王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako

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犬と猿、そして王太子宮の秘密

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アルフレッドは珍しく執務の手を止めた。

「何なんだ、あの王女…」

先日の夜会で螺旋階段から落とされ負傷したにも関わらず、令嬢たちを無罪放免にした件が頭から離れない。理解の範疇を超えていた。

「おい、ファビウス」

ファビウスはアルフレッドの側近で、能面集団を率いる筆頭だ。

ファビウスが執務の手を止め、アルフレッドを見つめる。

「令嬢とは、あれほどキャンキャン吠えるものですか? ましてや、王女だろう?」

ファビウスは少し考えた。

「クラリス妃殿下のことですか?」

アルフレッドはハッとしたように、しかしバツが悪そうに顔を逸らす。

「他には居らぬだろう? あれほどキャンキャンと…」

ファビウスは静かに微笑む。

「まぁ、ヒステリックな令嬢もおりますからね」

「ヒステリックではない。まるで動物園の猿のようであったぞ?」

ファビウスは小さく笑いながら言った。

「そういえば…テオドールと妃殿下は『犬と猿』と呼ばれているそうです。あながち間違いではないですね」

「テオドール? 奴はフリードリヒの側近だろ?」

「いや、最近はもっぱら妃殿下付きだそうです」

「犬と猿か…」

アルフレッドは小さく呟き、再び執務に戻る。




一方、その犬と猿は――

「テオ、今日のお茶はガゼボで飲まない?」

テオドールはお茶を淹れ、静かに置いた。

「お茶です」

「…」

「テオ、私が言ってるのは執務の疲れを取るために、心地よい風に当たりたいからガゼボで、ってことよ? 別に貴方の淹れたお茶を飲みたいわけじゃないの!」

そう言いながら、クラリスは結局お茶に口をつけた。

「妃殿下、ここが最も安全な場所ですよ? 監視されているのですよね?」

「逃げろって言うの?」

クラリスとテオドールがいつものように言い争っていると――

「なに? 楽しそうじゃない?」

ノックもせずに入室できるのはフリードリヒだけである。

テオドールはさっと立ち上がる。

「テオ、楽にしてて」

フリードリヒは片手を上げ、テオドールが礼をするのを制止した。

「で? 誰が誰に監視されてるって?」






視線を重ねるクラリスとテオドールを見て、フリードリヒはにやりと笑った。

「いつの間にそんなに仲良くなったの? 目で会話するなんて、なかなかだね! で、私だけ仲間外れってわけ?」

クラリスはテオドールを睨み、小さく息を吐き、顎で合図した。

…話せ!

…え?俺?


テオドールは少し困惑した表情でクラリスを見るが、すぐにフリードリヒに一連の話を始める。

フリードリヒはニヤリと笑い、長い足を組み替える。

「なるほどね。クラリスは推理小説が好きなのかな? でもあまり向いてないかもしれないね。ってか、そのリザの件は私も知っているから心配無用。問題は、誰が妃殿下を狙い、監視しているかだ」

フリードリヒはしばらく考え込み、いきなり立ち上がった。

「王太子宮だ。もうすぐ完成するから、それまでは我慢だね。あと少し」

ポカンとする二人に、フリードリヒは追い打ちをかける。

「何だか表情まで似てきたね」

我に返った二人は、

「『どこが!』」

フリードリヒは楽しそうに笑いながら言った。

「ほら、キレイにハモってるよ!」

二人は怪訝そうに顔を見合わせる。

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