【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ

文字の大きさ
41 / 53

41 マヌグリラの王子からの求婚

しおりを挟む
 結局、顔合わせという名目のパーティは今のところ、ユウヤくんとユウマくんに媚を売りたい、マヌグリラの貴族達のために開かれたの? と思うくらいひどいもので、貴族の二人への媚売りがすごかった。
 ぜひ、アダルシュで商売をしたい、とか、我が家の娘に一度だけでいいから会ってほしい、だとか、そりゃあもう数えだせば切りがないほど。
 私達は私達で御令嬢方に囲まれて、愛想笑いと相槌を繰り返していたけど、さすがに疲れてきたので、気分が優れないので少し休んでくる、と謝りを入れてから、私一人だけパーティ会場の外へ出た。

 雲がないからか、空を見上げるとたくさんの星がきらめいている。
 ぼんやり寝転びながらこんな景色を眺めたい、なんて思うけれど、ドレス姿では絶対に無理なので、とりあえず休めそうな場所を探して、外灯に照らされた道を歩くことにした。

 一体、本題の顔合わせ、というやつはいつ始まるんだろう。
 それに、アネモネ姫の言っていた事も気になる・・・。

 庭園の一部らしき石畳の道をコツコツとヒールの音を立てて歩いていくと、ガゼボがあるのが見え、そこへ歩を進める。
 が、その手前で足を止めた。
 なぜかというと、ガゼボにあるテーブルの上にランタンが置かれていて、人がいるのが見えたから。
 相手の人物も私に気がついたようで、座っていた椅子から立ち上がった。

 灯りに照らされて見えた少年は、タキシードに着られているといってもおかしくないくらい、幼い顔立ちで身長もそう高くない。
 そういう髪型なのか、黒髪の一部があちらこちらに跳ねていて、なんだか可愛らしい。

「僕、お前の事知ってる」

 タキシードを着ているくらいだから、今回のパーティに招待された人間の内の一人だろうけど、私はマヌグリラに知り合いはいない。
 だから、そうやって指をさされて言われても、相手が誰だか全く思い浮かばない。
 
「あ、あのユーニ・ブレーカーと申しますが」

 相手の名前を聞くには、まずは自分から、そう思い名乗ると、

「そうか。この姿では初めてだったな。僕がアルストロ・アンドリッシュだ」

 なぜか、彼は誇らしげにどーんと胸を張る。

 アルストロという事は、この国の第二王子。
 というか、じゃあこの人、私に求婚してきた人ってこと?
 なんでこんなところにいるの。
 
「どうしてこんなところにいるんだ?」

 私がまさしく彼に思っていた事を問われて、笑顔を作りながら答える。

「あの、ちょっと疲れてしまいまして、外の空気を吸いに」
「おお、そうなのか! それなら、ここに座れ!」
「は、はあ・・・・・」

 いや、あなたと一緒にいたら、もっと疲れそうな気がするんですが・・・。
 と、言いたいのは山々だけど、相手は王子様。
 しかも、私よりも年下の16歳。
 ここは大人の私が彼にあわせてあげないとね。

「失礼します」
「楽にしろ」

 すすめられた椅子に座ると、彼は満足そうな表情で私を見つめたあと、何か思い出したのか、「あ」と声を上げたあと、言葉を続ける。

「あのときは悪かったな」
「あのとき?」
「サナトラの王太子を襲撃した際、お前を殺そうとした」

 そんなのあったっけ?
 アスラン王太子殿下が命を狙われた、あの時だよね?
 少し考えてから、思い出す。
 そう言えばあった。
 アスラン王太子殿下が私を盾にした時、向かってきていたのは彼だったのか。
 まあ、あれはアスラン王太子殿下を狙ってただけなんだろうけど、前を見ずに突進してくるのはどうなの。
 というか、あんな状態でよく人を暗殺しようと思えたよね。
 逆に殺されててもおかしくないですよ。

「リアにやられた人ですね」

 なので、忠告の意味を込めて、きっぱりと告げた。

「リアって、第二王子妃か。第二王子妃が強すぎるんだよ」
「まだ、リアは妃殿下ではないですけど」
「お前は第一王子の婚約者だっけ」
「ですから、ここにいます」

 大人の余裕を見せつけるために、アルストロ殿下を見つめてにっこり微笑んでみる。
 するとなぜか、テーブルの上に肘をついていた彼の口がぽかんと大きく開いて固まった。

「ど、どうかされました?」
「い、いや、よく見ると、お前、思ったよりもその」
「何か?」

 首を傾げて聞き返すと、アルストロ殿下はなぜか照れくさそうに頬をかいてから話題を変えてきた。

「たしか、夫を募集してるんだよな?」
「してません」
「僕が立候補してやってもいいぞ」
「だから、募集なんてしてません」
「この僕が言ってやってるんだぞ!」

 なぜか必死な形相でテーブルから身を乗り出して言ってくるので、なんだか怖くなって、私はソッとイヤーカフを触る。

 ラス様、さっきは会場では見当たらなかったけど、帰ったわけじゃないよね?

「なんで! なんでこの僕が言ってやってるのにお願いしますって頭を下げないんだよ? ユウヤ殿下がそりゃあ顔が良いのは認める! けど、僕だって悪くはないはずだろ?」

 テーブルを乗り越えんばかりの勢いで近づいてくるから、椅子を後ろにさげて逃げる。
 ラス様を呼ぶか迷っていたけど、なんかヤバそうな気がしたから、やはり呼ぶことに決めて、イヤーカフに魔力を込めた。

「アルストロ殿下はとても魅力的だと思います」
「なら、どうして僕じゃ駄目なんだ?」
「駄目といいますか………」

 それにしても意味がわからない。
 いや、もちろんあなたも世間一般的に見ると素敵だとは思いますよ。
 ただ、もっと素敵な人が私の周りにはいるわけですよ。
 しかも、ユウヤくんとは別に。
 というか、私の男性への判断基準を勝手に顔にするのやめてもらえませんかね?

