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14 セインの誤算
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「どうして蹴ったりしたんですか!」
涙をこぼしながら、セイン様が床に座り込んだまま叫ぶと、国王陛下は彼を睨みつける。
「蹴りたくなる様な話をしたからだ。獅子の谷落としと一緒だと思え」
獅子の谷落としって、たしか、厳しい試練を与えて立派な人間に育て上げるとかいう意味だったかしら…?
試練というよりかは暴力な気もするけれど、怪我をしないとわかっていたんでしょうし、良いということにしましょう。
体罰は良くないけれど、相手はセイン様の父親であり、国王陛下ですものね。
私達が黙っていると、陛下が話しかけてくる。
「ルリ、婚約破棄の件だが、俺は認めているし、書類も用意してあるから安心しろ。アズアルド殿下が関わっているのに、馬鹿な真似はせんし、セインにはルリは勿体ないからな」
「……勿体ないお言葉です」
深々と頭を下げると、セイン様が叫ぶ。
「待って下さい、父上! ルピノは仕事が出来ないと言ってました! それでは困るんです!」
「安心しろ。今、ルピノには王妃教育の事で、ファラが相手をしているから、仕事についても教えてくれるだろう」
「は、母上が…!?」
ファラ様というのは、王妃陛下のお名前で、王妃陛下と呼ぶのは長いだろうからと、ファラで良いと仰り、ファラ様と呼ぶのが貴族の間では普通だ。
ファラ様だけでなく、ルピノもいなかったのは、そういう事なのね。
「ファラが駄目だと判断すれば、ルピノとセインの結婚の話はなくなる、もしくは、どうしても、ルピノと結婚したいというならセインを廃嫡する」
「そ、そんな…!」
「お前には弟がいるという事を忘れるな」
「……」
冷たい言葉と視線を送られて、セイン様は俯いた。
そんな彼を見て小さく息を吐いてから、陛下はこちらに視線を向ける。
「今日は足を運ばせて悪かったな。アズアルド殿下や付き人にも手間をかけた」
「とんでもございません。セイン殿下に婚約破棄していただけたので、僕としては逆に感謝したいです」
「な…っ、何だって!?」
アズの言葉を聞いたセイン様はアズを指差して叫ぶ。
「まさか、俺とルリを引き裂く為にルピノに俺を誘惑させたのか!?」
「そんな事があるわけないでしょう」
セイン様の方が年上という事もあり、アズは相手を敬う口調で続ける。
「セイン殿下の魅力にルピノ嬢が気付かれ、その様な関係になられたのではないですか?」
「そ、その様な関係って…、どこまで知ってるんだよ!?」
「どこまでとは? 僕が知っているのは、あなたとルピノ嬢が婚約したがっているという話ですよ?」
「そ、そんな…、え、あ、だ、騙したのか!?」
「騙すという意味がわかりません」
アズは小首を傾げて苦笑すると続ける。
「もう、ルリにこだわる必要はないでしょう? 仕事をしてくれないから、ルピノ嬢ではなくルリとの婚約破棄の話をなかった事にしたいようですが、ファラ様がルピノ嬢を鍛え上げてくださるのであれば、問題はないと思いますが?」
「それとこれとは別だ! 今すぐ仕事を出来るようになってもらわないと困るんだ! 仕事が山積みなんだよ!」
「では、こんな事をしている場合ではないのでは?」
「どうしてだ? ルリとの婚約破棄の話をなかった事にしなければ、このままでは俺は…」
「ルリに仕事をやらせようという事が間違っているという事にお気づきください。自分でやればよろしいんです」
アズはそこで言葉を区切ると、国王陛下に向かって尋ねる。
「今日の話はこれで終わりでよろしいでしょうか?」
「そうだな。ルリ、トニア公爵、後ほど、屋敷の方に婚約破棄についての書類を送ろう。目を通して問題なければサインしてくれ」
「承知いたしました」
「ま、待ってくれ!」
セイン様は焦った顔で、床に座り込んだまま、私の方に手を伸ばしたけれど、アズが私をセイン様から隠すように立って言う。
「ルピノ嬢とお幸せに」
「そんな…っ!」
セイン様は何か言っておられたけれど、お父様に促され、私達は謁見の間から去ったのだった。
涙をこぼしながら、セイン様が床に座り込んだまま叫ぶと、国王陛下は彼を睨みつける。
「蹴りたくなる様な話をしたからだ。獅子の谷落としと一緒だと思え」
獅子の谷落としって、たしか、厳しい試練を与えて立派な人間に育て上げるとかいう意味だったかしら…?
