価値がないと言われた私を必要としてくれたのは、隣国の王太子殿下でした

風見ゆうみ

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13 婚約破棄の取下げ

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 お父様と一緒に謁見の間に向かい、お父様が扉の前に立っていた護衛騎士に声を掛けると、ゆっくりと中から扉が開かれた。

 中に入ると、すでに国王陛下は玉座に座っていらして、アズとトーリ様は壁際に用意された椅子に座っていた。

 たとえ王族とはいえ、異国での話だから、あまり会話に割って入らないようにという牽制なのかもしれないし、逆にアズ達の方から申し出たのかもしれない。

 壇上にいる国王陛下とセイン様に向かってカーテシーをすると、セイン様が座っていた椅子から立ち上がり、私を見下ろして、底意地の悪そうな顔で話しかけてきた。

「仕事をする気になったか?」
「…………」

 頭が一瞬真っ白になってしまい、この言葉に対して返す言葉がすぐには思い浮かばなかった。

 隣に立つお父様の方を見ると、口をへの字に曲げていて、視線を前に戻すと、セイン様の横で陛下がこめかみをおさえながら、大きくため息を吐いた。

 陛下は金色の長い髪を後ろに1つにまとめた美丈夫で、ため息をつく姿も美しいのだけれど、今は、そんな事で感心している場合ではなかった。

「おい! 何とか言うんだ!」

 セイン様が叫んだ。

 何とか、って言ったら、それはもう怒り出されるんでしょうね…。

 あまりにも馬鹿にしている発言になるから、口には出さないけれど、そんな事を思った後、冷静に口を開く。

「申し訳ございませんが、セイン殿下、今日は婚約破棄についてのお話で、こちらに足を運ばせていただいたのです」
「ああ。婚約破棄の件か…」

 セイン様はふんと鼻で笑った後、とんでもない事を言い出した。

「ルピノは仕事が出来ないらしい。だから、やっぱり婚約破棄は止めだ」
「……は?」

 聞き返したのは、私だけでなく、お父様、アズ、そして、トーリ様もだった。

「な、何を言ってらっしゃるのですか?」

 何とか言葉を口から吐き出すと、セイン様は笑いながら言う。

「ルピノから聞いたよ。どうしても俺に婚約破棄されたくないんだって? だから、ルピノはルリの為に仕事は手伝えないって。おい、ルリ、俺の仕事をするんなら今回は婚約破棄は止めておいて」

 セイン様の言葉の途中で、玉座に座っていた国王陛下がセイン様のお尻を蹴り飛ばした。

「うわあぁぁっ!」

 壇上から転がり落ちてくるセイン様。

 お父様が慌てて私を引き寄せてくれたので、セイン様にぶつかられずに済んだ。

「大丈夫か?」

 アズが私の所までやって来て顔を覗き込んでくる。

「私は大丈夫ですわ。でも…」

 ふかふかのカーペットのおかげで、そう大きな怪我にはならなかった様だけれど、セイン様は「痛い! 痛い!」と叫びながら、床に横になって泣いている。

「バカ息子を相手にさせてすまなかった。ルリ、セインの先程の話は無視して、改めて話をしよう」

 呆気に取られている私に、玉座に座ったままの陛下は低い声で言った。

 そういえば、当事者のルピノは姿が見えないけれど、一体何をしてるのかしら?
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