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13 そっちがいいんじゃない?
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今すぐではないけれど、次期辺境伯が長男のイライジャ様ではなくイーサンになるという話は、社交界の間ですぐに広まった。
そのため、今のうちにイーサンと繋がりを持っておこうと考える人間が増え、イーサンは今までとは打って変わって、たくさんの人から夜会に招待されるようになった。
招待されたからといって行く、行かないかは、イーサンが決めること……、いや、私が決めることなので、ほとんど出席はしていない。
アビゲイル様が社交場に詳しく、食べ物はどこの貴族の夜会が美味しかったなど教えてくれるので、料理が美味しいと絶賛されている貴族の夜会と立場的に断りにくい辺境伯以上の貴族の夜会にだけ行くことにした。
ちなみにイーサンのらぶらぶ大作戦に関しては、見事に空回りで終わっている。
必死に何かの本を読み込んでいるけれど、彼が言うように、私は普通の女性ではないので、普通の女性をオトす本を読んでも全く意味がないということに気付かないイーサンはバカなのかしら…。
それとも恋愛に疎いだけ?
いや、純粋すぎる?
というか、イーサンが読んでいる本が、私相手には役に立たないということを教えてあげてほしい。
私が教えると、どの本を読んだらいいのか聞いてきそうなので、面倒だから教えたくない。
「クレア、黙り込んでどうした? お腹がへったのか?」
今日は料理が美味しいと評判の夜会に、イーサンと一緒に出席していて、会場の端のほうでぼんやりと考えていたら、イーサンが話しかけてきた。
「違います。色々と考え事をしていただけよ」
「そうか。そういえば、さっき、俺の婚約者だったアバンダル伯爵令嬢を見たぞ。あと、ムートー子爵も。子爵は俺を見たら逃げていったけど、アバンダル伯爵令嬢は何か言いたげにしていたが無視してしまった」
「それが賢いわ」
そう答えて、イーサンが持ってきてくれた果実ジュースを一口飲んだ時だった。
「きゃあっ!」
女性の悲鳴が聞こえたので、そちらの方向に身体を向けると、ピンク色のドレスを着た女性がパートナーらしき若い男性にしがみついていた。
しがみつかれた男性が中年の男性に向かって怒る。
「飲み物にわざわざ虫を入れるなんてひどいじゃないか!」
「ただのイタズラじゃないか。そうカッカしなさんな。こっちは娘がマオニール公爵家に嫁にいったんだぞ!」
娘がマオニール公爵に嫁にいった?
私とイーサンは顔を見合わせる。
「マオニール公爵って……」
「ということは、あの人はリアムの奥様のご家族か?」
「……かもしれないわね。社交場に呼ばれなくなったと聞いてたんだけど……」
「どうかしたのか?」
「リアム様達と揉めたらしいわよ」
そう答えてから、今日の主催者は、マオニール家と同じ派閥ではないことに気が付いた。
わざと、ここに呼んで、マオニール家の名を傷付けたいのかも?
「揉めたって、何をしたんだろう?」
「あの人、というか、あの家族、イタズラだとか言って、人の嫌がることをして楽しんでるのよ。今も女性の飲んでいたグラスに虫を入れたみたいね」
イーサンと話をしている内に、ノマド男爵と嫌がらせをされた女性達との話がついたのか、男性はショックを受けている女性を連れて、どこかへ行ってしまった。
ちなみに、グラスに入れられていた虫は、私が特に大嫌いな虫だった。
「あんなもの入れるなんて、私だったら、男爵をぶん殴る……って、イーサン!?」
気が付くと、隣りにいたイーサンがいなくなっていて焦る。
「なんで、あんなことをするんだ?」
「は? なんだお前は!?」
イーサンの声が聞こえて、声が聞こえてきた方向に目を向けると、いつの間にか、ノマド男爵の前にいて彼に話しかけていた。
「なぜ、あんなことをしたんだ。彼女に恨みでもあったのか!? 可哀想に。あの女性は泣いていたじゃないか!」
「イタズラだよ、イタズラ! どうして笑わないんだ! 間抜けな顔をして驚いている顔を見てたら面白いだろう? お前もどうして笑わないんだよ!」
「面白くなんかないからだ」
イーサンは強い口調で答えると、私を見て尋ねてくる。
「この人はランキングは何位くらいになる?」
なんのランキングかわからなくて、一瞬戸惑ったけど、彼に伝えてるランキングは1つだ。
「よくわからないけど、2位くらいかしらね。でも、こらしめてもいいかも? まあ、ボコボコ以外にやり方があるなら、そっちがいいんじゃない?」
どうするつもりなのかはわからないけど、私がそう答えるとイーサンは頷いた。
そして、先程、問題になっていたグラスを持って、会場から出ていこうとしていたボーイの所まで走っていき、そのグラスを持って戻ってくると、ノマド男爵に差し出した。
「俺のイタズラだ。だから飲んでくれ」
どういうイタズラなのかはわからないけれど、真剣な表情で言うイーサンを、とりあえず見守ることにした。
そのため、今のうちにイーサンと繋がりを持っておこうと考える人間が増え、イーサンは今までとは打って変わって、たくさんの人から夜会に招待されるようになった。
招待されたからといって行く、行かないかは、イーサンが決めること……、いや、私が決めることなので、ほとんど出席はしていない。
アビゲイル様が社交場に詳しく、食べ物はどこの貴族の夜会が美味しかったなど教えてくれるので、料理が美味しいと絶賛されている貴族の夜会と立場的に断りにくい辺境伯以上の貴族の夜会にだけ行くことにした。
ちなみにイーサンのらぶらぶ大作戦に関しては、見事に空回りで終わっている。
必死に何かの本を読み込んでいるけれど、彼が言うように、私は普通の女性ではないので、普通の女性をオトす本を読んでも全く意味がないということに気付かないイーサンはバカなのかしら…。
それとも恋愛に疎いだけ?
