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30 夫にさよならを ①
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「こ、公爵令息が……侯爵に、け、喧嘩を売るつもりですか?」
トータムは平静を装っているつもりのようだけれど、声が震えているので意味がない。
「先に喧嘩を売ったのはそちらだよ。違うと言っているのに聞いてもらえないんだ。喧嘩を買うことも分かってもらうための手段の一つだと思っている」
「きょ、今日はフララのデビュタントというおめでたい日なんですよ! そんな物騒なことを言うのはおやめください!」
「おめでたい日をぶち壊そうとしているのは、ビレディ侯爵だろう」
「お兄様! 私のために喧嘩しないで!」
フララさんがトータムの腕にしがみついて叫んだ。
「誰のせいでこんなことになったと思ってるんだ!?」
「ですから、私のせいでしょう!?」
二人がくだらない話をしている間に、ラフリード様に尋ねる。
「あの、ラフリード様、眼鏡姿を見せても良いんですか?」
「これ以上の馬鹿に出会うこともないだろうからかまわない」
「それはそうかもしれませんが……」
「君は気にしなくていい」
にこりと微笑むラフリード様の顔の良さに一瞬目眩を覚えた。
ある意味、顔面が凶器だわ。
「まあ! アリム様から聞いてはいましたけれど、眼鏡姿のラフリード様はイメージが違いますわね」
ファルナ様が手を叩いて言うと、フララさんが食いついた。
「どちらのラフリード様も素敵です!」
「フララ! いい加減にしてくれ!」
「最近のお兄様は駄目駄目ばっかり! ……もういいわ!」
フララさんはトータムに怒鳴られたことが気に入らなかったのか、不貞腐れた顔をして続ける。
「お兄様のことなんてあてにしない! 私は今日出会った人たちか、ラフリード様の妻になるわ!」
「俺以外にしてくれ」
ラフリード様は笑顔できっぱりと拒否した。
それにしても、フララさんも本当に諦めないわね。確実にトータムを見限ったようだから、余計にラフリード様にこだわるのかしら。
フララさんがショックを受けて固まっていると、トータムが訴える。
「フララ! どうしてそんなことを言うんだ!? 君のために俺がどれだけ犠牲にしてきたかわかっているのか!?」
「犠牲? お兄様は何を犠牲にしたって言うんです?」
「僕とミアリナの夫婦関係は君のせいでこじれたんだ。それを修復するのは大変なんだよ!」
「ああ……、そのことですか」
フララさんは満足そうに笑みを浮かべた。私は彼女には反応せずに、トータムに話しかける。
「トータム、あなたとの関係を修復するつもりはないわ。あなたはフララさんと幸せになって」
「妹と幸せになれるわけないだろ! 跡継ぎはどうするんだ!? 妻としての役目を果たしてくれよ!」
……トータムにとっての私は、子供を産むための道具にすぎないってこと?
傷ついたのか怒りなのかはわからない。ただ、頭が沸騰したんじゃないかと思うくらいに熱い
頬を思いきりひっぱったいてやりたい。
でも、暴力はいけないと自分の手を握り合わせて我慢する。
「一発殴ってやったら目を覚ますだろうか」
ラフリード様の呟きが聞こえてきて、驚いて彼を見上げた。
「冗談だ」
「……私も殴りたいですけど、さすがに人が多すぎます」
ラフリード様のおかげで、頭が一瞬にして冷えた気がした。
もういいわ。考えていた展開と少し違うけれど、実行に移そう。
微笑む彼にそう答えたあと、私はトータムを視線を戻す。
「話を聞いてほしいんだけど」
「なんだよ!?」
睨みつけてくるトータムを睨み返し、私はボーイに頼んで、楽団の演奏を止めてもらった。ざわつきはあるが、先ほどよりも声が通りやすくなったことを確認し、私は口を開く。
「浮気なんてしていないと伝えているのに、私の言葉を信じてくれない夫なんていらない! お願いですから別れてください!」
会場内に響きわたるくらいに大きな声だったため、招待客の視線が一斉に私たちに集まった。
トータムは平静を装っているつもりのようだけれど、声が震えているので意味がない。
「先に喧嘩を売ったのはそちらだよ。違うと言っているのに聞いてもらえないんだ。喧嘩を買うことも分かってもらうための手段の一つだと思っている」
「きょ、今日はフララのデビュタントというおめでたい日なんですよ! そんな物騒なことを言うのはおやめください!」
「おめでたい日をぶち壊そうとしているのは、ビレディ侯爵だろう」
「お兄様! 私のために喧嘩しないで!」
フララさんがトータムの腕にしがみついて叫んだ。
「誰のせいでこんなことになったと思ってるんだ!?」
「ですから、私のせいでしょう!?」
二人がくだらない話をしている間に、ラフリード様に尋ねる。
「あの、ラフリード様、眼鏡姿を見せても良いんですか?」
「これ以上の馬鹿に出会うこともないだろうからかまわない」
「それはそうかもしれませんが……」
「君は気にしなくていい」
にこりと微笑むラフリード様の顔の良さに一瞬目眩を覚えた。
ある意味、顔面が凶器だわ。
「まあ! アリム様から聞いてはいましたけれど、眼鏡姿のラフリード様はイメージが違いますわね」
ファルナ様が手を叩いて言うと、フララさんが食いついた。
「どちらのラフリード様も素敵です!」
「フララ! いい加減にしてくれ!」
「最近のお兄様は駄目駄目ばっかり! ……もういいわ!」
フララさんはトータムに怒鳴られたことが気に入らなかったのか、不貞腐れた顔をして続ける。
「お兄様のことなんてあてにしない! 私は今日出会った人たちか、ラフリード様の妻になるわ!」
「俺以外にしてくれ」
ラフリード様は笑顔できっぱりと拒否した。
それにしても、フララさんも本当に諦めないわね。確実にトータムを見限ったようだから、余計にラフリード様にこだわるのかしら。
フララさんがショックを受けて固まっていると、トータムが訴える。
「フララ! どうしてそんなことを言うんだ!? 君のために俺がどれだけ犠牲にしてきたかわかっているのか!?」
「犠牲? お兄様は何を犠牲にしたって言うんです?」
「僕とミアリナの夫婦関係は君のせいでこじれたんだ。それを修復するのは大変なんだよ!」
「ああ……、そのことですか」
フララさんは満足そうに笑みを浮かべた。私は彼女には反応せずに、トータムに話しかける。
「トータム、あなたとの関係を修復するつもりはないわ。あなたはフララさんと幸せになって」
「妹と幸せになれるわけないだろ! 跡継ぎはどうするんだ!? 妻としての役目を果たしてくれよ!」
……トータムにとっての私は、子供を産むための道具にすぎないってこと?
傷ついたのか怒りなのかはわからない。ただ、頭が沸騰したんじゃないかと思うくらいに熱い
頬を思いきりひっぱったいてやりたい。
でも、暴力はいけないと自分の手を握り合わせて我慢する。
「一発殴ってやったら目を覚ますだろうか」
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「冗談だ」
「……私も殴りたいですけど、さすがに人が多すぎます」
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もういいわ。考えていた展開と少し違うけれど、実行に移そう。
微笑む彼にそう答えたあと、私はトータムを視線を戻す。
「話を聞いてほしいんだけど」
「なんだよ!?」
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「浮気なんてしていないと伝えているのに、私の言葉を信じてくれない夫なんていらない! お願いですから別れてください!」
会場内に響きわたるくらいに大きな声だったため、招待客の視線が一斉に私たちに集まった。
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