20 / 85
王妃の陰謀と見えない思惑
しおりを挟む
「妃殿下、貴女は話をされる際、1度整理してから話された方が良いですね? で? 核はどこですか?」
「まだこれからよ?」
テオドールは思わずソファから滑り落ちた。
…嘘だろ? 今までの時間は何だったんだ。
「そんな所で寝転んでないで起きなさい。いい? これからよ」
テオドールはクラリスを睨みつけつつソファに腰を下ろす。
「端的にお願いしますよ?」
「王太子派以外の者が怪しいと思うの。だってリザの存在はスキャンダルよ?」
「国王に子がいてもスキャンダルとはなりませんよ?」
「そう、ならない。でも私は狙われている。それは国王の子ではなく、別の何かだと思ってるの」
「カモフラージュ、ですか?」
「そう。5歳の他国の王女に与えたミニハウス。実はリザと遊ばせるため、堂々と王宮の中に招き入れるため。周りは私の連れだと思うもの」
テオドールは目を見開いた。
「なるほど、少し冴えてきましたね」
クラリスは睨む。
「さっきのは5歳の私の見解だからね?」
「で? リザとやらは何と?」
「さぁ、どうかしら? 彼女も私が王太子妃だとは知らないはずよ? 根掘り葉掘り聞くわけにもいかないし。でも昔と変わらず仲良しよ?」
…さあ、どうかしらって。
テオドールは頭を抱え、クラリスを見つめた。
「案外何も関係ないかもですよ?」
どうでもよくなったのか、テオドールが適当に答える。
「そう。その線もある。だけどね? 現におかしなことがある以上、何かあるのよ」
「おかしなこと?」
クラリスは平然とお茶を口に運ぶ。
「そうよ。だって私、ここでも監視されてるもの。初めは殿下かなとも思ったけど、貴方がこうして堂々と側近になって近くにいる。ということは、殿下以外で私を監視できる人間なんてそうはいないわ」
テオドールは眉を上げ、深刻な表情で考え込む。
「思い違いとかではなくて?」
クラリスは呆れ顔で答えた。
「貴方ね、私を誰だと思ってるの? これでも一国の王女よ。誰かに監視されたり尾行されたりして気付かないわけないでしょう?」
「…」
「まぁ、護身術には長けているから心配無用よ?」
…その護身術、あまりアテにならないけどね?
「殿下に話された方がよろしいかと」
クラリスは咳き込みながら答えた。
「駄目! それだけは駄目!」
「何故ですか?」
クラリスは真っ直ぐテオドールを見据え、カップをソーサに戻した。
「貴方は特別なのよ。貴方にはわからないだろうけど」
テオドールが遮るように言う。
「王族でないからですか?」
クラリスは少し寂しげに首を傾げた。
「いいえ、貴族も同じ」
…ならば俺も貴族だぜ?
「貴方は貴族でありながら、ご両親の愛情を存分に浴びてきたはずよ」
…は?
テオドールは仏頂面の父、ランズ王国宰相の顔を思い浮かべ、怪訝そうにクラリスを見た。
「公爵はこの国でも要となる人物よ。表に出れば宰相として振る舞うでしょう。でも家の中では異なる顔を持っていらっしゃるはず」
テオドールにはよくわからない。
「貴方はそれがデフォだからわからないのよ。でも貴方を見ていれば分かる。何でも思ったことを口にし、表情すら隠さない」
…ディスってる?
「人の顔色を伺うこともしない。それは、貴方が公爵家でのびのびと育てられた証拠よ」
…確かにのびのびが過ぎたかも。
「爵位のために家族を駒とすることを非難するつもりはないわ。爵位が絶対のこの世では致し方ないもの。逆に言えば、公爵は希少ということね」
…なるほど。
「殿下もそう感じておられるはずよ。だって見てご覧なさい、殿下の側に仕える面々。貴方には及ばないけれど、皆、自由奔放じゃない? 一方、アルフレッド様側近は能面集団よ。エリート中のエリートって感じでしょう?」
…やっぱりディスってるよな?
「殿下は王太子として生まれてから孤独だったはず。国王陛下も王妃様もお忙しく、幼い殿下は寂しかったでしょう」
「それなら他の王子殿下も同じでは?」
クラリスは静かに首を横に振った。
「違うわ。全く違う。だって正妃様のお子よ。周りに付く護衛から何から何まで異なるもの。休まる暇もないわ。もし、万が一よ? 万が一リザが先代の子ではなくて……」
テオドールは唾を飲む。
「万に一つもないだろうけど、リザと殿下のご両親に関係があるなら……」
「それなら王女となりますので問題ないかと?」
クラリスは視線を逸らす。
「そうね。そして国王陛下のお子でも珍しいことではない。ならば、王妃様だとしたら?」
…
「王妃様とどなたのお子なら、敵が狙う絶大なスキャンダルよ」
…!
