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14 ちょっと本当にやめて!!
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※食事中や虫が本当に苦手な方は気分が悪くなるかもしれませんので、ご遠慮ください。
「ど、どうして俺がそんなものを飲まないといけないんだ!? 大体、お前は誰なんだ!?」
ノマド男爵の言葉を聞いて、彼の周囲にいた人間は驚きの表情を浮かべた。
そりゃそうでしょう。
時の人であるイーサンを知らないだなんて驚くわよね。
戦争を終戦に導いた功労者だし、辺境伯の座につく次男は珍しいから、余計に注目されている。
だから、彼のことを今まで知らなかった人間も彼を調べてきているはず。
なのに、ノマド男爵は知らないらしい。
世間に疎いのかしら?
ほとんどのパーティーに呼ばれていないみたいだし、情報を仕入れられてないのかもしれないわね。
「俺はイーサン・ジュードだけど。クレア、俺はいつになったら皆に顔や名前を覚えてもらえるんだろう」
「イーサン。普通の人はあなたのことを知ってるわ。その人は賢くない人なの」
「頭が悪いのか?」
「ううん。そっちじゃなくて常識がないほうよ?」
「そうか。常識がないから、あんなことをしたんだな?」
イーサンは悲しげな顔をしたあと、ノマド男爵の胸元に虫の入ったグラスを押し付ける。
「早く飲んでくれ。そうすれば皆が笑うんだろう? 皆が笑うのは良いことだ。ぜひ、その瞬間を見せてくれ」
「な、なんで俺が……」
「早く証明して見せてくれ。クレアはこの虫が大嫌いだから見たくないはずなんだ。風呂上がりのタオル1枚で部屋を飛び出すくらいに嫌いなんだ」
余計なエピソードを言うな。
心の中でツッコミを入れてからイーサンを睨む。
「だから、早くどっかにやらないと…」
心配そうな顔をして、イーサンが彼を睨んでいる私を見てくる。
私が、風呂場の時のように、またパニックになって暴れると思ってるのかしら?
「別にこの会場から飛び出していかないから」
「良かった。飛び出していったら追いかけないといけないから、こいつをどうしようかと思ったんだ。ん? これ、あ! クレア! これ見てくれ!」
「ひいぃっ! 近寄らないでよ! あっち行きなさい!」
「そんな俺を犬みたいに…」
イーサンが元々の目的を忘れて、こっちに来ようとするもんだから、このスキに逃げようとしているノマド男爵を指差す。
「イーサン! ノマド男爵が逃げるわよ!!」
「あ! 待て! おい!」
イーサンはすぐに追いかけて、ノマド男爵の首根っこをつかまえると、彼の口の中にグラスの中身を突っ込んだ。
そこまでやれとは言ってない!
でも、これくらいしないと駄目なのかしら?
「あああああっ」
ノマド男爵は叫んで、口に入ったものをその場で吐き出した。
例の虫はご臨終しているので、彼の口からぼとんと床に落ちただけで、ピクリともしない。
「ほらな? 全然面白くないだろ?」
イーサンは悲しげにノマド男爵を見つめて首を傾げる。
すると、ノマド男爵が涙目になりながら叫んだ。
「こんなものは人にやるから面白いんだ! 自分がやられたって面白いわけないだろ!」
「それは皆そうだろう。ただ、あなたの反応は全く面白くない。俺が面白いと思うまで付き合ってもらおう」
「ひぃっ!」
ノマド男爵の悲鳴の後は、私が直視していられず背中を向けてしまったので、どんな状況なのか詳しくはよくわからないが、イーサンはノマド男爵があれを吐き出しては拾って、ハンカチで拭いて綺麗にして、また彼の口に入れるという行動を繰り返したようだ。
もちろん、イーサンは白手袋をしているので素手ではない。
「た、助けてくれ!」
「もう懲りたのか?」
やっと終わりそうなので、イーサン達の方に振り返ると、イーサンがご臨終されているそれをジャケットの胸ポケットから取り出したハンカチで優しく包むと、ノマド男爵のタキシードの上着のポケットに詰め込んだ。
「この虫も可哀想に。ちゃんと供養してあげてくれ。この会場で捨てたりしようものなら、俺はどこまでもあなたを追いかけるぞ。名前はわかってるんだからな」
イーサンは真剣に怒っているようで、ノマド男爵にそう言うと、彼の胸を強く押して言う。
「不愉快だから帰れ」
「な、なんだと!?」
「ちょっと何の騒ぎなんですか!? ……って、素敵な男性」
人だかりをかきわけて現れたのは、ノマド男爵の娘らしき人だった。
ちなみに、リアム様の奥様のアイリス様ではなく、妹のほうだと思われる。
名前は……、わからない。
だって、覚えなくても良いリストの人だもの!
妹は目をキラキラさせ、イーサンを見つめて続ける。
「あの、お付き合いされてる方っていらっしゃいます?」
あ、嫌な予感がする。
そう思って踵を返し、イーサン達から慌てて離れる。
「いきなりなんなんだ? 俺にはクレアという婚約者がいるし、俺は彼女が大好きだ! 紹介しよう、あれ? クレア?」
なんとか人混みにまぎれて彼から見えなくなったようで、助かった……と思ったんだけど。
「どうしよう! クレアが迷子になった! 大変だ! クレアを探さないと! 誰か、クレアを知りませんか! 1人でフラフラどこかに行ってしまったんです!」
ちょっと本当にやめて!!
