価値がないと言われた私を必要としてくれたのは、隣国の王太子殿下でした

風見ゆうみ

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24 焦る下女

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「わ、私はこんな人達のことなんて知りません!」

 マーニャ嬢は必死の形相で叫んだ。

「彼らはお前に邸内に入れてもらったと言っているが?」
「メイドなんてたくさんいるんですから、私と他の女性を見間違えただけでしょう。人違いです」
「聞くが、お前はこの邸内のメイドで美しいのは誰だと思う?」

 キトロフ伯爵に尋ねられたマーニャ嬢は、不思議そうな顔をして、室内のほうに無言で顔を向けてきた。

「答えてくれ」
「邸内で一番美しいのは私ですが……」

 躊躇う様子もなく答えたマーニャ嬢に驚いた私だったけれど、キトロフ伯爵にとっては予想していた答えだったようだった。

「この男達が言うには、邸内に招き入れてくれたのは、メイドの中で1番美しかったと言うんだが、お前よりも他に美しいメイドがいるという事だな?」
「そんな人はいません!」

 マーニャ嬢はムキになって叫び、部屋の奥にいる男性達に向かって叫ぶ。

「私よりも美しいメイドがいるわけないでしょう!」
「だ……、だから、美しいメイドと言ったのですが……?」

 男性の一人がマーニャ嬢に向かって呟くように言った。

「だから、私じゃないって言ってるでしょう!? もっと違う言い方をしたらどうなの!? 二番目に美しかった女性とか……!?」

 ヒステリックに叫ぶマーニャ嬢に男性達は叫ぶ。

「俺達を中に入れたのはあんたですよ!」
「そうだ! どうして、あんただけ助かろうとしてるんですか!」
「楽な仕事だというから引き受けたのに! 相手が王太子妃になられるお方だって知っていたら引き受けていません!」
「私達は初対面なの! 今、初めて会ったのよ! 勝手なことを言わないでよ! あんた達みたいな小物だからこそ引き受けた仕事でしょ!?」

 マーニャ嬢は男性達に叫んだあと、キトロフ伯爵に向き直る。

「こんな男達の言い分を信じるおつもりですか!? 大体、私がどうして、ルリ様を狙わないといけないんですか!? 私と接点はありません!」
「ルリ様の侍女はアザレア嬢だが?」
「それくらいは知ってますわ。ですけど、私がルリ様を襲わせる意味がありますか? 別にアザレアに関係ないじゃないですか!」

 マーニャ嬢は自信満々といった表情でキトロフ伯爵を見る。

 そんな彼女からの視線を受けた、キトロフ伯爵は鼻で笑う。

「そうか? お前は気付いていないようだが、ルリ様に何かあれば、アザレア嬢は悲しむと思うが……?」
「あっ……!」

 そのことに今初めて気が付いたのか、マーニャ嬢は口を手でおさえた。

 たしか、マーニャ嬢はアザレアが悲しむ顔を見るのが好きだと聞いた。
 だから、私に何かあったら、アザレアはきっとショックを受けるだろうし、悲しい顔をするのは確かよね。

「お前はアザレアが不幸になることを望んでいるんだろう? それなら、ルリ様を狙ってもおかしくはない。もちろん、それが許されることではないが……」
「わ、私は何もしていません! 今、言われて気付いたんです! 私は本当にこの件に関しては無関係です!」
「邸内に関係のない人間を招き入れておいて、よくそんな事が言えるな」
「違います! 裏門が開いていて、見張りが誰もいなかったんですよ!」
「えらく、詳しい話をするんだな。それに、別に裏門だなんて言っていないが……?」

 マーニャ嬢はキトロフ伯爵に睨まれて、自分が失言した事に気付いて唇を噛む。

「マーニャ、君への罰は、詳しい話を聞かせてもらってから考えることにしよう」
「罰ってどういうことですか!? 私はすでに罰を受けているじゃないですか!」
「それは以前の罪についてだろう? この家に関係のない人間を招き入れ、ルリ様を傷つけようとした罪とは別だ」
「私はこの男性達とは無関係だと言っているじゃないですか!」
「お前が邸内にこの男達を招き入れているところは、他の使用人達が確認している」
「そんな、わかっていて何も言わなかったんですか!? 卑怯だわ!」

 キトロフ伯爵に言われたマーニャ嬢は意味のわからないことを叫んだ。





※次話はルピノ視点です。
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