テオドールは目を見開き、硬直した。
「無いわよ? 無い無い。でもこれなら敵は必死に証拠を掴みに行くだろうね。でもただの逆算よ。有り得ないもの」
…
「でも、もしそうなら、母親の愛情を存分に浴びて来なかった殿下から見れば、その子に先代が代わりに愛情を注いでいたとしたら……やりきれないわ」
「貴方はそのために……」
クラリスは美しく微笑んだ。
「だから私が何とかするのよ。一応、まだ妻でしょ?」
テオドールは眉間にシワを刻む。
「何故そこまで?」
クラリスは少し考えた後、とぼけた顔で言った。
「う~ん。私が王女として生まれてきた意味みたいな?」
テオドールは言葉を失い呆然とクラリスを見つめていた。
「まだこれからよ?」
テオドールは思わずソファから滑り落ちた。
…嘘だろ? 今までの時間は何だったんだ。
「そんな所で寝転んでないで起きなさい。いい? これからよ」
テオドールはクラリスを睨みつけつつソファに腰を下ろす。
「端的にお願いしますよ?」
「王太子派以外の者が怪しいと思うの。だってリザの存在はスキャンダルよ?」
「国王に子がいてもスキャンダルとはなりませんよ?」
「そう、ならない。でも私は狙われている。それは国王の子ではなく、別の何かだと思ってるの」
「カモフラージュ、ですか?」
「そう。5歳の他国の王女に与えたミニハウス。実はリザと遊ばせるため、堂々と王宮の中に招き入れるため。周りは私の連れだと思うもの」
テオドールは目を見開いた。
「なるほど、少し冴えてきましたね」
クラリスは睨む。
「さっきのは5歳の私の見解だからね?」
「で? リザとやらは何と?」
「さぁ、どうかしら? 彼女も私が王太子妃だとは知らないはずよ? 根掘り葉掘り聞くわけにもいかないし。でも昔と変わらず仲良しよ?」
…さあ、どうかしらって。
テオドールは頭を抱え、クラリスを見つめた。
「案外何も関係ないかもですよ?」
どうでもよくなったのか、テオドールが適当に答える。
「そう。その線もある。だけどね? 現におかしなことがある以上、何かあるのよ」
「おかしなこと?」
クラリスは平然とお茶を口に運ぶ。
「そうよ。だって私、ここでも監視されてるもの。初めは殿下かなとも思ったけど、貴方がこうして堂々と側近になって近くにいる。ということは、殿下以外で私を監視できる人間なんてそうはいないわ」
テオドールは眉を上げ、深刻な表情で考え込む。
「思い違いとかではなくて?」
クラリスは呆れ顔で答えた。
「貴方ね、私を誰だと思ってるの? これでも一国の王女よ。誰かに監視されたり尾行されたりして気付かないわけないでしょう?」
「…」
「まぁ、護身術には長けているから心配無用よ?」
…その護身術、あまりアテにならないけどね?
「殿下に話された方がよろしいかと」
クラリスは咳き込みながら答えた。
「駄目! それだけは駄目!」
「何故ですか?」
クラリスは真っ直ぐテオドールを見据え、カップをソーサに戻した。
「貴方は特別なのよ。貴方にはわからないだろうけど」
テオドールが遮るように言う。
「王族でないからですか?」
クラリスは少し寂しげに首を傾げた。
「いいえ、貴族も同じ」
…ならば俺も貴族だぜ?
「貴方は貴族でありながら、ご両親の愛情を存分に浴びてきたはずよ」
…は?
テオドールは仏頂面の父、ランズ王国宰相の顔を思い浮かべ、怪訝そうにクラリスを見た。
「公爵はこの国でも要となる人物よ。表に出れば宰相として振る舞うでしょう。でも家の中では異なる顔を持っていらっしゃるはず」
テオドールにはよくわからない。
「貴方はそれがデフォだからわからないのよ。でも貴方を見ていれば分かる。何でも思ったことを口にし、表情すら隠さない」
…ディスってる?
