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12 新しい侍女の話
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「おはよう、ルリ」
「おはようございます、ルリ様」
お父様に今日はどう動けば良いのか確認する為に、本邸に連絡をいれてもらったら、お父様の代わりに、アズアルド殿下とトーリ様がいらっしゃった。
「おはようございます、アズアルド殿下、トーリ様」
カーテシーをすると、アズアルド殿下は苦笑する。
「ルリ、アズアルド殿下はもうやめてくれないか。アズでいいだろ?」
「そういう訳にはいきませんわ」
「頼むよ。何か落ち着かないから」
「……それは、ご命令ですか?」
困った顔で尋ねると、アズはにこりと笑う。
「君に命令なんかしたくないんだけど」
「……承知いたしました。では、アズ…で」
こういうところは昔と変わらないわ。
命令はしたくないけど、お願いは聞いて欲しいという、遠回しの言い方。
苦笑すると、アズは嬉しそうに微笑む。
「早く、君を連れて帰りたいんだけど、まだ、婚約破棄されていない状態だから、口説こうにも口説けない。だから、今日の話し合いは僕らも行くから」
「そうなんですね…。その事で、お父様と話をしようと思っていたのですが…」
「君のお父上からの伝言だけれど、職場で待っていてくれたら迎えに行くと。それから、職場に出勤しないのなら連絡がほしいと言っていた」
「……ありがとうございます」
お父様はアズに伝言なんて頼む様な人ではないから、きっと、アズがお父様の代わりに、こっちに来たがったのね。
朝食はまだだというので、ダイニングルームに案内しようとすると、アズが話しかけてくる。
「気は早いが、侍女の話なんだが、隣国まで付いてきてくれそうな人はいるか?」
「私の家からは厳しそうです。お兄様にあんな事をされて辞めていくメイドがあとを絶たなくて…。騎士もそうですが…」
騎士にしてみれば、誰かを守りたくて騎士になったのに、わざと人を傷付ける様に指示されて辛かった人が多いみたいだった。
「そうか…。じゃあ、こちらで用意するけど、希望はあるかな?」
「希望…ですか?」
「護衛は良いとして侍女で、こんな子が良いとか…」
「そうですね…。アズが信頼している女性だと助かります…」
「僕が信頼している女性か…」
アズは少し考えた後、なぜか、トーリ様を見た。
「何ですか…。俺に侍女の仕事なんて無理ですよ」
「わかってるよ。で、トーリ、僕が信頼できる女性がいたんだけど…」
「……まさか…」
トーリ様が眉を寄せる。
すると、アズが笑顔で私に問いかけてくる。
「トーリの婚約者なら、ルリも安心だろ?」
「……はい」
トーリ様は悪い人ではなさそうだし、トーリ様の婚約者でアズが信頼しているというのなら、きっと良い人なのだと思う。
でも、トーリ様は嫌そうだわ。
だから、頷いた後に続ける。
「トーリ様や、トーリ様の婚約者の方が迷惑だったり、嫌でなければ…」
「嫌とか迷惑だとかいう気持ちはありませんし、彼女もそんな事を思うタイプではありません」
トーリ様はそう言ってくれたけれど、やはり、気分が乗らないといった形だった。
すると、アズが言う。
「ルリが来てくれたら王城で僕の部屋の近くに住むわけだけど、僕の部屋の近くには執務室もあるよね」
「……はい」
「となると、アザレアがルリの侍女になったら、休みじゃない日もアザレアに会えるよね」
「………アザレアに確認する手紙を送っても良いですか」
「もちろん。アザレアの意思が一番大事だから」
アズの言葉に私も付け加える。
「こういう話が出ているのだけど、どうでしょうか、という聞き方をしていただけませんか?」
命令だと思って、断れない状態にするのは良くないわ。
私の言葉の意図をくんでくださったのか、トーリ様は礼を言う。
「ありがとうございます」
「トーリ様の婚約者が侍女になってくれなくても、ぜひ、お会いしたいです」
「それはもちろんです。紹介させていただきます」
「普段は眉間にシワを寄せて気怠そうにしてるけど、アザレアを前にすると顔が緩むから、すぐにわかるよ」
アズが笑いながら言うと、トーリ様は不満そうな顔をされた。
そして、その後、私達は一緒に朝食を食べて、本邸の前で別れた。
別れた後、職場に挨拶に行くと、皆が安堵の表情を見せた。
「セイン殿下に何かされたんじゃないかと心配していたのよ」
「申し訳ございませんでした」
ニコさんに謝り、他の方にもお礼とお詫びを言ってから、このままだと仕事を辞める事になるかもしれないという話を上司にしていた時だった。
お父様が私を呼びに来られた。