「ど、どうして俺がそんなものを飲まないといけないんだ!? 大体、お前は誰なんだ!?」
ノマド男爵の言葉を聞いて、彼の周囲にいた人間は驚きの表情を浮かべた。
そりゃそうでしょう。
時の人であるイーサンを知らないだなんて驚くわよね。
戦争を終戦に導いた功労者だし、辺境伯の座につく次男は珍しいから、余計に注目されている。
だから、彼のことを今まで知らなかった人間も彼を調べてきているはず。
なのに、ノマド男爵は知らないらしい。
世間に疎いのかしら?
ほとんどのパーティーに呼ばれていないみたいだし、情報を仕入れられてないのかもしれないわね。
「俺はイーサン・ジュードだけど。クレア、俺はいつになったら皆に顔や名前を覚えてもらえるんだろう」
「イーサン。普通の人はあなたのことを知ってるわ。その人は賢くない人なの」
「頭が悪いのか?」
「ううん。そっちじゃなくて常識がないほうよ?」
「そうか。常識がないから、あんなことをしたんだな?」
イーサンは悲しげな顔をしたあと、ノマド男爵の胸元に虫の入ったグラスを押し付ける。
「早く飲んでくれ。そうすれば皆が笑うんだろう? 皆が笑うのは良いことだ。ぜひ、その瞬間を見せてくれ」
「な、なんで俺が……」
「早く証明して見せてくれ。クレアはこの虫が大嫌いだから見たくないはずなんだ。風呂上がりのタオル1枚で部屋を飛び出すくらいに嫌いなんだ」
余計なエピソードを言うな。
心の中でツッコミを入れてからイーサンを睨む。
「だから、早くどっかにやらないと…」
心配そうな顔をして、イーサンが彼を睨んでいる私を見てくる。
私が、風呂場の時のように、またパニックになって暴れると思ってるのかしら?
「別にこの会場から飛び出していかないから」
「良かった。飛び出していったら追いかけないといけないから、こいつをどうしようかと思ったんだ。ん? これ、あ! クレア! これ見てくれ!」
「ひいぃっ! 近寄らないでよ! あっち行きなさい!」
「そんな俺を犬みたいに…」
イーサンが元々の目的を忘れて、こっちに来ようとするもんだから、このスキに逃げようとしているノマド男爵を指差す。
「イーサン! ノマド男爵が逃げるわよ!!」
「あ! 待て! おい!」
イーサンはすぐに追いかけて、ノマド男爵の首根っこをつかまえると、彼の口の中にグラスの中身を突っ込んだ。
そこまでやれとは言ってない!
でも、これくらいしないと駄目なのかしら?
「あああああっ」
ノマド男爵は叫んで、口に入ったものをその場で吐き出した。
例の虫はご臨終しているので、彼の口からぼとんと床に落ちただけで、ピクリともしない。
「ほらな? 全然面白くないだろ?」
イーサンは悲しげにノマド男爵を見つめて首を傾げる。
すると、ノマド男爵が涙目になりながら叫んだ。
「こんなものは人にやるから面白いんだ! 自分がやられたって面白いわけないだろ!」
「それは皆そうだろう。ただ、あなたの反応は全く面白くない。俺が面白いと思うまで付き合ってもらおう」
「ひぃっ!」
ノマド男爵の悲鳴の後は、私が直視していられず背中を向けてしまったので、どんな状況なのか詳しくはよくわからないが、イーサンはノマド男爵があれを吐き出しては拾って、ハンカチで拭いて綺麗にして、また彼の口に入れるという行動を繰り返したようだ。
もちろん、イーサンは白手袋をしているので素手ではない。
「た、助けてくれ!」
「もう懲りたのか?」
やっと終わりそうなので、イーサン達の方に振り返ると、イーサンがご臨終されているそれをジャケットの胸ポケットから取り出したハンカチで優しく包むと、ノマド男爵のタキシードの上着のポケットに詰め込んだ。
「この虫も可哀想に。ちゃんと供養してあげてくれ。この会場で捨てたりしようものなら、俺はどこまでもあなたを追いかけるぞ。名前はわかってるんだからな」
イーサンは真剣に怒っているようで、ノマド男爵にそう言うと、彼の胸を強く押して言う。
「不愉快だから帰れ」
「な、なんだと!?」
「ちょっと何の騒ぎなんですか!? ……って、素敵な男性」
人だかりをかきわけて現れたのは、ノマド男爵の娘らしき人だった。
ちなみに、リアム様の奥様のアイリス様ではなく、妹のほうだと思われる。
名前は……、わからない。
だって、覚えなくても良いリストの人だもの!
妹は目をキラキラさせ、イーサンを見つめて続ける。
「あの、お付き合いされてる方っていらっしゃいます?」
あ、嫌な予感がする。
そう思って踵を返し、イーサン達から慌てて離れる。
「いきなりなんなんだ? 俺にはクレアという婚約者がいるし、俺は彼女が大好きだ! 紹介しよう、あれ? クレア?」
なんとか人混みにまぎれて彼から見えなくなったようで、助かった……と思ったんだけど。
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