価値がないと言われた私を必要としてくれたのは、隣国の王太子殿下でした

風見ゆうみ

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20 報告書

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 私がマーニャ嬢の事を調べている事をアザレアに気取られない様に、彼女が休みの日にトーリから、マーニャ嬢の性格とアザレアとの確執を簡単に教えてもらった。

 妹のものを奪うものが好きな姉で、アザレアが長年好きだった男性を、彼女自身は結婚していたのに奪うような真似をしたのだそう。

 アザレアは素直な良い子だし、きっと傷付いたでしょうね…。
 でも、今となってはトーリのような婚約者が出来たのだから、良かったと思えているかもしれないけれど。
 
 あと、アズが言っていた、トーリのアザレアへの態度は面白いくらいにわかりやすかった。

「ルリ様、アズアルド殿下からの資料をお持ちしました」
「ありがとう」

 何の資料かと思ったけれど、今度、出席する予定のお茶会についての詳しい内容が書かれていたので、アザレアには見られないように受け取り、ソファーに座って目を通す事にした。

 せっかくなので、トーリに声を掛けておく。

「トーリ、時間があるなら、アザレアとお話してもいいわよ」
「ありがとうございます」
「いけません、ルリ様! 私は仕事中でございます!」
「主が良いと言っているのだから良いのよ。アズにお返事したいから、その返事を書き終わるまで待っててもらいたいし」

 アザレアは本当にそれで良いのか迷っていたみたいだけれど、トーリが話しかける。

「せっかくなんだし話そう。アザレアは元気だったか?」
「……はい。といっても、3日前にお会いしたじゃないですか」
「3日前だろ?」

 ちらりとトーリの顔を見ると、彼は普段は見せない優しい表情でアザレアを見つめていた。

 アザレアもなんだかんだと嬉しそうで、ニヤニヤといったら言葉が悪いけれど、笑みがこぼれてしまいそうなのを何とかこらえる。

 あまり、見ているのも失礼なので、資料に集中する事にした。
 やはり、マーニャ嬢とルピノは繋がっていて、私をマーニャ嬢が狙い、ルピノがアザレアを狙う事によって、お互いに関与せずに、私やアザレアという邪魔者を排除しようとしている感じで動いているみたいだった。

 ルピノは自分の執事を使って、アザレアと接触しようとしているみたいだけれど、ルピノ自身は家からは動いていない。

 偶然を装って、ルピノは何らかの形でアザレアに何かをしようとしていて、マーニャ嬢は私の事を傷付けようとしている。

 それが、今わかる事らしい。

 ルピノが考えそうな事といったら、私の顔に傷を付ける、もしくは貞操を奪わせるとかでしょうね。

 となると、私が1人にならなければ基本は大丈夫。
 ただ、お茶会の時はわざと1人になるべきかしら…。

 マーニャ嬢、キトロフ夫妻の事も恨んでいるようだから、お茶会で私が襲われる事により、キトロフ家の不祥事になるから、それも考えているのかも。

 トーリはマーニャ嬢を賢くないと言っていたから、そこまでの考えはない?

 難しいところね。

「ルリ様……」

 資料とにらめっこをしていた時間が長すぎたのか、アザレアが心配そうな顔で私に声をかけてきた。

「ごめんなさい。少し考え事をしてたの。もう、2人共満足した? って…、こんな短い時間じゃ満足なんかできないわよね?」
「ルリ様!」

 笑う私に、アザレアが顔を赤くして抗議してくる。
 トーリは苦笑して、アザレアを宥めたあと、私に言う。

「ルリ様、あまり、アザレアをからかわないで下さいね?」
「そうね。アザレア、からかったりしてごめんなさい」
「そんな! こちらこそ、ムキになってしまって申し訳ございません!」

 アザレアは、深々と頭を下げてきた。

 こんな良い子の姉なのに、マーニャ嬢はそんなに悪い人なのかしら?

 正直、トーリの話が信じられないところでもあったけれど、実際に目の前にして、私は彼の言っていた事が正しいと知る事になる。

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