試練というよりかは暴力な気もするけれど、怪我をしないとわかっていたんでしょうし、良いということにしましょう。
体罰は良くないけれど、相手はセイン様の父親であり、国王陛下ですものね。
私達が黙っていると、陛下が話しかけてくる。
「ルリ、婚約破棄の件だが、俺は認めているし、書類も用意してあるから安心しろ。アズアルド殿下が関わっているのに、馬鹿な真似はせんし、セインにはルリは勿体ないからな」
「……勿体ないお言葉です」
深々と頭を下げると、セイン様が叫ぶ。
「待って下さい、父上! ルピノは仕事が出来ないと言ってました! それでは困るんです!」
「安心しろ。今、ルピノには王妃教育の事で、ファラが相手をしているから、仕事についても教えてくれるだろう」
「は、母上が…!?」
ファラ様というのは、王妃陛下のお名前で、王妃陛下と呼ぶのは長いだろうからと、ファラで良いと仰り、ファラ様と呼ぶのが貴族の間では普通だ。
ファラ様だけでなく、ルピノもいなかったのは、そういう事なのね。
「ファラが駄目だと判断すれば、ルピノとセインの結婚の話はなくなる、もしくは、どうしても、ルピノと結婚したいというならセインを廃嫡する」
「そ、そんな…!」
「お前には弟がいるという事を忘れるな」
「……」
冷たい言葉と視線を送られて、セイン様は俯いた。
そんな彼を見て小さく息を吐いてから、陛下はこちらに視線を向ける。
「今日は足を運ばせて悪かったな。アズアルド殿下や付き人にも手間をかけた」
「とんでもございません。セイン殿下に婚約破棄していただけたので、僕としては逆に感謝したいです」
「な…っ、何だって!?」
アズの言葉を聞いたセイン様はアズを指差して叫ぶ。
「まさか、俺とルリを引き裂く為にルピノに俺を誘惑させたのか!?」
「そんな事があるわけないでしょう」
セイン様の方が年上という事もあり、アズは相手を敬う口調で続ける。
「セイン殿下の魅力にルピノ嬢が気付かれ、その様な関係になられたのではないですか?」
「そ、その様な関係って…、どこまで知ってるんだよ!?」
「どこまでとは? 僕が知っているのは、あなたとルピノ嬢が婚約したがっているという話ですよ?」
「そ、そんな…、え、あ、だ、騙したのか!?」
「騙すという意味がわかりません」
アズは小首を傾げて苦笑すると続ける。
「もう、ルリにこだわる必要はないでしょう? 仕事をしてくれないから、ルピノ嬢ではなくルリとの婚約破棄の話をなかった事にしたいようですが、ファラ様がルピノ嬢を鍛え上げてくださるのであれば、問題はないと思いますが?」
「それとこれとは別だ! 今すぐ仕事を出来るようになってもらわないと困るんだ! 仕事が山積みなんだよ!」
「では、こんな事をしている場合ではないのでは?」
「どうしてだ? ルリとの婚約破棄の話をなかった事にしなければ、このままでは俺は…」
「ルリに仕事をやらせようという事が間違っているという事にお気づきください。自分でやればよろしいんです」
アズはそこで言葉を区切ると、国王陛下に向かって尋ねる。
「今日の話はこれで終わりでよろしいでしょうか?」
「そうだな。ルリ、トニア公爵、後ほど、屋敷の方に婚約破棄についての書類を送ろう。目を通して問題なければサインしてくれ」
「承知いたしました」
「ま、待ってくれ!」
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