いや、純粋すぎる?
というか、イーサンが読んでいる本が、私相手には役に立たないということを教えてあげてほしい。
私が教えると、どの本を読んだらいいのか聞いてきそうなので、面倒だから教えたくない。
「クレア、黙り込んでどうした? お腹がへったのか?」
今日は料理が美味しいと評判の夜会に、イーサンと一緒に出席していて、会場の端のほうでぼんやりと考えていたら、イーサンが話しかけてきた。
「違います。色々と考え事をしていただけよ」
「そうか。そういえば、さっき、俺の婚約者だったアバンダル伯爵令嬢を見たぞ。あと、ムートー子爵も。子爵は俺を見たら逃げていったけど、アバンダル伯爵令嬢は何か言いたげにしていたが無視してしまった」
「それが賢いわ」
そう答えて、イーサンが持ってきてくれた果実ジュースを一口飲んだ時だった。
「きゃあっ!」
女性の悲鳴が聞こえたので、そちらの方向に身体を向けると、ピンク色のドレスを着た女性がパートナーらしき若い男性にしがみついていた。
しがみつかれた男性が中年の男性に向かって怒る。
「飲み物にわざわざ虫を入れるなんてひどいじゃないか!」
「ただのイタズラじゃないか。そうカッカしなさんな。こっちは娘がマオニール公爵家に嫁にいったんだぞ!」
娘がマオニール公爵に嫁にいった?
私とイーサンは顔を見合わせる。
「マオニール公爵って……」
「ということは、あの人はリアムの奥様のご家族か?」
「……かもしれないわね。社交場に呼ばれなくなったと聞いてたんだけど……」
「どうかしたのか?」
「リアム様達と揉めたらしいわよ」
そう答えてから、今日の主催者は、マオニール家と同じ派閥ではないことに気が付いた。
わざと、ここに呼んで、マオニール家の名を傷付けたいのかも?
「揉めたって、何をしたんだろう?」
「あの人、というか、あの家族、イタズラだとか言って、人の嫌がることをして楽しんでるのよ。今も女性の飲んでいたグラスに虫を入れたみたいね」
イーサンと話をしている内に、ノマド男爵と嫌がらせをされた女性達との話がついたのか、男性はショックを受けている女性を連れて、どこかへ行ってしまった。
ちなみに、グラスに入れられていた虫は、私が特に大嫌いな虫だった。
「あんなもの入れるなんて、私だったら、男爵をぶん殴る……って、イーサン!?」
気が付くと、隣りにいたイーサンがいなくなっていて焦る。
「なんで、あんなことをするんだ?」
「は? なんだお前は!?」
イーサンの声が聞こえて、声が聞こえてきた方向に目を向けると、いつの間にか、ノマド男爵の前にいて彼に話しかけていた。
「なぜ、あんなことをしたんだ。彼女に恨みでもあったのか!? 可哀想に。あの女性は泣いていたじゃないか!」
「イタズラだよ、イタズラ! どうして笑わないんだ! 間抜けな顔をして驚いている顔を見てたら面白いだろう? お前もどうして笑わないんだよ!」
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「この人はランキングは何位くらいになる?」
なんのランキングかわからなくて、一瞬戸惑ったけど、彼に伝えてるランキングは1つだ。
「よくわからないけど、2位くらいかしらね。でも、こらしめてもいいかも? まあ、ボコボコ以外にやり方があるなら、そっちがいいんじゃない?」
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そして、先程、問題になっていたグラスを持って、会場から出ていこうとしていたボーイの所まで走っていき、そのグラスを持って戻ってくると、ノマド男爵に差し出した。
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