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48 あなたと出会えたから①
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「許せない! どうして親子揃って、私たちの人生を狂わせようとするのよ!」
「……何を言ってるの?」
事情を知らないリアラ様が眉根を寄せて尋ねると、テレサは叫ぶ。
「うるさいわね! 平民のあんたに答える必要はないわよ!」
リアラ様は他国の辺境伯令嬢だし、ティナ様のお兄様の婚約者なんだけれど、表沙汰にしていないから、テレサは平民だと思い込んだみたい。
「テレサ、あなた馬鹿なの? お母様とあなたのお父様が結婚していたら、私もあなたも生まれていないわよ。どうして離婚になったのか、ちゃんとあなたのお母様に確認したの?」
「……してないわ! だって会えてないんだもの!」
テレサが泣きながら叫ぶ。
この件については、私のお母様がテレサのお母様と話をしてくれていた。
「別れた理由はあなたのお父様の言動が原因よ」
「……どういうこと?」
「あなたのお父様が何かと細かく行動を馬鹿にしてくるから別れた。ただ、それだけの理由。あなたをお父様のところへ置いていったのは、そのほうが裕福に暮らせるからよ」
「じゃあ、どうしてお母様は私と連絡を取ってくれなかったの!?」
「あなたのお父様が、あなたを幸せにしたいのなら、母親の存在を忘れさせなければならないと言ったから。連絡をとらせないようにしていたらしいわ」
「……そんな」
テレサはショックを受けたような顔をした。
でもすぐに、私を睨みつけて叫ぶ。
「そんなの嘘よ!」
テレサは小さなナイフを両手に持ち、私に向かって突進してきた。
「馬鹿なことはやめなさい」
リアラ様はそう言うと、私の前に出てテレサの手を掴んで捻り上げた。
「痛いっ!」
テレサの手からナイフが落ちると、リアラ様はそれを人がいない方向に蹴った。
そして、暴れにくくするようにか、彼女を廊下に倒し、手を後ろに回させて背中を押さえつけた。
私たちの様子を見ていた生徒が先生を呼びに行くと言って走っていく。
「テレサ、あなたのことは気の毒だと思うけれど、やってはいけないことをしようとしたの。あなたには罪を償ってもらうわ」
廊下に押さえつけられたテレサを見下ろして、私は冷たい口調で言った。
あなたには記憶はないかもしれない。
でも、あなたは私を殺そうとした。
今だってそう。
私はあなたを殺したいとまでとは思わないけれど、多少、痛い思いはしてもらわないといけないと思っている。
人の命を奪おうとする行為は、どんなやり方であっても絶対に良くないからだ。
*****
テレサは警察に連れて行かれ、厳しい尋問を受けたそうだ。
そして、その厳しさに耐えられなかった彼女は自分の関わったことすべてを白状した。
私にナイフを向けたのは、どうせ捕まるなら、私を殺してしまおうというヤケクソな気持ちが悪いだったらしい。
そして、誰からその情報を聞いたのかも教えてくれた。
そのため、タイディ家だけでなくエマロン家も捕まった。
アイザックはテレサのために悪事を働いていたし、エマロン伯爵は協力することでタイディ家から、お金をもらっていたらしい。
私とアイザックとの婚約が破棄になったことにより、契約違反だとして、お金を返さなくてはならなくなり、エマロン伯爵は私たちの婚約をどうにか成立させようとしていた。
タイディ子爵は私をアイザックの虜にさせてから捨てさせるのが目的だったらしい。
時間が戻る前のタイディ家とエマロン家の関係性は同じものなんでしょう。
私が死んだあと、テレサたちが幸せになっていたのかと思うと腹が立つ。
リュカが一人で真相を暴いていたのだとしたら別だけれど。
タイディ家とエマロン家からはトロット公爵家のことは最初は口には出されなかった。
けれど、このまま黙っていても、そのうち口封じをしに来るだろうと脅されると、素直に話をした。
その話はリュカのご両親にも伝わり、娘のやったこととはいえ、王太子の婚約者を売り飛ばそうとしたこと、禁止されている奴隷商とかかわっていたことで、トロット公爵の爵位は剥奪された。
