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15 婚約者になるはずの2人の口論
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「言い過ぎたかな?」
謁見の間を出てすぐに、アズがトーリ様に尋ねると、彼は首を横に振る。
「この場ではお答えできません」
「そう言われればそうだな」
謁見の間の方を振り返った後、アズが私とお父様に言う。
「今日はこちらに滞在させてもらう事になってるんだ。だから、今日はここで別れよう。婚約破棄の手続きが終わったら、今度は僕との婚約の書類にサインして欲しい。明日になるかな?」
「承知いたしました」
頷くと、アズが嬉しそうな顔をする。
「嫌だと言われたらどうしようかと思ってた」
「言える立場でもありませんわ」
「僕は君に無理に結婚してくれなんて言わないよ」
意地悪な事を言うから、昔みたいに軽く睨んだあとに答える。
「嫌ではないからお受けしたんですわ。無理にではありません」
「知ってる。君は嫌なら嫌だと言うだろうし、我慢しても顔に出る」
「それは昔の話ですわ! 今はそうではありません!」
「ごめんごめん、そう怒らないでくれ」
アズは私の頬に手を伸ばしたけれど、お父様の視線に気が付いてやめた。
「まだ、婚約者じゃないからね」
アズは申し訳無さそうにしてから頷くと、アズとトーリ様は待っていたメイドに連れられて城の奥へと向かっていった。
「お父様、ルピノの件ですが…」
「わかっている…。ルピノがファラ様に無礼な事をしていなければ良いのだけどな…」
「さすがに、ファラ様相手でしたら、ルピノも大人しくなるのでは? 相手は王妃陛下なんですから」
外は晴れていて、歩くには丁度よい気温なので、2人で話しながら、馬車が迎えにこれる場所まで移動する為に城の外に出ると、どこかの窓が開いているのか、ルピノの叫ぶ声がはっきりと聞こえてきた。
「なぜ、私がセイン殿下の仕事をしないといけないんですか!? あなたの仕事なんですから、あなたがすれば良いでしょう!?」
話のお相手はセイン殿下の様で、彼の情けない声も聞こえてくる。
「父上が婚約破棄を認めてしまったんだからしょうがないだろ! 君は俺の婚約者になるんだ!」
「嫌だって言ってるじゃないですか! 婚約者だからって、私に仕事を押し付けるのは間違ってます! 侍女やメイドにやらせればよいのでは?」
「機密書類もあるんだ。そんな事はできない!」「はあ? そんな大事な書類を婚約者だからといって、他人に預けるなんてどうかしてるんじゃないですか!?」
ルピノの言っている事は間違っていないと思う。
思わず、お父様とその場で立ち止まり、声の聞こえてくる方向の窓に目を向けると、セイン様が反論した。
「俺の妻になるんだからいいだろ!?」
「良くありません! それはお姉様が相手だから出来た事です。私はアズと結ばれるんですから、セイン殿下の婚約者にはなりません!」
「……アズ…? ま、まさか…」
「そうです、アズアルド殿下です」
「どうして君もルリもアズアルド殿下がいいんだ!? 顔か!?」
「それもありますが、性格も好きなんです!」
きっぱりとルピノが答えた時だった。
「あなた達、いいかげんにしなさい!」
ファラ様の叱る声が聞こえた。
「セイン! 自分の仕事は自分でしなさい! それだから、ルリに愛想を尽かされるのです。剣術や体術はルリに負けるくらいなんですから情けない。ルリが自分よりも強い男性であるアズアルド殿下に惹かれてもおかしくありません! 力が弱いなりに賢くなる様に育てたのに、常識が抜け落ちてしまったようね! セイン、あなたはせめてルピノの気持ちを取り戻す為に、しっかり仕事をしなさい!」
「わかっています、母上! でも、やり方がわからなくて…」
セイン様は学園の成績はトップクラスだったのに仕事は出来ないのね…。
まあ、頭が良いからといって、仕事が出来るとは限らないし…。
「やり方がわからないって…、あなたがルリに教えたのでしょう?」
「いえ…」
「なんですって? じゃあ、ルリはどうやって仕事をしていたのです?」
「わかりません! 独自の方法だと思います!」
はっきりと答えたセイン殿下の言葉の後は、かなり長い沈黙が続いた。
すると、お父様が言う。
「もう帰ろうか」
「……そうですね」
顔を見合わせて頷き合うと、ファラ様には申し訳ないけれど、私達は会話が聞こえなかったフリをして、その場をあとにした。
