僕の側近だよ。改めて自己紹介するけど、僕の本当の名前はアズアルド・フィノン。隣国の王太子だよ」
「アズアルド…、フィノン…?」
ルピノは声を震わせて聞き返した後、慌ててカーテシーをする。
「殿下にお会いできて光栄です。ですが…」
「何かな」
「どうして…、身分を隠していらっしゃったんですか? もっと早くに言っていただけていれば…」
「身分を隠してないと、人質にとられたりする可能性があるだろ? それに、周りの皆だって萎縮する。あと、誰にも話をしてなかったなんて事はないんだ。君の国の国王陛下にはお伝えしてあったし、高位貴族は知っていたと思う。君のお父上のようにね」
お父様の方を見て、アズアルド殿下は言った。
やはり、お父様は前々から知っておられたのね。
アズアルド殿下の行き先もわかっていて教えなかったんだわ。
すると、ルピノはアズアルド殿下に声を震わせて尋ねる。
「……そんな…、殿下は…、私を騙していたんですか?」
「騙す? まあ、そう言われてみればそういう事だけど、そんなに気に入らない? 僕としても心苦しかった事は確かだし、事情を理解してもらえると有り難いんだけど」
「……そういうわけではございません…」
ルピノは必死に考えを巡らせているようだった。
あんなにも会いたかった人と再会できた上に、相手は王太子殿下だった。
彼女が焦っているのは、自分とセイン殿下の婚約の話が進んでいる事でしょうね。
本来なら自分が婚約者になるはずだったと思っているのかもしれない。
ルピノを見ていると、私の視線に気が付いたのか、彼女と目があった。
だから、意地悪かもしれないけど言ってみる。
「ルピノ、アズアルド殿下と会えて良かったわね。あんなに会いたがっていたじゃない」
「……お姉様、この事を知っていたの…?」
ルピノは表情を歪め、私を睨んでくる。
「知らなかったわ。知っていたら、アズだなんて恐れ多くて呼べなかった」
「僕だって騙したくて騙したんじゃない。自分の身を守るためだ。父からの命令で自国では学べない事を学びにこさせてもらっていただけだよ」
「……信じられない…」
ルピノは叫び、今度はお父様に怒りをぶつける。
「どうして、私の婚約者候補の相手がアズアルド殿下だと教えてくださらなかったんですか!?」
「アズアルド殿下じゃなかったからだ」
お父様があまりにもさらりと答えたので、ルピノは呆気にとられた顔をする。
「……え?」
「元々、ルピノの婚約者は別の人物にする予定だった。だけど、ルピノがセイン殿下を誘惑していると国王陛下から連絡が入り確認すると、セイン殿下はルリに仕事を押し付けて、ルピノと2人で会っている事がわかった」
お父様の言葉に衝撃を受けた。
いつから、そんな事になっていたのかしら…。
私もどれだけ気付かないのよ…。
まあ、仕事をしている時は他の事なんて目に入らなかったのもあるし、私の前ではそんな素振りを見せなかっただけなのかしら?
セイン殿下の部屋に何度もルピノが来ているのはメイド達はわかるから、怪しいと思って、私には言わずにメイド長に報告して、そこから上の方に報告をしてくださったのかもしれないわね。
「その事について調べようと思っていた時に、ルピノからセイン殿下と婚約したいと言われてな。それじゃあルリが可哀想だから、以前、ルリとの婚約を望まれていたアズアルド殿下に声を掛けさせていただいた。アズアルド殿下には、婚約者がいらっしゃらなかったから、まだルリを思ってくださっているのかもしれないと思ったから」
「そ…そんな…」
お父様の言葉を聞いて、ルピノは悔しさで顔を歪めて、唇を噛んだ。
「お前の思う通りにしてやっただけなのに、何が不満なんだ?」
尋ねられたルピノは顔を真っ赤にして、お父様を睨んだ。
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