そして、リュディガー殿下、その母のソフィー様と、私は初めてお会いすることになるのだった。
「……何を言ってるの?」
事情を知らないリアラ様が眉根を寄せて尋ねると、テレサは叫ぶ。
「うるさいわね! 平民のあんたに答える必要はないわよ!」
リアラ様は他国の辺境伯令嬢だし、ティナ様のお兄様の婚約者なんだけれど、表沙汰にしていないから、テレサは平民だと思い込んだみたい。
「テレサ、あなた馬鹿なの? お母様とあなたのお父様が結婚していたら、私もあなたも生まれていないわよ。どうして離婚になったのか、ちゃんとあなたのお母様に確認したの?」
「……してないわ! だって会えてないんだもの!」
テレサが泣きながら叫ぶ。
この件については、私のお母様がテレサのお母様と話をしてくれていた。
「別れた理由はあなたのお父様の言動が原因よ」
「……どういうこと?」
「あなたのお父様が何かと細かく行動を馬鹿にしてくるから別れた。ただ、それだけの理由。あなたをお父様のところへ置いていったのは、そのほうが裕福に暮らせるからよ」
「じゃあ、どうしてお母様は私と連絡を取ってくれなかったの!?」
「あなたのお父様が、あなたを幸せにしたいのなら、母親の存在を忘れさせなければならないと言ったから。連絡をとらせないようにしていたらしいわ」
「……そんな」
テレサはショックを受けたような顔をした。
でもすぐに、私を睨みつけて叫ぶ。
「そんなの嘘よ!」
テレサは小さなナイフを両手に持ち、私に向かって突進してきた。
「馬鹿なことはやめなさい」
リアラ様はそう言うと、私の前に出てテレサの手を掴んで捻り上げた。
「痛いっ!」
テレサの手からナイフが落ちると、リアラ様はそれを人がいない方向に蹴った。
そして、暴れにくくするようにか、彼女を廊下に倒し、手を後ろに回させて背中を押さえつけた。
私たちの様子を見ていた生徒が先生を呼びに行くと言って走っていく。
「テレサ、あなたのことは気の毒だと思うけれど、やってはいけないことをしようとしたの。あなたには罪を償ってもらうわ」
廊下に押さえつけられたテレサを見下ろして、私は冷たい口調で言った。
あなたには記憶はないかもしれない。
でも、あなたは私を殺そうとした。
今だってそう。
私はあなたを殺したいとまでとは思わないけれど、多少、痛い思いはしてもらわないといけないと思っている。
人の命を奪おうとする行為は、どんなやり方であっても絶対に良くないからだ。
*****
テレサは警察に連れて行かれ、厳しい尋問を受けたそうだ。
そして、その厳しさに耐えられなかった彼女は自分の関わったことすべてを白状した。
私にナイフを向けたのは、どうせ捕まるなら、私を殺してしまおうというヤケクソな気持ちが悪いだったらしい。
そして、誰からその情報を聞いたのかも教えてくれた。
そのため、タイディ家だけでなくエマロン家も捕まった。
アイザックはテレサのために悪事を働いていたし、エマロン伯爵は協力することでタイディ家から、お金をもらっていたらしい。
私とアイザックとの婚約が破棄になったことにより、契約違反だとして、お金を返さなくてはならなくなり、エマロン伯爵は私たちの婚約をどうにか成立させようとしていた。
タイディ子爵は私をアイザックの虜にさせてから捨てさせるのが目的だったらしい。
時間が戻る前のタイディ家とエマロン家の関係性は同じものなんでしょう。
私が死んだあと、テレサたちが幸せになっていたのかと思うと腹が立つ。
リュカが一人で真相を暴いていたのだとしたら別だけれど。
タイディ家とエマロン家からはトロット公爵家のことは最初は口には出されなかった。
けれど、このまま黙っていても、そのうち口封じをしに来るだろうと脅されると、素直に話をした。
その話はリュカのご両親にも伝わり、娘のやったこととはいえ、王太子の婚約者を売り飛ばそうとしたこと、禁止されている奴隷商とかかわっていたことで、トロット公爵の爵位は剥奪された。
そして、リュディガー殿下、その母のソフィー様と、私は初めてお会いすることになるのだった。
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