謁見の間で、アズ達だけでなく、国王陛下も交えて話し合いをする事になったと教えてくれた。
「おはようございます、ルリ様」
お父様に今日はどう動けば良いのか確認する為に、本邸に連絡をいれてもらったら、お父様の代わりに、アズアルド殿下とトーリ様がいらっしゃった。
「おはようございます、アズアルド殿下、トーリ様」
カーテシーをすると、アズアルド殿下は苦笑する。
「ルリ、アズアルド殿下はもうやめてくれないか。アズでいいだろ?」
「そういう訳にはいきませんわ」
「頼むよ。何か落ち着かないから」
「……それは、ご命令ですか?」
困った顔で尋ねると、アズはにこりと笑う。
「君に命令なんかしたくないんだけど」
「……承知いたしました。では、アズ…で」
こういうところは昔と変わらないわ。
命令はしたくないけど、お願いは聞いて欲しいという、遠回しの言い方。
苦笑すると、アズは嬉しそうに微笑む。
「早く、君を連れて帰りたいんだけど、まだ、婚約破棄されていない状態だから、口説こうにも口説けない。だから、今日の話し合いは僕らも行くから」
「そうなんですね…。その事で、お父様と話をしようと思っていたのですが…」
「君のお父上からの伝言だけれど、職場で待っていてくれたら迎えに行くと。それから、職場に出勤しないのなら連絡がほしいと言っていた」
「……ありがとうございます」
お父様はアズに伝言なんて頼む様な人ではないから、きっと、アズがお父様の代わりに、こっちに来たがったのね。
朝食はまだだというので、ダイニングルームに案内しようとすると、アズが話しかけてくる。
「気は早いが、侍女の話なんだが、隣国まで付いてきてくれそうな人はいるか?」
「私の家からは厳しそうです。お兄様にあんな事をされて辞めていくメイドがあとを絶たなくて…。騎士もそうですが…」
騎士にしてみれば、誰かを守りたくて騎士になったのに、わざと人を傷付ける様に指示されて辛かった人が多いみたいだった。
「そうか…。じゃあ、こちらで用意するけど、希望はあるかな?」
「希望…ですか?」
「護衛は良いとして侍女で、こんな子が良いとか…」
「そうですね…。アズが信頼している女性だと助かります…」
「僕が信頼している女性か…」
アズは少し考えた後、なぜか、トーリ様を見た。
「何ですか…。俺に侍女の仕事なんて無理ですよ」
「わかってるよ。で、トーリ、僕が信頼できる女性がいたんだけど…」
「……まさか…」
トーリ様が眉を寄せる。
すると、アズが笑顔で私に問いかけてくる。
「トーリの婚約者なら、ルリも安心だろ?」
「……はい」
トーリ様は悪い人ではなさそうだし、トーリ様の婚約者でアズが信頼しているというのなら、きっと良い人なのだと思う。
でも、トーリ様は嫌そうだわ。
だから、頷いた後に続ける。
「トーリ様や、トーリ様の婚約者の方が迷惑だったり、嫌でなければ…」
「嫌とか迷惑だとかいう気持ちはありませんし、彼女もそんな事を思うタイプではありません」
トーリ様はそう言ってくれたけれど、やはり、気分が乗らないといった形だった。
すると、アズが言う。
「ルリが来てくれたら王城で僕の部屋の近くに住むわけだけど、僕の部屋の近くには執務室もあるよね」
「……はい」
「となると、アザレアがルリの侍女になったら、休みじゃない日もアザレアに会えるよね」
「………アザレアに確認する手紙を送っても良いですか」
「もちろん。アザレアの意思が一番大事だから」
アズの言葉に私も付け加える。
「こういう話が出ているのだけど、どうでしょうか、という聞き方をしていただけませんか?」
命令だと思って、断れない状態にするのは良くないわ。
私の言葉の意図をくんでくださったのか、トーリ様は礼を言う。
「ありがとうございます」
「トーリ様の婚約者が侍女になってくれなくても、ぜひ、お会いしたいです」
「それはもちろんです。紹介させていただきます」
「普段は眉間にシワを寄せて気怠そうにしてるけど、アザレアを前にすると顔が緩むから、すぐにわかるよ」
アズが笑いながら言うと、トーリ様は不満そうな顔をされた。
そして、その後、私達は一緒に朝食を食べて、本邸の前で別れた。
別れた後、職場に挨拶に行くと、皆が安堵の表情を見せた。
「セイン殿下に何かされたんじゃないかと心配していたのよ」
「申し訳ございませんでした」
ニコさんに謝り、他の方にもお礼とお詫びを言ってから、このままだと仕事を辞める事になるかもしれないという話を上司にしていた時だった。
お父様が私を呼びに来られた。
謁見の間で、アズ達だけでなく、国王陛下も交えて話し合いをする事になったと教えてくれた。
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