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47 状況を整理する午後②
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リュカは私を連れて書き物机のほうに移動し、書き物机の椅子に私を座らせた。
そのため、リュカは立ったまま腰を折り、机の上に置いた紙の上にペンで文字を走らせていく。
『
時間を戻す前:兄さんとティナ様の場合
兄さん、もしくはソフィー様がティナ様に殺意を覚えて、トロット公爵家に殺害を依頼。俺に罪を着せさせるつもりだった。
結果、ティナ様が殺されて俺が捕まる。
俺に罪を着せようとしたのは、ソフィー様たちの指示?
証拠不十分で牢から出してもらえなかったのは、ソフィー様たちの妨害があった可能性がある。
俺がティナ様にフラれたなど、嘘の証言をした可能性もあり、犯行動機を作ったのかもしれない。
国民感情を配慮して、俺の命を守るためにも牢に入れていた可能性もある。
外に出れば、ティナ様を思う国民から狙われる可能性があった。
俺の命を守るために無実だと証明されるまでは、牢に入れられていた?
時間を戻した後:
ソフィー様もしくは兄さんがティナ様の殺害をトロット公爵家に依頼。俺に罪を着せるつもりが、その場に現れなかったため殺害を断念。
結果、ティナ様は回復してリリーと知り合う。
共通点:ソフィー様は俺を王太子の座から引きずり下ろし、兄さんに継がせたい?
』
「こんな感じか?」
「ええ。私もそうだと思うわ」
「次はリリーの方だな」
私が頷くと、リュカは新たに紙に文字を書いていく。
『
時間が戻る前:リリーとアルカ公爵令嬢
トロット公爵の依頼で、エマロン家はリリーに恨みがあるテレサ嬢を使い、アルカ公爵令嬢のお茶に毒を入れさせる。
トロット公爵家はアルカ公爵に解毒薬を渡して交渉材料にしようとした?
エマロン家は金につられた可能性あり。
(これについては仮説。時間が巻き戻る前のため、確認が取れない)
時間が巻き戻った後:
現在のところはまだ何も起きていない。
だが、時間が巻き戻る前は知り合っていなかったはずのアルカ公爵令嬢とリリーが知り合いになっている。
共通点:
タイディ家とエマロン家のつながり。
テレサ嬢とエマロン卿は恋愛関係にあった。
』
リュカはそこまで書き終えると、ペンを机の上に置いた。
「時間を巻き戻す前の記憶とこんがらがってしまいそうだから書いてみたんだが」
「そうね。私もどっちがどっちだかわからなくなるわ。その情景を思い浮かべれば相手の様子でどちらかの時かわかるのだけれど」
両方とも私の中では起きた出来事だから、時間が巻き戻る前か巻き戻った後の現在に起きたことなのか、わからなくなってしまうのよね。
「とにかく、これから俺たちが安全に暮らしていくにはどうしたら良いかだが」
「やっぱり、大元をどうにかしないといけないわよね」
「ああ。そうしない限り、あの手この手を使って、兄さんたちはティナ様に、テレサ嬢はリリーに接触してこようとするだろう」
「嫌になるわ」
「とにかく1番にやることは決まってる」
「何なの?」
何をするのかわからなくて尋ねてみると、リュカは笑顔で答える。
「テレサ嬢とエマロン卿を潰しにかかろう。彼らは末端だが過去では君を処刑という形で殺そうとしたし、現在だって君をどこかへ売り飛ばそうとした。それに彼らを潰すのが今の時点では1番簡単だ。正確に言えばタイディ家とエマロン家だけど」
「……ありがとう、リュカ」
「お礼を言われることじゃない」
リュカは私の頭を優しく撫でて微笑んだ。
ドキドキしている場合じゃないとわかっているけれど、この笑顔を見てドキドキしないなんて無理だわ。
頬が赤くなってるのか、リュカは不思議そうな顔で熱くなっている私の頬に触れた。
「……リュカ?」
「リリー」
リュカに至近距離で見つめられ、彼の瞳に吸い寄せられるかの様な感覚を覚えた。
「リュカ殿下、そろそろティータイムの時間ですのでよろしければ、リリーと一緒に我が家のティールームにいらっしゃいませんか?」
ノックの音と共に、お父様の声が聞こえた。
リュカは私の頬から手を離して、慌てて返事をする。
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」
お父様の足音が聞こえなくなってから、リュカが苦笑する。
「毎回、こんなのばかりだな」
リュカは固まっている私の額に自分の額を当てると続ける。
「今日は諦めるけど、次は邪魔されても続きをしてもいいか?」
「……その、状況によっては断るかもしないけど、2人きりだと言うなら、もちろん、はい、よ」
自分で言ったのに頬が熱くなった。
そんな私を見て、リュカは嬉しそうに笑った。
*****
それから数日後、エマロン家とタイディ家の家宅捜索が決まった。
私の拉致未遂を理由にした。
当日までは秘密裏に進められているはずだった。
それは、放課後の学園でリアラ様とティナ様と一緒に馬車の乗降場に向かっていた時に起きた。
「あんたを絶対に許さない」
目の前に立ちはだかったのは、目を血走らせたテレサだった。
そのため、リュカは立ったまま腰を折り、机の上に置いた紙の上にペンで文字を走らせていく。
『
時間を戻す前:兄さんとティナ様の場合
兄さん、もしくはソフィー様がティナ様に殺意を覚えて、トロット公爵家に殺害を依頼。俺に罪を着せさせるつもりだった。
結果、ティナ様が殺されて俺が捕まる。
俺に罪を着せようとしたのは、ソフィー様たちの指示?