「人の顔色を伺うこともしない。それは、貴方が公爵家でのびのびと育てられた証拠よ」
…確かにのびのびが過ぎたかも。
「爵位のために家族を駒とすることを非難するつもりはないわ。爵位が絶対のこの世では致し方ないもの。逆に言えば、公爵は希少ということね」
…なるほど。
「殿下もそう感じておられるはずよ。だって見てご覧なさい、殿下の側に仕える面々。貴方には及ばないけれど、皆、自由奔放じゃない? 一方、アルフレッド様側近は能面集団よ。エリート中のエリートって感じでしょう?」
…やっぱりディスってるよな?
「殿下は王太子として生まれてから孤独だったはず。国王陛下も王妃様もお忙しく、幼い殿下は寂しかったでしょう」
「それなら他の王子殿下も同じでは?」
クラリスは静かに首を横に振った。
「違うわ。全く違う。だって正妃様のお子よ。周りに付く護衛から何から何まで異なるもの。休まる暇もないわ。もし、万が一よ? 万が一リザが先代の子ではなくて……」
テオドールは唾を飲む。
「万に一つもないだろうけど、リザと殿下のご両親に関係があるなら……」
「それなら王女となりますので問題ないかと?」
クラリスは視線を逸らす。
「そうね。そして国王陛下のお子でも珍しいことではない。ならば、王妃様だとしたら?」
…
「王妃様とどなたのお子なら、敵が狙う絶大なスキャンダルよ」
…!
テオドールは目を見開き、硬直した。
「無いわよ? 無い無い。でもこれなら敵は必死に証拠を掴みに行くだろうね。でもただの逆算よ。有り得ないもの」
…
「でも、もしそうなら、母親の愛情を存分に浴びて来なかった殿下から見れば、その子に先代が代わりに愛情を注いでいたとしたら……やりきれないわ」
「貴方はそのために……」
クラリスは美しく微笑んだ。
「だから私が何とかするのよ。一応、まだ妻でしょ?」
テオドールは眉間にシワを刻む。
「何故そこまで?」
クラリスは少し考えた後、とぼけた顔で言った。
「う~ん。私が王女として生まれてきた意味みたいな?」
テオドールは言葉を失い呆然とクラリスを見つめていた。
3
あなたにおすすめの小説
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
[完結]私を巻き込まないで下さい
シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。
魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。
でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。
その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。
ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。
え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。
平凡で普通の生活がしたいの。
私を巻き込まないで下さい!
恋愛要素は、中盤以降から出てきます
9月28日 本編完結
10月4日 番外編完結
長い間、お付き合い頂きありがとうございました。
ループした悪役令嬢は王子からの溺愛に気付かない
咲桜りおな
恋愛
愛する夫(王太子)から愛される事もなく結婚間もなく悲運の死を迎える元公爵令嬢のモデリーン。
自分が何度も同じ人生をやり直している事に気付くも、やり直す度に上手くいかない人生にうんざりしてしまう。
どうせなら王太子と出会わない人生を送りたい……そう願って眠りに就くと、王太子との婚約前に時は巻き戻った。
それと同時にこの世界が乙女ゲームの中で、自分が悪役令嬢へ転生していた事も知る。
嫌われる運命なら王太子と婚約せず、ヒロインである自分の妹が結婚して幸せになればいい。
悪役令嬢として生きるなんてまっぴら。自分は自分の道を行く!
そう決めて五度目の人生をやり直し始めるモデリーンの物語。
シナモンと葡萄酒と白銀の魔杖
柳葉うら
恋愛
リーツェル王国の王都の片隅に、夜の間だけ現れるカフェがある。
名前はカフェ銀月亭。店主のエーファは元・氷晶の賢者こと王国最高峰の魔法使い。彼女が早過ぎる引退後に開いた、一風変わった店だ。
エーファは看板フェンリルのシリウスと一緒に店をきりもりするかたわら、大切な「お嬢様」を国外追放した忌々しい王太子に復讐するべく暗躍している。
ある日、エーファと年が近く顔見知りの騎士団長のランベルト・フォン・ロシュフォールが店を訪れた。
エーファの行動を訝しんだランベルトは、見張りのために毎日来るようになる。それに気づいたエーファだが、ランベルトから情報を引き出すためにわざと彼に近づき――腹の探り合いが始まった。
警戒し合っていた二人が、交流を重ねていく間に恋に落ちてしまうお話です。
エーファがカフェで出すスパイスが効いたお菓子やホットワイン、そして頼もしいモフモフ相棒の活躍もお楽しみください。
※アドベントカレンダーとして毎日更新する予定ですので応援いただけますと嬉しいです
【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係
ayame@コミカライズ決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________
【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる