【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ

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19 新たな問題

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「うわあ、たくさん来てますね!」

 サナトラから無事に帰国した日の翌日の朝、自室の書き物机の上に、たまりにたまった手紙の山を見て、振り分けてくれたエミリーさん達に感謝する。

「大変だったでしょう? ありがとうございました」
「とんでもない。それにリア様宛の方が、やはり多かったんです。ユーニ様はラス様を選ばれた、という噂が立っていたおかげで、これで済んだのかと思われますよ」

 エミリーさんが苦笑しながら教えてくれた。

「そっかあ、これでマシなのか」

 呟いた瞬間、手紙の山の一部が崩れ落ちる。

「あわわ?」

 崩れ落ちた中の一番上に置かれていた封筒を手に取ると、すでに中身を確認してくれていたのか、封が開いていた。

「これは」
「ユーニ様、それはラス様にお渡し願えますか?」

 エミリーさんが慌てた様子で言うので、逆に気になって尋ねる。

「ラス様宛なんですか?」
「あ、ええと」
「中身、見ますね」
「ユーニ様、いけません! あの、どなたからのお手紙かだけお伝えします!」

 エミリーさんはそう言って、手紙の差出人の名前を教えてくれた。
 その名前は、以前に聞いた事のある名前で、ラス様の因縁の人物の名前。
 中身を確認したいけど、怖いのでやめておいた。
 ちなみに、エミリーさん達がよけておいてくれたみたいだけど、ユウヤくんを好きな御令嬢からの呪いの手紙みたいなものもあったらしい。
 どんなものか気になるから見せてほしい、と頼んだけど却下されてしまった。
 ただ、二人ほど名前を教えてくれて、手紙も読ませてくれた。

 一人は、アネモネ・アンドリッシュ。
 マヌグリラの第一王女。
 サナトラとの戦争問題に出てきた彼女。
 自称、ユウヤくんの元カノ。

 もやっとするものもあるけど、ユウヤくん本人はきっぱりと否定してくれているし、元カノであったとしても、別に今は気にしなくて良いと思っている。
 ちなみにアネモネ王女からの手紙を読んでみたけど、書いてある内容がお子様すぎて、エミリーさんに彼女の年齢を聞いてみたら、今年で15歳で私より二つ年下だった。

 王女からの手紙以外に他もう一通と、ラス様に見せる手紙の3つを持って、リアの方はどうだったのか聞こうと思い、部屋に行ったら、騎士団の朝練に行ってると言われたので、ラス様に渡したい手紙もあるし、行ってみることにした。

 リアは毎日、行ける日は騎士団の朝練に出ていて、ユウヤくん達も朝は一緒にやっているから、ラス様もいると思ったんだけど。

「え、ラス様、一週間お休み?!」
「ああ。あいつ、移動中も仕事漬けだったから無理矢理休ませた」

 騎士団の朝練が終わるのを待ってから、ユウヤくんに事情を話すと、ラス様について、そう言われてしまった。
 
 ラス様、仕事しすぎだよ。

「ユウヤくん、えらいえらい」

 そんなラス様に気付いた、ユウヤくんを褒めてあげる。

「子供扱いすんな」
「褒めてるのに」
「もう子供じゃなくて男だぞ」

 頬に手を置かれて、ついついキスを受け入れそうになってしまって、すぐに気付く。

「人が見てる!」
「見てねぇだろ」

 ユウヤくんがそう言うので、視線を騎士団の人達がいる方に向けると、みんな一斉に私達から顔を背けた。

「絶対に見られてた!」

 ユウヤくんを突き飛ばすようにして放れて、騎士団の人の輪の中に、あの人がいないか探す。
 リアとユウマくんは見つけられた。 
 リアとは後でお手紙の話はするからいいとして。

 いた。

 紺色の猫っ毛の短髪。
 スラリとした体躯、汗にまみれているのに爽やかな印象を与える事ができる笑顔を持つ、カッコ良くて、なおかつ優しそうな青年の姿をとらえた。
 名前はジン・イッシュバルド。
 ラス様の弟で、イッシュバルド公爵家の三男に当たる。

