【完結】異世界召喚されたのはこの俺で間違いない?

苔原りゐ

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幻影の恐怖

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俺たちは巨大な虫との戦いを終え、全員が疲労で体力を削られているが、特に俺とリリは精神的に参っていた。彼女はエリザの腕にしがみつきながら涙を浮かべている。
俺はいまだに鳥肌が収まらなかった

「本当に虫、もういないんだよね……?」リリが不安げに尋ねる。

「いないよ、リリ。全部片付けたから安心していいわ。」エリザは優しく微笑みながら彼女の頭を撫でる。

「でも、次に進まないとここで夜を迎えることになるわ。」エリザが周り警戒しつつ言う。

「そうだな。この先の沼地を抜ければ、ひとまずは次の村にたどり着ける。」俺は地図を確認しながら答えた。

沼地に入ると、空気が重く湿り気を帯び、地面は柔らかく足元を取られそうになる。さらに進むと、周囲が白い霧に覆われていった。最初はただの自然現象だと思ったが、その霧は異様な速さで濃くなり、視界を奪っていく。

「また変な雰囲気だな……。」俺は剣を握り直しながら立ち止まった。

「この霧、ただの霧じゃないわね。魔力を感じる。」エリザが周囲を警戒しながら呟く。

「魔法の霧か……厄介だな。」俺は嫌な予感を覚えつつ、剣を構えた。

その時、霧の中から奇妙な音が聞こえてきた。水面を跳ねる音、何かが這うような音、そして低い唸り声。それらが混じり合い、不気味な雰囲気をさらに増幅させる。

「なに、これ……!」リリが俺の腕にしがみついてくる。

「みんな、近くにいて!」エリザが鋭い声で警告する。

霧の中、ぼんやりとした人影のようなものが現れた。その輪郭は揺らめき、赤い目が光っている。まるで誰かを模しているかのように見えるが、その動きは明らかに人間のものではない。

「幻影か?」俺はその幻影から距離を取る。

「そうよ。でも、これだけじゃない。本体がどこかにいる。」エリザが冷静に状況を分析する。

幻影は次々と姿を変え、俺たちを取り囲むように動き始めた。その中には俺自身の姿を模したものもいる。

「……気持ち悪いな。」俺は剣で幻影を斬りつけたが、剣先は空を切るように霧を通り抜けるだけだった。

「物理攻撃は効かないわ!」エリザが叫ぶ。

その時、霧の中から巨大な生物が姿を現した。ぬるぬるとした表面に、斑点のような目が無数についている。まばらな毛が全身に生え、体中から白い霧を放っている。

「これが本体か!」俺は叫びながら剣を構え直した。

その巨大な生物は、「幻影魔獣ヴェスペル」と呼ばれる厄介な魔物だとエリザが説明した。その特徴は幻影で敵を惑わせ、本体を隠して攻撃することにある。

「ヴェスペルは頭部の核が弱点よ!」エリザが叫ぶ。

「分かった!」俺は足元の霧をかき分けながら、生物に向かって突進した。

だが、その瞬間、霧がさらに濃くなり、視界を完全に奪われた。次に感じたのは、何かが背後から迫る気配。振り返る間もなく、背中に衝撃を受け、地面に倒れ込んだ。

「アデル!」エリザが駆け寄ろうとするが、無数の幻影が彼女の動きを妨げる。

ユリスは冷静に短剣を構え、幻影をかいくぐりながら魔獣に迫る。その動きは小柄ながら素早く正確だ。

「ユリス、頼む!」俺は必死に声を上げた。

「見つけました。」ユリスは小さく呟き、魔獣の弱点である核を狙って突き刺した。

短剣が深く刺さり、魔獣が苦しげな悲鳴を上げる。その瞬間、霧が一気に晴れ、幻影も消え去った。

「これで終わり……!」エリザが魔法を放ち、魔獣の頭部を直撃。巨大な体が溶けヘドロと化した。

「おじさん、大丈夫!?」リリが駆け寄ってきた。まだ泣きそうな顔をしているが、俺が無事だと分かるとホッとした表情を浮かべた。

「なんとかな……。けど、もうこういうのは勘弁だ。」俺はため息をつきながらリリの頭を撫でた。

「ユリス、すごかったわね。本当に頼もしいわ。」エリザが感謝の言葉を伝えると、ユリスは控えめに頷いた。

「皆さんがいたから、できました。」彼女は短剣をしまいながら静かに答えた。

こうして、俺たちは新たな脅威を退け、次の目的地へと歩き出す。

「次の村では、しっかり休もうな。」俺の言葉に、リリとエリザが小さく頷き、ユリスも微笑みを浮かべた。
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