価値がないと言われた私を必要としてくれたのは、隣国の王太子殿下でした

風見ゆうみ

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10 愛の告白

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 大人しくなるかと思ったけれど、ルピノは諦めなかった。
 ぼそりと、殿下に向かって呟くように言う。

「……アズアルド殿下は…、騙されてます」
「……どういう事かな」

 殿下が首を傾げると、ルピノは私を指差して言う。

「アズアルド殿下はお姉様の本性を知らないんです! お姉様は婚約者を放ったらかしにして、仕事ばかりしている人なんですよ!? セイン殿下はそれが寂しかったと言っておられました。ですからきっと、アズアルド殿下だって寂しい思いをされるに決まっています!」
「ルリ、反論はあるか?」

 殿下に問われて、首を縦に振ってから、ルピノに言う。

「私はセイン殿下に頼まれて彼の仕事をしていたの。セイン殿下を放ったらかしになんてしてないわ。私に仕事を手伝ってもらわないといけないくらい自分は忙しいからかまわないでくれと仰ったのよ!」

 私が仕事をしている間、セイン殿下は部屋にこもっておられた。

 仕事をしているのだと思い込んでいたし、まさか、最近になってルピノと会っていただなんて夢にも思っていなかった。

「でも、もっと気にして差し上げるべきだったんじゃないかしら。だから、私がお姉様の尻拭いをする事になったのよ?」
「セイン殿下に対して、尻拭いだなんて、その言い方は失礼なんじゃないの? あの方は王太子殿下なのよ?」
「そ、それは…、そうかもしれないけれど…」

 ルピノは必死に何か言い訳を考えている様だけれど、この勝負は私が負ける事はないと思うのよね。

 だって、アズアルド殿下は私を指名してるんだから。

 私がそれを伝える前に、お父様が言う。

「ルピノ、セイン殿下の件はお前が望んだ事だろう。それに、アズアルド殿下もルリが良いと仰ってるんだ。諦めなさい」
「そんな、お父様…!」
「いいか、ルピノ。これは決めた事ではない」

 お父様は私が、を強調して言った。

「……アズアルド殿下」

 ルピノは悔しそうな顔をした後、口をへの字に曲げてから殿下の名を呼んだ。

「何かな?」
「私は殿下を本当に愛しています。この気持ちは嘘ではありません。ですから、絶対に諦めたりしません!」

 ルピノはそう宣言して、逃げる様に部屋を出ていこうとしたけれど、そんな彼女をアズアルド殿下が呼び止める。

「ルピノ嬢、悪いけど、君の気持ちにはこたえられない。僕はルリを愛してる。だから、諦めたりしなかった。もちろん、ルリがセイン殿下と結婚したら、国の為にも諦めるつもりではいたけど」
「私は諦めたりなんかしません!」
「それは気持ちの押し付けにならないか?」
「あなただってそうだったんでしょう?」
 
 ルピノが叫ぶと、トーリ様が口を挟む。

「失礼ですがルピノ様、今までのお話を聞いておられましたか? アズアルド殿下は期間を決めて待っておられただけです。その事をルリ様には伝えておられません。ですので、気持ちの押しつけとは言わないのでは?」
「そうよ。私はアズアルド殿下が私の事をそんな風に思ってくれていたなんて知らなかったわ。あなたがセイン殿下と恋仲にならなければ、私はセイン殿下と結婚していたのよ。そうなっていたら、アズアルド殿下の事は良い思い出になっていたはず」
「うるさいわね! じゃあ、セイン殿下を返しますから、セイン殿下と結婚して下さいよ!」

 無茶苦茶な事を言い出したルピノに対してお父様の雷が落ちる。

「いいかげんにしなさい、ルピノ! アズアルド殿下の前だぞ!」
「――っ!」

 ルピノは目に涙を溜めて、お父様を睨んだ後、「諦めませんから!」と叫んで部屋を出ていった。

「アズアルド殿下、娘が申し訳ございませんでした」

 お父様が深々と頭を下げられたので、私も慌てて並んで頭を下げる。

「気にしなくていい。それよりも、ルリ」
「なんでしょうか…?」

 名を呼ばれたので顔を上げて殿下を見つめる。

「その…、ひいてなければいいんだけど」
「……ひく?」
「いや、その、気付いてないんならいいんだ!」

 アズアルド殿下が慌てた様子で首を横に振るので、首を傾げると、トーリ様が言う。

「殿下は先程、ルリ様の事を愛」
「トーリ、ちょっと黙ってろ」

 アズアルド殿下はトーリ様の口をおさえたけれど、何を言おうとされたかはわかってしまった。

 先程の事を思い出し、頬が熱くなるのを感じながらも微笑む。

「あの…、アズアルド殿下…、ひいたりなんかしません。ただ、私はまだ、セイン殿下と婚約中の身です」
「わかってる。ごめん。それからトニア卿にも申し訳ない」
「とんでもございません。私は娘が幸せであればそれで良いんです」

 お父様はアズアルド殿下に微笑んだ後、私の方を見て苦笑する。

「ルピノは不幸になったかもしれないが…」
「元々は彼女が望んだ事ですもの。お父様は悪くありませんわ」
「ありがとう」

 お父様は頷き、アズアルド殿下達の方に振り返る。

「息子のボラウンの件ですが…」
「そうだった。彼と夫人を別室で待たせてたんだった。僕達も一緒に話を聞かせてもらってもいいかな?」
「もちろんです」

 アズアルド殿下が立ち上がったので、トーリ様も立ち上がった。

「お父様、私は…」
「ルリ、お前は部屋に戻っていなさい。後から、別邸に行くから。ボラウンとノーラルの件や、今後の事を話そう」
「……わかりました」

 お兄様とノーラル様がどうなるのか気になるけれど、正直に言うと、体調が悪いのを我慢していたので、お父様の言葉に素直に頷いた。


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