「どうした?」
「ん。お休み中に悪いけど、ジンさんにラス様に会う手配をお願いできないかな、って」
「なんでラスなんだよ。オレじゃ駄目なのか?」
「んー」

 中身の事があるので見ていない私にはなんとも言えないから、アネモネ王女からの手紙と一緒に、因縁の彼女からの手紙をユウヤくんに渡す。

「手紙?」
「まず、こっちから見て」

 アネモネ王女の方の封筒を指差すと、中から手紙を取り出し、眉間にシワを寄せた。

「なんだよこれ」
「ユウヤくんは将来の約束をしたの?」
「してねぇよ!」
「なら嘘かあ」
「オレが結婚の約束をしたのはオマエだけだ」

 ぐしゃり、と手紙をにぎりつぶしてユウヤくんが言った。

 手紙には色々と書いてあって、自分は将来の約束をしていたから私が結婚するんだ、とか、ユウヤは私が好き、平民のくせに出しゃばるな、大して可愛くもないくせに、など、色々と王女様にしたら品の無いことが書かれていた。

 リアといると、だんだん私の神経も太くなってきていて、これくらいの罵詈雑言では気持ちが左右されなくなってしまった。
 まあ、面と向かって言われたわけじゃないからかもしれないけど。

「大丈夫か?」
「何が?」
「なんつーか、嫌な思いしてないか、って」

 ちょっと不安そうにしているユウヤくんに、笑顔をみせてから言う。

「結婚の約束とか、ユウヤくんはアネモネ王女が好きとか、そういうのは嘘なんだよね?」
「当たり前だろ」
「なら、いいよ。会ってもいない人に自分の悪口言われても気にしないよ」
「なら、良かった」

 ユウヤくんはホッとしたように笑ってから、ぐちゃぐちゃになってしまったアネモネ王女からの手紙を返してくれ、もう一通の手紙を開けた。

 見るからに普通の便箋で怪しい感じはないのだけど。

「なんだよ、これ」

 読み進めていけばいくほど、彼の表情がどんどんしぶくなっていき、差出人の名前を確認すると呟いた。

「あの女かよ」
「あの女って?」

 ユウヤくんに聞き返したのは、私ではなく、突然、背後から現れたリアだ。

「おはよう、リア。後で話したいことがあるんだけど」
「おはよ。わかった。私も話したいことあるし、ちょうど良かった。で?」

 リアが改めて尋ねると、ユウヤくんが答える。

「インダーリッド伯爵令嬢」
「え? もしかして、あの噂の?」

 リアが私の方を見て聞き返すので、頷いてから答える。

「手紙の内容は私は読んでないからわからなくて、エミリーさんがラス様に相談した方が良いって」

 差出人の名前は、バーベナ・インダーリッド伯爵令嬢。
 ラス様の元婚約者で、彼に盲目的に恋していて、それが逆に彼を女性が苦手な体質に変えてしまった。

「なんて、書いてあるの?」
「ほら」

 ユウヤくんは私に見えないようにするためか、リアの方に近付き、広げた手紙を見せる。

「うわあ。ポエムだよ」
「だな」
「え、なんなの気になる」
「ラス様が良いって言ったら見てもいいんじゃない?」
「絶対に見れないやつじゃない」

 口を尖らせて言うと、リアは私が持っていた、もう一通の手紙を指差して言った。

「あ、それ、私にも来てた」
「え、ほんとに?!」

 とある令嬢からのお茶会への招待状で、目立たせるためなのか、虹色の封筒で送られてきていた。

「これ、行くつもりか?」
「エミリーさん達はユウヤくんに相談しろって」

 虹色の封筒というだけで相手が誰だかわかったのか、ユウヤくんが言った。

「男は行けないよな」
「無理だろうね」
「味方は多いに越した事はねぇから、彼女にも招待状が来てるか確認してみろ」
「彼女って?」

 同時に聞き返すと、ユウヤくんが名前を上げた。

「レイブグル伯爵令嬢」
 
 ミランダ・レイブグル伯爵令嬢。
 私の友人であり、ラス様の弟であるジンさんの元婚約者。
 ラス様もジンさんも、なぜ元婚約者なのかというと、ある事件でイッシュバルド家の権威が落ちてしまい、令嬢側の親から破談にされてしまった。
 令嬢本人は破談を望んでなかったみたいだけど。

「何か問題あるの?」
「オレは詳しくは知らねぇんだけど、良い噂は聞かないな」
「なんか嫌な予感」

 私は虹色の封筒をながめて、ため息を吐いた。
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