【完結】異世界召喚されたのはこの俺で間違いない?

苔原りゐ

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虫の群れ

乾いた風が吹き抜ける荒れ地を進む中、俺たちは次第に不穏な気配を感じ始めた。砂塵の中、地面が奇妙に蠢いている。

「何だ、あれ……?」俺が剣を構え、警戒の目を向けると、地面から無数の虫が這い出してきた。足が異様に長い蜘蛛のような生き物に、羽音を立てながら飛ぶ巨大な虫たち。

「ひゃああああっ!」リリが悲鳴を上げ、俺の後ろに飛び込んできた。肩を震わせながら俺の背中にしがみつき、叫ぶように言う。

「おじさん!なんでこんな気持ち悪いのがいるの!?やだやだやだ!」

「落ち着け、リリ!」俺は振り返ってなだめようとしたが、リリの涙目の表情を見て、それが無駄だと悟る。

一方、ユリスは地面に這う虫の群れを蹴飛ばしながら冷静に見つめていた。「気持ち悪いけど、ただの虫です……倒せます。」

その淡々とした言葉に、リリが絶叫する。「ただの虫じゃないよ!大きいし、怖いし、動きが変だし……もう嫌あああ!」

「分かったから、リリ!俺たちで片付けるから隠れてろ!」俺はリリをエリザに託し、剣を抜いて前に出た。

「ユリス、俺に合わせてくれ!エリザはリリを頼む!」俺がそう叫ぶと、ユリスはすぐに頷いて腰の短剣を構えた。

巨大な虫が羽音を立てながら俺たちに向かって突進してくる。俺は剣を振り上げ、正面の虫を叩き落とした。だが、一匹倒したところで周囲から次々に襲いかかってくる。

「くそっ、どこから湧いてくるんだ!」俺は剣を振り回し、近寄る虫を切り払い続ける。

ユリスも鋭い動きで足元の虫を斬り捨てていく。その動きは機敏で正確だ。小柄な彼女が器用に虫を倒す姿に驚かされる。

「平気そうだな、ユリス!」俺が感心して声をかけると、彼女は小さく頷く。

「虫は……嫌いではありません。でも、数が多すぎます。」淡々とした口調だが、その表情にはほんの少しの緊張が見える。

背後でエリザが光の矢を放ち、空中を飛ぶ虫を撃ち落としている。リリは泣き叫びながらエリザの服をぎゅっと掴み、叫び声を上げ続けているがもはや声が掠れてきている。

「エリザ!もっと大きいのが来るぞ!」俺が警告すると、エリザは呪文の詠唱を始めた。

巨大な虫が蠢きながら前方から現れる。その体は黒光りし、硬い外骨格に覆われており、まるで鋭い刃物のような脚が地面を引き裂いている。全身には毒針のような突起が生え、動くたびに嫌な音を立てていた。その姿は、巨大なゴキブリそのものだった。

「……っ!」俺は言葉を失った。脳裏を駆け巡るのは嫌悪感と本能的な恐怖だった。

「これ、嘘だろ……!?」足がすくみ、剣を握る手が震える。

「アデル、しっかりして!」エリザが俺を振り返りながら叫んだが、俺はその声すら頭に入らない。視界の隅で、あの黒光りする巨大な虫が、滑るような動きでこちらに迫ってくる。

「無理無理無理無理無理!!!」俺は剣を放り出し、その場に雪崩れ込んだ。冷や汗が背中を伝い、動けない。目の前の現実が受け入れられない。

「おじさん!?どうしたの!?」リリの声が聞こえる。だが、彼女もすぐに大声で叫び始めた。

「きゃあああああああ!!!なにこれ、無理無理無理!!!」リリは泣き叫びながらエリザの後ろに隠れ、全身を震わせていた。

「あれは......、ヴェノクローラね、関節が弱点よ、ユリス、お願い!」エリザは冷静に短剣を抜き放ち、巨大な虫の動きを注視する。彼女の隣で、ユリスは表情一つ変えず短剣を構えていた。

「分かりました。」ユリスは静かに応じると、すばやく地面を蹴り、一気に虫の背後に回り込む。

エリザが光の魔法で前方から巨大なゴキブリを牽制し、その隙にユリスが敏捷な動きで突撃する。短剣が黒い外骨格に突き刺さり、甲高い金属音が響いた。

「堅い……ですが!」ユリスはもう一度力を込め、今度は関節部分を狙う。短剣がうまく深く刺さり、巨大な虫の動きが鈍る。

「今よ!」エリザが魔法で放った光の矢が、虫の頭部を直撃。甲高い悲鳴を上げながら、巨大な虫は地面に崩れ落ちた。

「やった……。」エリザが肩で息をしながら呟く。

「ふぅ……無事倒せました。」ユリスも短剣を拭いながら振り返る。

しかし、彼女たちが振り向くと、俺はまだ地面にへたり込んでいた。リリはエリザの腰にしがみつきながら、涙でぐしゃぐしゃになった顔をしている。

「……アデル、しっかりして!」エリザが叱るように声を上げると、俺はようやく正気に戻った。

「……ごめん。無理だった。俺、本当にゴキブリがダメなんだ……。」俺は項垂れながら答えた。

「おじさん、私も無理だよ!もうこんなとこやだー!」リリは泣きながら叫んだ。

「でも、リリちゃんもアデルさんも無事でよかったです。」ユリスが控えめに微笑み、二人を気遣う。

「……ありがとう、ユリス。それに、エリザも。」俺は申し訳なさそうに二人に感謝を伝えた。

こうして、エリザとユリスの活躍で巨大な虫の脅威を退けた俺たちは、なんとか荒れ地を抜けることができた。だが、俺とリリにとって、今回の経験は決して忘れられないものになった。

「次は絶対に虫がいないところに行こうな。」俺が弱々しく提案すると、リリも涙目で大きく頷いた。
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