死に戻り騎士は愛のために願う 〜10回だけの奇跡〜

湯川岳

文字の大きさ
13 / 14

12.幸せな日常

しおりを挟む

 目を覚まし、服を着替え、部屋を出る。
 廊下を歩き、階段を上り、角を曲がる。
 部屋をノックし、入ればアルト様がいる。

「アルト様、アルト様、朝ですよ」

 優しく肩を揺すると、体を起こすアルト様が大きな欠伸をしていた。
 幸せな毎日を送っていた。
 あの日からもう1年。帰って来てはバルト様に二人で怒られたことが懐かしい。
 バルト様から与えられた罰は、食堂にて料理や清掃の手伝いを半年行うことだった。アレンは腹を抱え笑っていた。

「んー、おはよう」

 アルト様の寝着のボタンを外していく。

「昨日はゴブリンが数体出たようですが問題なかったようですよ」

「そうか、良かった」

 肌には点々と私が付けた印が付いていた。それを見てついキスをしたくなってしまい、肩にキスを落とす。

「わ!なんだよ」

 恥ずかしそうに肩を触るアルト様の左手には指輪が嵌められていた。それは私の左手の指にも嵌められている。
 私の不安を察したアルト様からの提案で買ったものだ。
 シューベルト領では私たちの関係を知らない者はいない。アルト様も別に隠す気がないのか、たまに私にくっついてくる。

「好きですよ。アルト様」

「知ってるって」

 アルト様は素っ気ない感じを出すが、耳が真っ赤なのを知っている。
 それだけで私は満足だ。

 更衣が終わった後は、アルト様の髪を結っていく。髪にくしを通すと気持ち良さそうにアルト様は目を閉じる。
 この時間が好きだ、とアルト様は言っていた。私も同じように好きだ。黒い髪に私の色の紐を付ける。
 今日も怪我なく過ごせますように、と願いを込めて。
 最後に黒髪にキスを落とす。

「そうだ、そろそろ時期だろ?」

「そうですね」

 窓から覗く木は茶色に染まっている。そろそろ友と祖母が亡くなった時期だ。

「オレも一緒に行こうかな」

「いえ、私だけで行きます」

「……そうか」

 一緒に行きたかった様子のアルト様の手を握る。
 私も本当は一緒に行きたい。しかし、直ぐには帰って来れないのだ。仕方がないことはお互い理解はしている。

「すぐ帰って来ます」

頬にキスすればお互いの視線が通い自然に唇にもキスをする。

「絶対だぞ」

「はい、もちろんです」



 その2日後、私はアッシュフォード村に帰省した。

 村の近くにある墓地に私は来ていた。白い花束を祖母の墓に置く。

「おばあちゃん、今年も来たよ」

 呪いが解けた後にも一度村を訪れていた。その時はアルト様も一緒だった。
  優しい風が私の頬を撫でる。
 幸せ?と聞かれているような気がした。

「うん、幸せだよ。とっても」

「ちょっと待ってー!」

「ここまでおーいーでーー!」

 村の子供が私の横を通り過ぎて行く。

「おばあちゃん、ありがとう」

 私は子供達を追って丘の上に上がる。そこには空き家があった。子供達が出たり入ったりしていた。相変わらずここは秘密基地なのだろう。

 私はもう1つ用意しておいた白い花束を置く。

「お兄ちゃん、これなに?」

 子供達が寄って来た。私は子供達に目線を合わす。

「友達に送るプレゼントだよ」

「ふーん、私もプレゼントする!」

「僕も!」

 そう言って子供達は色とりどりの花を詰んでは花束の側に置く。

「大きな花束になったね!」

 賑やかな花束がそこには出来ていた。
 寂しそうな顔をしていた彼は、今は笑っているのだろうか。
 強い風が吹く。花びらが空に舞った。
 それはまるで楽しそうに。

「そっか、君ももう悲しくないんだね」

 私は手に落ちて来た花びらを見て笑った。

「また来るよ」



  アルト様の濡れた髪が湯船に浮かんでいる。私は足の間にいるその人を後ろから眺めていた。
 急いでアッシュフォード村から帰って来たのにどこか不機嫌なのだ。

「アルト様、怒っているんですか?」

 黒い髪を掬うとぽたぽたと水が滴る音が響く。

「早く帰って来たじゃないですか」

 返事が返って来ない。私はアルト様の髪をかき分け、首にキスをする。

「何か言って下さいよ」

「…………一緒に行こう、って言って欲しかった」

「でもそれは無理じゃないですか」

「分かってる。だけど、一緒に行きたかったんだよ」

 私は拗ねているアルト様を後ろから抱き締める。

「私はもう悲しくありませんよ」

「……それは、本当か?」

「はい、祖母にも友達にも笑って会って来れました。アルト様のお陰です」

 肩や首にキスを落とす。

「ならいい」

 耳が真っ赤になっていくアルト様に私は愛おしくなる。耳にキスを落とし、首筋に舌を這わせば肩を揺らす反応が返って来る。

「好きです、アルト様」

「知ってる」

「愛してますよ」

「……おれも」

 恥ずかしそうにアルト様が私の方を向く。

「オレも、愛してる」

 私は堪らず彼の唇に深いキスを落とした。
 そして、一つのベッドで共に朝を迎えた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

祖国に棄てられた少年は賢者に愛される

結衣可
BL
 祖国に棄てられた少年――ユリアン。  彼は王家の反逆を疑われ、追放された身だと信じていた。  その真実は、前王の庶子。王位継承権を持ち、権力争いの渦中で邪魔者として葬られようとしていたのだった。  絶望の中、彼を救ったのは、森に隠棲する冷徹な賢者ヴァルター。  誰も寄せつけない彼が、なぜかユリアンを庇護し、結界に守られた森の家で共に過ごすことになるが、王都の陰謀は止まらず、幾度も追っ手が迫る。   棄てられた少年と、孤独な賢者。  陰謀に覆われた王国の中で二人が選ぶ道は――。

勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される

八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。 蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。 リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。 ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい…… スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

偽りの聖者と泥の国

篠雨
BL
「感謝すら忘れた者たちに、明日を語る資格はない」 自らの都合で聖王セシルを追放し、異世界から新たな「勇者」を召喚したアドレアン聖王国。 しかし、その身勝手な選択が、国を、大地を、そして人々の心を根底から腐らせていく。 壊れゆく少年勇者と、彼を歪に愛した騎士。 二人の執着が交わったとき、聖王国は二度と再生不能な終焉へと突き進む。 裏切り者たちには、因果応報という名の、容赦なき報いが下る。 これは、傲慢な国が崩壊するまでの、無慈悲な記録。 ----------------------------------------- 『嘘つき王と影の騎士』から引き続き読んでくださる皆様へ この物語は、セシルを虐げた者たちが、ただただ因果応報の末路を辿るだけの物語です。 本編に救いはありません。 セシルたちのその後が気になるという方は、本編は飛ばして、最終話の後に掲載する「閑話」のみをお読みいただくことをお勧めいたします。 本作は『嘘つき王と影の騎士』の続編となりますが、前作をお読みでない方でも一つの物語としてお楽しみいただけます。

処理中です...