「ユーニさん?!」
「・・・・・・!」

 イヤーカフはこんな事を言ってはなんだけど、本当に便利だ。
 まあ、こんな事に使うためにくれたわけではないだろうけど、ある意味、今もピンチなわけだし。
 息を切らして駆け付けてくれたラス様の後ろにはユウヤくんもいた。
 二人は私の横にマヌグリラの第二王子がいるのを認めて、不思議そうな表情になる。

「ユウヤくん! ラス様!」

 私は二人の元に駆け寄ると、ラス様とユウヤくんの間に割って入り、彼らの片腕ずつをつかんで、アルストロ殿下に向かって言った。

「私にはこの二人がいますから」
「どういう事だよ?」

 ユウヤくんは困惑しているけど、ラス様は今の状況をなんとなくわかってくれたらしく、

「私の姫がお世話になったようで」

 アルストロ殿下に頭を下げた。

 私の姫、発言に少しドキリとしてしまったけど、平静を装って、ラス様に聞く。

「心配してくれました?」
「それはもちろん。ですから、ユウヤ殿下と駆けつけましたが?」
「ありがとうございます」

 とりあえず、アルストロ殿下に私とラス様の仲良しを見せつけて諦めさせる予定だったのに。

「なんで、そんな仲良くしてんだ」

 相変わらずの子供がいましたよ。
 普段なら可愛い、で済むけど、今は空気読んで!

 むすっとしたユウヤくんに、ラス様はため息を吐いたあと、アルストロ殿下に向かって尋ねる。

「彼女に何か?」
「求婚してやっていた」
「はあ?!」

 悪びれることなく答えるアルストロ殿下に、ラス様ではなくユウヤくんが聞き返した。

 これで今の状況はわかってもらえるかな?

「夫がもう一人必要なのだろう? 僕がなってやると言ってるのに」
「申し訳ありませんがアルストロ殿下、彼女はユウヤ殿下と私の婚約者です」
「お前が諦めたらいいだろう」

 不貞腐れた顔をするアルストロ殿下を責める事なく、ラス様は尋ねる。

「といいますか、どうして彼女を?」
「そうだよ。ユーニとはほとんど初対面だろ」

 ユウヤくんが私を庇うように前に出てくれた。
 すると、アルストロ殿下は視線を誰もいない所に向けながら、小さい声で言った。

「可愛かったから」

 ん?
 いま、なんて?

 聞き間違いかな、と思って、ユウヤくんとラス様を見ると、二人共、眉間に深いシワが出来ていた。

 そ、そんなに怒るほど、アルストロ殿下は的はずれな事を?!
 というか、可愛くなくてごめんなさい!

「だから僕と結婚してくれ!」
「駄目だ」
「駄目です」

 アルストロ殿下の求婚の返事は、なぜか私ではなく、ユウヤくんとラス様が答えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完 独身貴族を謳歌したい男爵令嬢は、女嫌い公爵さまと結婚する。

水鳥楓椛
恋愛
 男爵令嬢オードリー・アイリーンはある日父が負った借金により、大好きな宝石だけでは食べていけなくなってしまった。そんな時、オードリーの前に現れたのは女嫌いと有名な公爵エドワード・アーデルハイトだった。愛する家族を借金苦から逃すため、オードリーは悪魔に嫁ぐ。結婚の先に待ち受けるのは不幸か幸せか。少なくとも、オードリーは自己中心的なエドワードが大嫌いだった………。  イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―

喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。 そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。 二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。 最初は手紙も返ってきていたのに、 いつからか音信不通に。 あんなにうっとうしいほど構ってきた男が―― なぜ突然、私を無視するの? 不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、 突然ルイスが帰還した。 ボロボロの身体。 そして隣には――見知らぬ女。 勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、 私の中で何かが壊れた。 混乱、絶望、そして……再起。 すがりつく女は、みっともないだけ。 私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。 「私を簡単に捨てられるとでも? ――君が望んでも、離さない」 呪いを自ら解き放ち、 彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。 すれ違い、誤解、呪い、執着、 そして狂おしいほどの愛―― 二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。 過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

恐怖侯爵の後妻になったら、「君を愛することはない」と言われまして。

長岡更紗
恋愛
落ちぶれ子爵令嬢の私、レディアが後妻として嫁いだのは──まさかの恐怖侯爵様! しかも初夜にいきなり「君を愛することはない」なんて言われちゃいましたが? だけど、あれ? 娘のシャロットは、なんだかすごく懐いてくれるんですけど! 義理の娘と仲良くなった私、侯爵様のこともちょっと気になりはじめて…… もしかして、愛されるチャンスあるかも? なんて思ってたのに。 「前妻は雲隠れした」って噂と、「死んだのよ」って娘の言葉。 しかも使用人たちは全員、口をつぐんでばかり。 ねえ、どうして?  前妻さんに何があったの? そして、地下から聞こえてくる叫び声は、一体!? 恐怖侯爵の『本当の顔』を知った時。 私の心は、思ってもみなかった方向へ動き出す。 *他サイトにも公開しています

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...