※次話はルピノ視点です。
謁見の間を出てすぐに、アズがトーリ様に尋ねると、彼は首を横に振る。
「この場ではお答えできません」
「そう言われればそうだな」
謁見の間の方を振り返った後、アズが私とお父様に言う。
「今日はこちらに滞在させてもらう事になってるんだ。だから、今日はここで別れよう。婚約破棄の手続きが終わったら、今度は僕との婚約の書類にサインして欲しい。明日になるかな?」
「承知いたしました」
頷くと、アズが嬉しそうな顔をする。
「嫌だと言われたらどうしようかと思ってた」
「言える立場でもありませんわ」
「僕は君に無理に結婚してくれなんて言わないよ」
意地悪な事を言うから、昔みたいに軽く睨んだあとに答える。
「嫌ではないからお受けしたんですわ。無理にではありません」
「知ってる。君は嫌なら嫌だと言うだろうし、我慢しても顔に出る」
「それは昔の話ですわ! 今はそうではありません!」
「ごめんごめん、そう怒らないでくれ」
アズは私の頬に手を伸ばしたけれど、お父様の視線に気が付いてやめた。
「まだ、婚約者じゃないからね」
アズは申し訳無さそうにしてから頷くと、アズとトーリ様は待っていたメイドに連れられて城の奥へと向かっていった。
「お父様、ルピノの件ですが…」
「わかっている…。ルピノがファラ様に無礼な事をしていなければ良いのだけどな…」
「さすがに、ファラ様相手でしたら、ルピノも大人しくなるのでは? 相手は王妃陛下なんですから」
外は晴れていて、歩くには丁度よい気温なので、2人で話しながら、馬車が迎えにこれる場所まで移動する為に城の外に出ると、どこかの窓が開いているのか、ルピノの叫ぶ声がはっきりと聞こえてきた。
「なぜ、私がセイン殿下の仕事をしないといけないんですか!? あなたの仕事なんですから、あなたがすれば良いでしょう!?」
話のお相手はセイン殿下の様で、彼の情けない声も聞こえてくる。
「父上が婚約破棄を認めてしまったんだからしょうがないだろ! 君は俺の婚約者になるんだ!」
「嫌だって言ってるじゃないですか! 婚約者だからって、私に仕事を押し付けるのは間違ってます! 侍女やメイドにやらせればよいのでは?」
「機密書類もあるんだ。そんな事はできない!」「はあ? そんな大事な書類を婚約者だからといって、他人に預けるなんてどうかしてるんじゃないですか!?」
ルピノの言っている事は間違っていないと思う。
思わず、お父様とその場で立ち止まり、声の聞こえてくる方向の窓に目を向けると、セイン様が反論した。
「俺の妻になるんだからいいだろ!?」
「良くありません! それはお姉様が相手だから出来た事です。私はアズと結ばれるんですから、セイン殿下の婚約者にはなりません!」
「……アズ…? ま、まさか…」
「そうです、アズアルド殿下です」
「どうして君もルリもアズアルド殿下がいいんだ!? 顔か!?」
「それもありますが、性格も好きなんです!」
きっぱりとルピノが答えた時だった。
「あなた達、いいかげんにしなさい!」
ファラ様の叱る声が聞こえた。
「セイン! 自分の仕事は自分でしなさい! それだから、ルリに愛想を尽かされるのです。剣術や体術はルリに負けるくらいなんですから情けない。ルリが自分よりも強い男性であるアズアルド殿下に惹かれてもおかしくありません! 力が弱いなりに賢くなる様に育てたのに、常識が抜け落ちてしまったようね! セイン、あなたはせめてルピノの気持ちを取り戻す為に、しっかり仕事をしなさい!」
「わかっています、母上! でも、やり方がわからなくて…」
セイン様は学園の成績はトップクラスだったのに仕事は出来ないのね…。
まあ、頭が良いからといって、仕事が出来るとは限らないし…。
「やり方がわからないって…、あなたがルリに教えたのでしょう?」
「いえ…」
「なんですって? じゃあ、ルリはどうやって仕事をしていたのです?」
「わかりません! 独自の方法だと思います!」
はっきりと答えたセイン殿下の言葉の後は、かなり長い沈黙が続いた。
すると、お父様が言う。
「もう帰ろうか」
「……そうですね」
顔を見合わせて頷き合うと、ファラ様には申し訳ないけれど、私達は会話が聞こえなかったフリをして、その場をあとにした。
※次話はルピノ視点です。
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