証拠不十分で牢から出してもらえなかったのは、ソフィー様たちの妨害があった可能性がある。
俺がティナ様にフラれたなど、嘘の証言をした可能性もあり、犯行動機を作ったのかもしれない。
国民感情を配慮して、俺の命を守るためにも牢に入れていた可能性もある。
外に出れば、ティナ様を思う国民から狙われる可能性があった。
俺の命を守るために無実だと証明されるまでは、牢に入れられていた?
時間を戻した後:
ソフィー様もしくは兄さんがティナ様の殺害をトロット公爵家に依頼。俺に罪を着せるつもりが、その場に現れなかったため殺害を断念。
結果、ティナ様は回復してリリーと知り合う。
共通点:ソフィー様は俺を王太子の座から引きずり下ろし、兄さんに継がせたい?
』
「こんな感じか?」
「ええ。私もそうだと思うわ」
「次はリリーの方だな」
私が頷くと、リュカは新たに紙に文字を書いていく。
『
時間が戻る前:リリーとアルカ公爵令嬢
トロット公爵の依頼で、エマロン家はリリーに恨みがあるテレサ嬢を使い、アルカ公爵令嬢のお茶に毒を入れさせる。
トロット公爵家はアルカ公爵に解毒薬を渡して交渉材料にしようとした?
エマロン家は金につられた可能性あり。
(これについては仮説。時間が巻き戻る前のため、確認が取れない)
時間が巻き戻った後:
現在のところはまだ何も起きていない。
だが、時間が巻き戻る前は知り合っていなかったはずのアルカ公爵令嬢とリリーが知り合いになっている。
共通点:
タイディ家とエマロン家のつながり。
テレサ嬢とエマロン卿は恋愛関係にあった。
』
リュカはそこまで書き終えると、ペンを机の上に置いた。
「時間を巻き戻す前の記憶とこんがらがってしまいそうだから書いてみたんだが」
「そうね。私もどっちがどっちだかわからなくなるわ。その情景を思い浮かべれば相手の様子でどちらかの時かわかるのだけれど」
両方とも私の中では起きた出来事だから、時間が巻き戻る前か巻き戻った後の現在に起きたことなのか、わからなくなってしまうのよね。
「とにかく、これから俺たちが安全に暮らしていくにはどうしたら良いかだが」
「やっぱり、大元をどうにかしないといけないわよね」
「ああ。そうしない限り、あの手この手を使って、兄さんたちはティナ様に、テレサ嬢はリリーに接触してこようとするだろう」
「嫌になるわ」
「とにかく1番にやることは決まってる」
「何なの?」
何をするのかわからなくて尋ねてみると、リュカは笑顔で答える。
「テレサ嬢とエマロン卿を潰しにかかろう。彼らは末端だが過去では君を処刑という形で殺そうとしたし、現在だって君をどこかへ売り飛ばそうとした。それに彼らを潰すのが今の時点では1番簡単だ。正確に言えばタイディ家とエマロン家だけど」
「……ありがとう、リュカ」
「お礼を言われることじゃない」
リュカは私の頭を優しく撫でて微笑んだ。
ドキドキしている場合じゃないとわかっているけれど、この笑顔を見てドキドキしないなんて無理だわ。
頬が赤くなってるのか、リュカは不思議そうな顔で熱くなっている私の頬に触れた。
「……リュカ?」
「リリー」
リュカに至近距離で見つめられ、彼の瞳に吸い寄せられるかの様な感覚を覚えた。
「リュカ殿下、そろそろティータイムの時間ですのでよろしければ、リリーと一緒に我が家のティールームにいらっしゃいませんか?」
ノックの音と共に、お父様の声が聞こえた。
リュカは私の頬から手を離して、慌てて返事をする。
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」
お父様の足音が聞こえなくなってから、リュカが苦笑する。
「毎回、こんなのばかりだな」
リュカは固まっている私の額に自分の額を当てると続ける。
「今日は諦めるけど、次は邪魔されても続きをしてもいいか?」
「……その、状況によっては断るかもしないけど、2人きりだと言うなら、もちろん、はい、よ」
自分で言ったのに頬が熱くなった。
そんな私を見て、リュカは嬉しそうに笑った。
*****
それから数日後、エマロン家とタイディ家の家宅捜索が決まった。
私の拉致未遂を理由にした。
当日までは秘密裏に進められているはずだった。
それは、放課後の学園でリアラ様とティナ様と一緒に馬車の乗降場に向かっていた時に起きた。
「あんたを絶対に許さない」
目の前に立ちはだかったのは、目を血走らせたテレサだった。
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